3月31日に1万人近く(9544人)の観衆を集めて行われた、2023―24シーズンのVリーグ男子ファイナルステージファイナル(決勝)。パナソニックパンサーズとの激戦を制して、2シーズンぶり10度目のVリーグチャンピオンに輝いたサントリーサンバーズが4月23日(火)、練習拠点のある地元箕面市に優勝報告を行いました。

優勝報告に訪れたのは、監督に就任してから4シーズンで、チームを3度目の優勝に導いた山村宏太監督をはじめ、キャプテンを務めた大宅真樹選手、チームの攻守の要・藤中謙也選手、新人ながら主力として活躍、先日、日本代表にも追加登録で選出された鬼木錬選手の3選手。それぞれ、優勝への思い、支えてくれる人への感謝、今後の戦いに向けての抱負と思いを語りました。

山村監督が口にしたのは、応援してくれた地元の方々や周囲への感謝とともに選手へのゆるぎない信頼。「地元に優勝報告ができてとてもうれしい。支えてくれたスタッフ、戦い抜いてくれた選手たちに感謝したい。長いシーズンいいときも悪いときもある中で、楽しくバレーができたのがサンバーズだった。(ファイナルでは)スタッフが考えたゲームプランを選手たちが実行して、かつ楽しんでやってくれたことが勝利につながった。サンバーズにとっては、最高の充実したシーズンだった」と話すと、「(サンバーズでは)指導者として最高の経験をさせてもらっている。選手だけでなく、自分自身にも、(指導者として)成長を感じることができている。選手を尊重し個性を生かしながら、チーム力を高めていく。新しい時代に必要だと思って、やり続けてきたことが結果いい方向に向かってよかった。これからの新しい時代、特に下の世代、大学生、高校生に対して、指導者も変わっていかなければいけない時期だと思う。それを今の僕の将来の夢だと捉えている」と、指導者としての信念と今後の自分について心境を吐露しました。

続いて、インタビューに答えた藤中選手は「優勝するのと、2位では全然違う。周囲の方々の反応をみてより実感できた。いい報告ができてよかった」と、昨シーズンは、ファイナルに進出しながらも、ウルフドッグス名古屋に敗れて悔しい2位。その悔しさが、今シーズン戦い続ける上での原動力となったと話した後、10月から始まる新リーグ、SVリーグにむけては、「SVリーグについては、外国人枠も増えて間違いなくリーグのレベルは上がる。ただ選手としては、(チーム内の)競争が激しくなって大変という以上に、レベルの高い環境で戦えるワクワクする気持ちが強い」と、選手として新たなステージに臨む胸の内を打ち明けてくれました。

鬼木選手は、学生時代を通じても、初めての日本一。「やっぱりいいものだと痛感しました。自分以上に周りの人が喜んでいるのをみて、とてもいい気持になりました」とうれしさを爆発させた後、「途中で出場機会がなくなる苦しい経験もしましたが、そこでコーチが一緒になって、ずっと自分の課題(ブロックの面)を指導していただいた。毎日続けたことが成長につながったと思う。このチームに入って、本当によかったです」とサンバーズだからこそ成長できたと話すと、日本代表選出については、「(黒鷲旗バレー終了後の)オフの予定を考えていた時に連絡がきたので、びっくりしました。選ばれたからには、自分のよさをアピールしていきたい。これから成長していって、次のオリンピックを狙えたらいいと思っています」と偽らざる心境を口にしました。

最後に、この日が29歳の誕生日だった大宅選手は、「長く、大変なシーズンだった。ただ、厳しい中でも本当にバレーを楽しんでいる自分がいた。何のためにバレーボールを始めたのか、続けているのかを自分自身が理解してきたからこそ思いっきり楽しめている。バレーボールをやっていてよかった。個人的には、昨シーズン代表に選ばれなかった悔しさが、自信のモチベーションとなっていた。今年も、(代表では)難しい立場だが、自分が求められている場所で、輝きたいと思っている」と話すと、代表に初めて参加する鬼木選手にアドバイスするとしたらの質問には、「代表の関しては、自分のことで精一杯なので」としながらも、「サンバーズでは、チームや会社のみんなが守ってくれるが、代表は、チームとして戦う集団ではあるものの、選手個人でみると、いつ居場所がなくなるかわからない厳しいところ。僕自身は、身をもって経験している。ひとりで勝ち抜いていかなければいけない世界」と後輩への気遣いを見せながらも、プロフェッショナルとしてのプライドと、代表への熱い思いをのぞかせていました。

サントリーサンバーズは、この後、ゴールデンウイーク(5月1日~6日)に行われる黒鷲旗全日本バレーボール大会に出場。優勝候補の筆頭として大会に臨みます。

勇退表明の山村監督 チームにエールを送る

「自分たちにとっては、更なる成長につながる大会。うちは、ターゲットにされる立場だが、6連戦の中で、普段出場機会の少ないメンバーがいかにコート中で仕事をしていくか、そこがポイントになると思う。そこを踏まえて優勝を狙いたい」と話した山村監督。優勝報告から2日後、4月25日(木)に、この黒鷲旗全日本バレーボール大会を最後にサントリーサンバーズの監督を勇退することが、正式に発表されました。

優勝報告の際、これからの新しい世代、下の世代に対しては指導者も変わっていかなければならないという信念を示した山村監督。決断にいたった気持ちを「監督としても人としても未熟者ですが、周囲のサポートのおかげでここまでやってこられたと思います。自分自身まだまだ成長しなければならないという思いがあり、勝手ではありますが今回の決断をしました。今後に関しては決まっていない状況ですが、更なる成長を遂げどんな形であれ、バレー界を盛り上げていければと思っています」と明らかにした上で、「サンバーズのことが心から好きですし、今後も一番強いチームであり続けるために、皆が成長し続けなければならないと思います」とサンバーズに対する深い愛情とチームへのエールを送りました。

山村監督の勇退に花を添えることができるのかどうか、最後のVリーグ王者として臨む第72回黒鷲旗全日本男女バレーボール選抜大会は、5月1日(水)、大阪市のAsueアリーナで開幕します。


【黒鷲旗バレー 日程 サントリーサンバーズ対戦カード(グループリーグ)】

5月1日(水) 開会式・グループ戦(サントリー 対 駿台学園高校)
5月2日(木) グループ戦(サントリー 対 順天堂大学)
5月3日(金・祝) グループ戦(サントリー 対 北海道イエロースターズ)
5月4日(土・祝) 準々決勝(グループ戦2位以上で準々決勝進出)
5月5日(日・祝) 準決勝
5月6日(月・振) 決勝


(MBSスポーツ解説委員 宮前 徳弘)

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。