10月16日、中国の金融業界は政府の規制や政策の影響で将来が厳しくなっており、幻滅した銀行関係者やファンドマネジャーらは金融以外の分野で新たなキャリアを求めている。写真は北京の金融街を歩く人々。8日撮影(2024年 ロイター/Florence Lo)

中国の金融業界は政府の規制や政策の影響で将来が厳しくなっており、幻滅した銀行関係者やファンドマネジャーらは金融以外の分野で新たなキャリアを求めている。転身先は教育やお笑いなどさまざまだ。

トレーディングや資金調達、ディールメーキングなどに対する監視が強化される一方で、景気低迷により株式売買は低迷。プライベートエクイティやベンチャーキャピタルには資金が集まらず、新規株式公開(IPO)は壊滅的な状況で、給与や雇用を削減する動きが強まっている。


 

ディープ・ウォーター・ファンド・マネジメントのパートナー、XuYuhe氏は資本市場に3年間身を置いた後、学生の海外留学を支援する、より予測しやすいビジネスに転向した。

当局の景気刺激策で最近の株式市場は急騰したかもしれないが、投資家は気まぐれなので強気な動きは一時的なものになりそうだと元ヘッジファンド業界のプロである同氏は語る。

豊かで距離的にも文化的にも近い場所で国際的な経験をするために、香港やシンガポールに留学したり移住したりする人が増えており、「教育サービスはより持続性のあるビジネスだ」と解説した。

67兆ドル規模の中国金融セクターは、さまざまな取り組みの矢面に立たされてきた。特に2021年に始まった「共同富裕」キャンペーンは経済格差の是正を目的としたもので、給与の上限規制や賞与の返上などの措置が取られている。

例えばヘッジファンド業界では、コンピューターによるクオンツ取引が現在取り締まりの対象となっている。規制当局はこれが個人投資家を不当に扱う可能性があるとしている。

政府のデータによると、脆弱なヘッジファンドを特定するためのキャンペーンが過去1年間で数千のファンドが破綻する一因となった。

多くのヘッジファンドは、データに基づく戦略が想定外の政策転換を予測できなかったため、記録的な株価上昇の恩恵を受けられず、空売りポジションで損失を被った。

上海を拠点とするヘッドハンティング会社リフォース・グループのディレクター、ジェイソン・タン氏は「(今回の景気刺激策は)個人投資家の心をつかむための非常に短期的な措置だ」と述べた。


 

「私が話した大勢の銀行関係者は、共同富裕が定着し高給の銀行職の時代が終わったことを知っている。銀行の有能な人材は海外で仕事を求めたり、規制の少ない業界に移ったりしている」と話した。

給与上限

ファンドコンサルタント会社Zベン・アドバイザーズによると、4兆4000億ドル規模の投資信託業界では、企業が報酬の見直しとコスト管理に注力しているため、ファンド幹部やポートフォリオマネジャーの「大幅な入れ替わり」が起きている。

ロイターは先月、大手資産運用会社の招商基金管理が上級幹部に対し、過去5年間に受け取った報酬のうち、共同富裕で設定された上限額を超える金額を返還するよう求めたと報じた。

Zベンは9月に公表したリポートで、「実施される報酬上限の幅によって業界内の転職が活発化するか、あるいは主要スタッフが資産運用業界から完全に去るかが決まるだろう」との見方を示した。

昨年に投資銀行を辞めて海外に移ったというある男性は、銀行関係者の逮捕や拘束もビジネスを行う上でのリスクが高まっていることを示していると指摘した。当局が突然特定の業務について調査を開始する可能性があるため、多くの国営銀行関係者は海外渡航を制限されているという。

銀行関係者は供給過剰

規制当局は上場を目指す企業の審査を大幅に厳格化している。半導体など政府の戦略的分野に資金が流れるようにする狙いがあるが、ディールメーカーの機会を制限する結果となっている。

国内の上場はほぼ停止状態となり、KPMGによれば、上半期のIPO案件の資金調達額は前年同期比75%減少した。一方、米中関係をはじめとする地政学的緊張が海外上場に逆風となっている。


 

銀行関係者の供給過剰を反映して、企業のIPOを支援する金融機関やアドバイザーなど、8000社を超える登録済みのIPOスポンサーのうち、半数近くが今年1件も取引を完了していないことが、中国証券業協会の記録で明らかになった。

このような状況を踏まえ、かつて浙商証券に在籍していたベテランバンカーのGu Zaifeng氏は今年、山東省の農村で村の書記になることを志願した。Gu氏の出身大学である南京大学の同窓会は、IPOスポンサーだった同氏が上海での高給を諦め、草の根レベルで落ち着いたと指摘した。

証券業界全体では、22年末から社員の数が1万5000人近く減った。規制当局が業界の統合を推進しているため、この傾向は続くとみられる。

プラム・ベンチャーズの創業パートナー、Wu Shichun氏は現在コメディアンとしてよく知られている。

「微信(ウィーチャット)」のアカウントで放送されたお笑い番組で、「昨今、この業界のどこでも疲れ果てた投資家や生死の境をさまよう起業家に出くわす。このような困難な時期はありがたい。芸のネタになる」と語った。



[ロイター]


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