「モンスター」と呼ばれ、規格外の強さを誇るプロボクサー・井上尚弥選手。メインとしては日本人で初めて東京ドームで歴史的勝利をおさめました。

試合では、これまで1度もダウンされたことがないという井上選手が第1ラウンドからダウンを奪われるという波乱の展開でしたが、実は、このダウンこそが勝利のカギだったのです。世界の全階級の選手の格付けで1位となった井上選手。その最強のワケをお伝えします。

タイソン以来の…

4団体統一スーパーバンタム級の初防衛を果たした井上尚弥選手。
東京ドームでボクシングの試合が行われるのは、1990年のマイク・タイソン戦以来、実に34年ぶり、日本人としては初めてのことなんです。圧倒的な人気と実力を兼ね備えた井上選手だからこそ実現できました。集まった観客は4万3000人、チケットの最高額は22万円とまさに破格でした。

"悪童"相手に波乱も…

対戦相手はルイス・ネリ選手。ネリは36戦35勝(対戦前)とトップクラスの実力ですが、2017年には山中慎介選手に勝利した後、ドーピング検査で陽性だったことが判明。改めて闘った翌年には、今度は計量で大幅に体重超過。それでも勝利していました。ニックネームは「悪童」です。そのネリ選手、第1ラウンドでいきなり井上選手からダウンを奪います。これは井上選手にとって、プロ人生で初めてのダウンでした。

8カウントが「大事」

しかし、すごいのはここからなんです。井上選手はダウン後、膝をついて休み、8カウントでようやくファイティングポーズを取ります。

井上選手はこのエイトカウントが大事だったと語っていて、「すぐ立ってしまうと足のふらつきが残ってしまう」ので、あえてゆっくり立ち上がったといいます。元世界スーパーフェザー級王者・内山高志さんによると「ボクサーは普通、ダウンした時は意識が飛んでしまい、カウントも聞こえておらず、急いで立ち上がってしまう」もので、井上選手の冷静さは際立っていると評価します。

さらに第1ラウンド後のインターバルで、井上選手は、会場のモニターに映し出された、自分が倒される場面のリプレイ映像を観察。ネリの左フックの軌道を分析していたといいます。

5階級制覇への挑戦は?

これで井上選手の戦績は27戦全勝、24KO、KO率88.8%。9日発表された、「もし体重差がなかったら誰が最強なのか」というランキングで、井上選手はなんと1位に選ばれたのです。

井上選手はライトフライ級から階級を上げ、すでに4階級制覇しています。気になるのは、さらに階級を上げるのかどうか。

内山さんは「スーパーバンタム級では敵がいない状態。2階級上のスーパーフェザー級でも十分戦える」と話します。

井上選手自身は、これから出てくる若い選手に立ちはだかる「ラスボスでありたい」と手記で語っており、当面は、この階級で闘う意向を示していますが、日本人男子初の5階級制覇を狙うのか。今後の活躍に期待が高まります。

(「サンデーモーニング」 2024年5月12日放送より)

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