シリーズでお伝えしている「かちスポ」
今回は、障害者スポーツの「パラテコンドー」でパリパラリンピックに出場する鳥栖市の田中光哉さんです。
生まれつき両手に障害がある田中さんは「同じ障害で悩む人などに心に残るものがあれば」と大会に向け最後の調整を行っています。
【パラテコンドーでパリパラリンピック出場 田中光哉さん】
「右腕がない選手もいれば左腕がない選手もいて、腕の形が違うので同じ戦術(戦い方)でも、勝つ選手負ける選手がいるので。自分の戦い方を見つけないといけない」
勇ましい声と力強い蹴り。鳥栖市在住の田中光哉さん31歳です。
8月28日に開幕するパリパラリンピックに障害者スポーツ唯一の打撃格闘技「パラテコンドー」の日本代表として出場します。
【田中さん】
「元々サッカーをしていた経験もあったので、テコンドーは通じているのではないかとこの世界に飛び込みました」
田中さんは週4日、佐賀市のテコンドークラブ「HamaHouse」で技を研鑽。
去年6月の世界選手権で銅メダルを獲得した岡本留佳さんは同じクラブの仲間です。
【去年世界選手権で銅メダル 岡本留佳さん】
「優しくて面白い。笑顔が絶えないような選手。足も長くて、パワーもあるので、刺すような感じで、相手としてはすごく嫌」
【田中さん】
「生まれつきの手の欠損の障害なんですけど、左手が指が3本残っています。肘の動きとしては左はちょっと曲がっている状態ですね。右手は指が1本で肘の曲がりも90度いかないくらい」
田中さんが打ち込むパラテコンドーとは。
【田中さん】
「腕に障害がある選手が出場できる競技。(パラリンピックでは)5分1ラウンドの間にお互いの中段(腹部)を蹴り合って、単純な回し蹴りであれば2点、180度かかった蹴りを当てると3点。さらにもう半回転360度1周回って蹴りを当てると最大の4点」
競技人口は世界で約300人といわれているパラテコンドー。
2021年の東京パラリンピックで正式競技に採用されました。
田中さんは2大会連続での出場となります。
【田中さん】
「出場選手はそれぞれ腕に障害があって、障害の形も人それぞれ違うので、自分の障害の形にあった戦術(戦い方)を組み立てながら、相手との攻防を繰り広げるところが、パラテコンドーの魅力です」
福岡県出身の田中さん、小学校から大学まではサッカーに熱中していました。
【田中さん】
「小学生のころは県の選抜に入ったり、高校時代は全国大会を目指して、福岡県で一番を目指してサッカーに取り組んでいました。テコンドーはすごく体の軸を大事にするスポーツで体幹が必要だと思うので、サッカーで鍛えた経験は生きていると思います」
【リポート・波佐間崇晃】
「では体幹の強さを見せてもらいます・・・かなり強いです。押してもびくともしません」
そして、その体幹を生かしたキック力。成人男性でも簡単に吹き飛ぶ威力です。
【テコンドークラブHamaHouse 濱田康弘代表】
「パラの選手は体のバランスも違うから、(通常のテコンドーより)更に体幹とりにくいと思うんですけど、体幹を使っているからこそ中段(パラテコンドー)にも生きているんじゃないかと」
道場の片隅で見守るのは妻、美穂さんです。
【妻 美穂さん】
「私もどうサポートしていいかというのが必死で。負けてはほしくないのでそこは気をつけるようにしています」
美穂さんが苦心するのは食事でのサポート。
栄養面に加えて単調な食事になりがちな減量生活でも気を紛らせてもらおうと彩りにも気をつかっています。
【妻 美穂さん】
「(パリパラリンピックは)会場に行きます。楽しく試合に挑んでいる姿を見られたら良いなと思います」
趣味は愛車でのドライブ。気分転換する上で欠かせない時間です。
【田中さん】
「毎日のように1時間。1人の時間というか、いろんなことを考える時間として自分の中では大切な時間ですね」
この日、田中さんが向かったのは自宅近くのトレーニングセンター「ニコ道場」です。
下半身の瞬発力を鍛えるため、週2日ほどフランス出身のトレーナー、アンプ・二コラさんから指導を受けます。
用意されたそりには75キロの重り。さらに85キロの二コラさんが乗ります。
【トレーニングセンターニコ道場 アンプ・ニコラ代表】
「テコンドーは、いろんな方向に移動するスポーツなので、下半身の力と、具体的には内転筋のトレーニングです」
横の動きの俊敏さも求められるテコンドーならではのトレーニングです。
【ニコラ代表】
「田中さんは負けず嫌いなアスリート。体幹はものすごく強いので、強い足で強い体幹は瞬発力につながることなんですよね。パリで金メダルをとってくれ!」
パリパラリンピック開幕まで約2カ月。
活躍を誓う田中さんの原動力となっている思いは。
【田中さん】
「挑戦する姿を追い求めていきたい。できないと決めつけず何事もチャレンジし、続けていくということを自分の中で大事にしていきたい。そういった姿を同じ障害があって悩んでいる人などに何か心に残るものがあれば良いなと思います」
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