女子駅伝日本一を決めるクイーンズ駅伝（11月24日・宮城県開催）の予選会であるプリンセス駅伝が10月20日、福岡県宗像市を発着点とする６区間42.195kmのコースで行われる。

第1区 宗像ユリックス~宗像大社 7.0km
第2区 宗像大社~勝浦浜 3.6km
第3区 勝浦浜~宮地浜 10.7km
第4区 宮地浜~福津市複合文化センター 3.8km
第5区 福津市複合文化センター~宗像大社 10.4km
第6区 宗像大社~宗像ユリックス 6.695km

30チームが参加し、上位16チームがクイーンズ駅伝出場資格を得る大会だ。
大会前日の19日に区間エントリーが発表され、三井住友海上とともに2強と目されるユニクロは、1区に川口桃佳（26）、2区に後藤夢（24）と、代表経験のある2人を投入する。それに対してエディオンは1区に水本佳菜（19）、2区に名和夏乃子（19）と若い力の爆発を期待する起用をしてきた。

ダークホースと言われているのがしまむらだ。1区に成長株の髙橋優菜（25）を起用。エース区間の3区には、10000ｍとマラソンで代表を経験している安藤友香（30）がしっかり入った。

1、2区に注目選手多数

1、2区に代表経験者2人を起用したのがユニクロだ。1区に昨年のアジア選手権10000ｍ2位の川口、2区にパリ五輪1500ｍ代表の後藤と、今大会屈指のスピードランナーを起用してきた。川口は2年前の1区区間賞選手。9月の全日本実業団陸上5000ｍでも8位（日本人4位）だった。トップか先頭集団でタスキを渡すだろう。後藤は前回も2区で区間2位。パリ五輪後の体調次第だが、ユニクロが2区でトップに立つ可能性は高い。

エディオンは入社2年目の水本が1区を、ルーキーの名和が2区を走る。水本は2年前の高校ナンバーワン選手で、全国高校駅伝でもエースが集まる1区（6.0km）で区間賞を獲得した。同じ区間で6秒差の区間4位だったのが1学年下の名和で、水本は大阪薫英女高、名和は長野東高と、高校駅伝の上位常連校のエース同士だった。

2人は「まさかタスキをつなぐことになるとは」と話していたという。かつてのライバルが1本のタスキに思いを込める。予想以上の力が発揮されれば、エディオンがトップ争いに加わってくる。

三井住友海上は1区に、前回区間賞の樺沢に代わって松田杏奈（30）を起用してきた。

「良い感じで仕上がってきました」と鈴木尚人監督。「経験もある。良い位置で持って来てくれると思います」

1区には三原梓（21、ルートインホテルズ）、小笠原朱里（24、東京メトロ）、髙橋ひな（26、新日本住設グループ）と、1500から5000ｍで高校歴代上位記録を持つ選手たちがエントリーされた。三原と小笠原は実業団でも結果を残しているが、高校時代を上回る印象を残すような走りをしたい。田﨑優理（23、シスメックク）と下田平渚（26、センコー）は、5000ｍが専門だが1500ｍでも4分10秒台を持つスピードランナー。1区の区間賞候補に名を連ねる。

好調の兼友、実績一番の安藤、マラソンを目指す吉川＆上杉らが3区で激突

三井住友海上は兼友良夏（23）を予想通り起用してきた。9月の全日本実業団陸上10000ｍ5位（日本人2位）と、直近のレースでは成績が一番良い。鈴木監督は「（トップに立つのは）4区のタビタジェリ（24）でもいいのですが、できれば3区でトップに立ちたい」と兼友に期待する。そうなれば4区で独走態勢に入ることも考えられ、三井住友海上が優勝に大きく近づく。

10000ｍの自己記録（31分18秒18）と日本代表実績（17年世界陸上マラソン、21年東京五輪10000ｍ）では安藤友香（30、しまむら）が他を圧倒している。しかし3月の名古屋ウィメンズマラソン優勝（2時間21分18秒＝来年の東京世界陸上参加標準記録突破）の後に大腿骨の疲労骨折が判明。9月の全日本実業団陸上5000ｍが復帰レースで15分48秒65だった。各選手の充実が著しいしまむらで、3区にエントリーされた。安藤の調子が下がっていることはないだろう。1区の髙橋だけでなく、しまむらは2区にも昨年の日本インカレ3000ｍ障害優勝の山田桃愛（23）と、力のある選手を配置した。安藤の復調次第では3区でトップに立つ可能性がある。

マラソンのパリ五輪補欠だった細田あい（28）が欠場するエディオンは、矢田みくに（24）がエース区間を担う。「駅伝をステップに今後は代表を狙わせたい」と沢栁監督が期待する選手。1、2区の19歳コンビの走り次第では、先頭から見える位置を走るだろう。

ユニクロの3区もベテランの吉川侑美（33）が入った。1500ｍから徐々に距離を伸ばし、五輪＆世界陸上の日本代表歴はないが、どの種目でも日本トップレベルの記録を残してきた。23年から出場し始めたマラソンが、おそらく最後の種目になる。「マラソンのスピー川口、後藤の1、2区がトップでタスキをつなげば、吉川と、大物新外国人のオマレ・ドルフィン・ニャボケ（23）の走る4区で首位固めをすることができる。

上杉真穂（29）もベテランの域に入ってきた。安藤と同様今季移籍加入した選手だが、走りも精神面もチームの大黒柱になっている。狙うのは来年の東京世界陸上マラソン代表だ。昨年のＭＧＣ（マラソン・グランドチャンピオンシップ。パリ五輪代表３枠のうち２人が決定）で代表入りを逃した後は、課題のスピード強化に取り組んできた。だがハーフマラソンの自己新は出したが、トラックシーズンのタイムはパッとしなかった。

「駅伝を走るのなら区間賞を目指して頑張りますし、区間賞を取ろうと走ればタイムもついてきますし、そのスピードがマラソンにも絶対につながります」

上杉が区間上位で走れば、東京メトロのクイーンズ駅伝初出場が濃厚になる。

3区の区間記録は新谷仁美（36、積水化学）が20年にマークした32分43秒だが、当時の新谷は神がかっていた。区間歴代2位は33分58秒で、距離が10.7kmになった17年大会以降で34分を切ったのは2人しかいない。新谷を別格視していては世界との差を埋めることもできなくなってしまうが、今回のメンバーの状況を考えれば34分台前半が区間賞の目安になるのではないか。

（TEXT by 寺田辰朗 /フリーライター）

※写真は左から後藤夢選手、兼友良夏選手

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