後半戦好スタートを切った後、4カード連続で負け越した阪神タイガース。今後の課題や逆転優勝のカギなどについて、8月19日、掛布雅之氏が解説しました。

 ―――後半戦良いスタートを切った阪神ですが、ヤクルト・広島・巨人・中日と4カード連続の負け越しとなりました。

 「下位のチームに負け越したのが大きいですし、中日3連戦の2戦目(8月17日)に引き分けてしまったのが大きいですね。『7回以降に追いつかれたり逆転されたりするゲームをしていたら連覇はない』と岡田監督が言っていましたが、まさにそういうゲームをしてしまった。17日のゲームは大きなミスがあったんですね。本当は勝たないといけない試合です。勝っていたら、次のゲーム(18日)の結果も変わっていたかもしれない」

「左肩が下がらなくなった」8月月間打率・3割7分5厘の近本選手

 ―――一方、状態が“右肩上がり”の選手もいるようです。近本光司選手は18日の試合で4安打1四球。打率は2割4分8厘(7月21日時点)から2割7分4厘へと上がり、8月の月間打率は3割7分5厘です。掛布さんは好調の要因について『左肩が下がらなくなった』とみているようですね?

 「近本の場合、ボールを自分の近くに引きつけて打ちたいという気持ちが強すぎるために、後ろの肩(左肩)を下げてしまうんですね。ただ、引きつけて打つとポイントが近くなりますから、なかなか良い打球が飛ばないんですよ。甲子園100周年の行事のとき、ベンチ裏で近本に『ちょっと左の肩が下がりすぎていないか?』と言いました。それに対して近本は『そうなんです。これからは少し左肩を“レベル”にして、ポイントを前にします』と言っていました。中日戦でヒットを打ったときは、全て左肩が下がっていません。レフトへの打球がフライにならずライナーで飛ぶようになったのは、左肩が下がらなくなり、上からバットで押さえ込めるようになったからです。この好調は本物だと思います」

「打ち損じが少なくなった」得点圏打率セ・リーグ1位の佐藤選手

 ―――続いて、佐藤輝明選手。17日の試合は3安打2打点。得点圏打率がセ・リーグ1位の3割3分3厘。8月の月間打率は3割3分9厘でホームラン4本、打点12。『打ち損じが少なくなった』ということのようですね?

 「夏場にピッチャーが疲れてくると、両コーナーへ厳しく投げられなくなったり、高低についても投げミスが増えたりします。佐藤のバッティングが変わったというよりも、そういった“投げミス”への打ち損じが少なくなりましたね。相手ピッチャーも全体的に調子が落ちていて、ボールの“キレ”がなくなったので、ファウルになるようなボールにバットがしっかり当たるようになりました。去年の夏の、非常に状態が良かったときの感覚を覚えているのかなと。『ここから状態を上げないと数字が伸びない』という、“1年間の野球のリズム”がわかってきたのかなと思います。しかし守りの方が…」

「三遊間の呼吸が合っていない」木浪・佐藤の連携ミス…“横の連携”を大切に

―――守備の話に移ります。17日の中日戦、阪神2点リードの9回、中日は2アウト満塁のチャンスで福永裕基選手が三遊間にゴロを打ち、その間にサードランナーがホームイン。好捕したショート・木浪聖也選手はサード・佐藤選手に送球し、その間にセカンドランナーもホームインしました。

 「ショートへの内野安打で2点入るのは、プロ野球では珍しいことなんです。この三遊間のゴロは、サードの佐藤が追いつける打球じゃありません。ただ、佐藤のポジショニングが不思議で…打球に追いつけないならサードベースに戻らなきゃいけない。ランナーが飛び出した場合、絶対にサードベースに背中を向けては駄目なんですよ。サードベースを見なきゃいけないんです。そうすると、ベースコーチが手を回しているのか止めているのか見えます。回した場合は、木浪に対して『ホームだ!』と大きな声で指示を出さなきゃいけない。木浪・佐藤の三遊間の呼吸が合ってないんです。よくダブルプレーなどで『二遊間の呼吸が大切』と言いますが、三遊間もそういった“呼吸”があるんですね。自分では捕れない打球が三遊間に飛んだ場合、サードベースにすぐ戻らないとだめなんです。サードベースを空けること自体が間違いです」

 ―――木浪選手は迷わず三塁の佐藤選手に送球しました。この判断は正しいのでしょうか?

 「これはね、セカンドランナーがホームまで行くとは思っていないんです。佐藤がサードベースから離れているので、ランナーは大きなオーバーランを取っていて、木浪はサードでのタッチアウトを狙っているんですよ。そのとき、佐藤は木浪に対して『ホーム!』という声を出していない。木浪がサードに投げたのは、佐藤がランナーを見てないからです」

 ―――ホームに向かっているセカンドランナーに背中を向けていて、見ていないのですね。

 「ランナーの方に向かないといけないんです。さらに、サードの選手とベースコーチの目が合った場合、ベースコーチは絶対に手を回せません。“目でランナーを止める”こともできるんです。サードというのはホームに一番近いベースなので、そこを取られると得点につながるわけですよ。絶対死守しなきゃいけないベースです。背中を向けていては守れません。絶対自分で見ておかなきゃいけない。それを佐藤は怠っているんです。二遊間に限らず、守備における“横の連携”をもっと意識しなきゃいけませんね」

逆転優勝に向けては「2勝1敗」のペースで 首位 ・広島とは6~7ゲーム差あるつもりで戦うべき

 ―――セ・リーグで唯一、8月に連敗がない首位・広島カープについてはいかがでしょうか?

 「先発陣に大瀬良大地・森下暢仁・床田寛樹の3枚がいますので、どこかで連敗を止められるんですよね。これが大きいんですよ。さらに、状態を上げてきた坂倉将吾選手が怖い。彼は5番をきちんと打てる左バッターで、得点力が増しました。さらに、4番に長打力のある末包昇大選手が入って、長打力のなかった広島打線に厚みが出てきたことも気になります」

 ―――カープは8月20日から東京ドームで2位・巨人と戦い、ここで3連勝すると優勝マジック30が点灯します。

 「広島・巨人・阪神の3チームでの優勝争いになると思いますが、大きな連勝・連敗はないと思います。阪神はこれから6連戦が続きますが、8月23日~25日の広島3連戦は僕は2勝1敗でいいと思うんですよ。これから続く6連戦、カード2勝1敗でクリアしないと、広島・巨人との差は縮まりません。残り32試合で5ゲームをひっくり返すのは…3ゲーム差まで詰めて甲子園に戻るというのが岡田監督の計算なんです。そのためには絶対に2勝1敗のペースで進めないと、ひっくり返せないですよ」

 ―――8月19日時点で、首位カープとの差は5ゲーム。直接対決は、カープとは6試合、巨人とは4試合残っています。

 「8月30日~9月1日は甲子園で巨人と戦います。前回のように3連勝はちょっと厳しいと思いますが、ここで勝ち越すことができればいいんじゃないかなと」

 ―――残り試合は、阪神が32、広島は39ありますが、この点についてはいかがでしょうか。

 「広島が有利ですね。現在5ゲーム差ですが、残りのゲーム数を考えると、6~7ゲーム差あると考えて戦っていかないと阪神の連覇・逆転優勝はありません。それぐらい阪神が追いつめられている状態だということです。ただ、これはあくまで数字で、何が起こるかわからないのが野球です。阪神が大きな連勝をする可能性もありますので、まだまだ連覇の可能性は十分残っていると思います。そのために、20日からの6連戦の戦い方が大切で、ヤクルト戦で3連勝できれば楽なんですよ。そこで勢いをつけてマツダスタジアムに乗り込みたい」

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