【東京V―湘南】後半、決勝ゴールを決め、染野(右)に祝福される東京V・山見=3日、レモンS

サッカーのJ1へ16年ぶりに戻ってきた東京Vが、目の離せない試合を続けている。開幕から3試合は最終盤、痛恨の失点で勝利を逃した一方、3日の湘南戦では後半41分に決勝点を奪い、J1では2008年10月18日以来となる勝利を収めた。チームは現状、もろさと最後まで諦めない粘り強さが相半ばしているが、今後、サポーターを歓喜させる試合を増やし、最低限の目標となるJ1残留へつなげたい。

東京Vは2月25日に行われた横浜Mとの開幕戦で、1-0の後半44分とロスタイムに連続失点を許して逆転負け。3月3日の浦和戦は1-0の後半44分にPKで追いつかれ、9日のC大阪戦でも1-1の後半ロスタイムにPKを与え、勝ち越された。

横浜M戦と浦和戦の内容は、決して悪くなかった。優勝候補の一角と目される強豪を相手にひるむことなく戦い、シュート数では横浜Mを13-5と圧倒。浦和とも5-6とほぼ互角に渡り合った。「J1で自分たちの強みは出せた」。横浜M戦後、MF斎藤功佑がそう振り返ったのも、強がりには聞こえない健闘だった。

しかし、C大阪戦までに獲得できた勝ち点は1。浦和戦後、FW木村勇大は「2点目を取れていたら、戦い方は変わった」と詰めの甘さを反省し、城福浩監督は「試合を締めるところがこのチームには足りていない」と嘆いた。

一方、次節で潮目が変わった。16日の新潟戦は1-2の後半45分に追いつき、29日の京都戦は0-2で迎えた後半35分にゴールを奪って追撃ののろしを上げ、ロスタイムに同点ゴールを挙げた。

京都は昨季、終盤までJ1残留争いをし、今季も前評判が高いとはいえない相手。それでも序盤は一方的に押し込まれる時間帯が長く続く「完敗ムード」だった。2得点を挙げたFW染野唯月(いつき)は試合内容を反省しつつ、「勝ち点0と勝ち点1は全然違う。ポジティブにとらえて次に向かいたい」、城福監督は「よく盛り返した。じれずに追いついたことをポジティブにとらえたい」と諦めなかった選手をたたえた。くしくも2人はともに「ポジティブ」という言葉を強調して前を向いた。

ゲーム最終盤に煮え湯を飲まされ続けた失点を得点へ変え、今月3日の初勝利へとつなげてみせた。

試合が終わるまでスタンドの心をつかんで離さない〝東京V劇場〟は、エンターテインメントとしては申し分ない。ただ、伝統の緑のユニホームに身を包むサポーターは、エンターテインメント性とともに勝ち点を欲している。ドラマチックな試合を「ハッピーエンド」につなげられるか。Jリーグ元年から連覇を達成した名門復活への挑戦が続く。(奥山次郎)

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