スコットランド北東部の沖合に浮かぶ浮体式洋上風力発電の風車。東京ガスが出資する米プリンシプルパワー社の技術を活用した(東京ガス提供)

10日の日米首脳共同声明で連携を表明した風車を洋上に浮かべる「浮体式洋上風力発電」は、四方を深い海に囲まれた日本の再生可能エネルギーの切り札だ。政府は排他的経済水域(EEZ)にも風車を設置できるよう改正法案を今国会に提出。民間では浮体式の技術確立に向けて研究組織が発足しており「風車拡大」の機運が高まっている。

22年に原発45基分

政府は洋上風力の発電能力を令和12年までに1千万キロワット、22年までに原発45基分にあたる最大4500万キロワットに高める長期的な計画を立てている。

今国会に提出した再エネ海域利用法改正案では、風車を設置可能な海域を従来の領海からEEZまで拡大した。日本の領海が約43万平方キロメートルなのに対し、EEZは約405万平方キロメートルと広大だ。

改正法案では、政府が風車を新たに設置できる海域を指定し事業者を募集した上で、漁業者など利害関係者の理解を得られれば許可を出す仕組みとしている。斎藤健・経済産業相は「海域の先行利用者との共存共栄も重要。関係者の理解を得つつ進めていきたい」と話している。

EEZでは、これまでの主流だった風車の土台を海底に固定する「着床式」に代わり、洋上に浮かべる浮体式の拡大が見込まれている。日本は国土を海に囲まれているが土台を固定できる遠浅の海域が少ないためだ。ただ浮体式は固定式より発電コストが高く、大量生産に向けた技術はまだ確立されていない。

電力、商社など基盤技術を共同開発

こうした中、大手電力、三菱商事や丸紅など大手商社、NTT子会社など14社は3月、浮体式の基盤技術の共同開発を行う「浮体式洋上風力技術研究組合」(東京都港区)を設立した。

4月から活動を始めており、今後、業界の指標となる設計基準や規格、大量生産の技術、海底の深い場所での係留技術、遠洋での風の状況観測などの開発を、各社の知見を持ち寄って取り組む。他国に先行して開発できれば、海外展開や国際競争力の向上が見込まれる。

組合の寺﨑正勝理事長(NTTアノードエナジー執行役員)は「開発した技術・システムの国際標準化や、わが国の産業振興につながる活動を進めたい」とコメントしている。

組合の設置を米国は「歓迎する」としており、今後日米は連携し、浮体式のコスト削減と量産化に取り組む。

(織田淳嗣)

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