4月14日の試合で打順を大きく組み替えて勝利した阪神タイガース。この判断についてや本調子ではない大山選手の状態に関して、4月15日、ミスタータイガース・掛布雅之氏が解説しました。

「4番の佐藤は、重たいものを背負って打席に立つ、そういう姿を感じさせなきゃ」

―――阪神タイガースは4月14日の中日戦で、前日から野手全員打順を変更。2番の梅野選手が同点タイムリー、8番の中野選手は勝ち越しタイムリーということで、打順を入れ替えた結果、1分けを挟んだ連敗は3でストップ。うまくそれが的中したように見えますが、掛布さんは『この打順では連覇ができない』とお考えのようですね?

「連覇できません。仮に僕が相手のチームの監督だとすれば、阪神打線の中で一番嫌なところはどこかと言えば、1番・近本、2番・中野の1・2番なんですよ。この1・2番のバランスを崩してくれるってことは、バッテリーがやっぱりすごく楽なんです。1番で木浪が出塁しても、そんなに足が速くありませんので、仕掛けられないですよね。だからピッチャーがバッターに集中して勝負ができるランナーが1塁にいても、相手のバッテリーにプレッシャーが与えられないじゃないですか。近本・中野の1・2番は崩してはいけない打順だと思います。それともう1つ、4番に入った佐藤が14日のゲームでホームランでも打っていれば、『この打順では連覇ができない』というコメントはありませんでしたけれども、岡田監督になって初めて佐藤は4番を打った。去年、優勝を決めたときに大山は膝を崩して泣き崩れましたよね。あの4番のプレッシャーというものを佐藤は近くで見ているわけですから、自分が初めて、日本一になった翌年、岡田監督になって初めて4番を任される、これはもっと重たいものを背負って打席に立つ、そういう姿を感じさせなきゃいけないんですよ。打てなくても構わないんですが、14日の佐藤の4打席は、そういうチームの勝敗を背負う4番としての雰囲気が全くなかったんですね。そう考えると、14日の打順では僕は連覇はないと思いますので、16日の巨人戦から僕は13日の打順に戻すべきだと思います」

―――打順について、選手によって得意不得意みたいなものがあるのでしょうか?

「全然違うんです。回ってくるリズムが。打順のリズムって、結構左右するんです」

―――では、なぜ打順を入れ替えたのでしょうか?

「それはね、やっぱり岡田監督が、去年日本一になり、あれだけ球団の評価が上がり、選手はお金を多く稼いだわけですから、お前らもっとしっかりしろと。そういうメッセージも含まれてるんじゃないかなと」

「大山は下半身の状態が本調子じゃないんだと思う」

―――阪神は4月9~14日に試合がありましたが、試合後の岡田監督の囲み会見がありませんでしたね?

「新聞にコメントが載っていないのは僕も気になっていました。何があったかわかりませんが、コメントってファンの方が読むものなんですよ。ファンの方に対するメッセージなので、何があったかわかりませんけど、監督はコメントをするべきだと僕は思います。16日の巨人戦から、ぜひ監督はコメントをよろしくお願いします」

―――その9~14日の試合を振り返りますと、2勝3敗1分けでした。去年は全試合で4番を務めた大山選手は、14日の試合では5番で出場もヒットなし。今シーズン、現在、打率は1割6分7厘で、ホームランはまだありません。掛布さんも4番バッターでしたが、4番のバッターが5番になるというのはどういった心境ですか?

「今の大山の状態を考えますと、素直に受け入れていると思います。ただ、すごく悔しいと思います。また4番に返り咲くという気持ちでやるのはわかるんですけど、それが力みにならなければいいなと。今の大山のバッティングの状態を見ていると、下半身の状態が本調子じゃないんだと思うんですね。ですから、左足を上げたときに軸足である右足に体重が乗り切らないんだと思うんです。乗り切らない体重に対して、力強く振りたいという気持ちがありますから、上体で振りにいくわけですよ。だから、球場のセンターカメラから大山の背番号3という数字が丸見えなくらい、上体をひねってしまうんですね。これだけ上体をひねると、インコースのボールは見えません。なので、大山自体が、もう少し左の肩を、ピッチャーに向けてステップするぐらいにしないと。今の大山の左の肩は、1塁ベンチの方を向いていますよ。背番号3が見えすぎてしまっているんですね。それだけ下半身に力がない、そういう自分の状態を感じているので、上体だけで打っていってしまっている。あれだけ左の肩が入れば、やっぱり開いてしまうんですね。閉まったものは開くしかないんです」

―――大山選手が一度休むというのは?やはりチームに与える影響が大きい?

「岡田監督が、このチームの4番は大山だと、大山の周りには選手が集まってくると、そういう存在が1軍のベンチからいなくなるっていうのは避けたいというような気持ちもあるんじゃないですかね」

―――その4番に座った佐藤選手にしたらチャンスなのでは?

「チャンスですから、この4番を打つチャンスを佐藤はものにしなきゃいけないんですよ。だから14日のゲームで、1本でもヒットを打てばですね、大山も楽になるんですよ。4番の佐藤が打たないことによって、5番の大山がまた責任を感じるわけですよ。佐藤に4番を打たせてしまった自分が申し訳ないって気持ちになるじゃないですか。だから、佐藤が4番でヒットやホームランを1本でも打ってくれれば、大山自身は5番でじっくり自分の調整をするようなバッティングができるんですけど、4番の佐藤がああいう状態だと、4番でも5番でも大山が決めにいかなければいけないという気持ちになるんですね。そうなるとなおさら肩が入っていくわけです。バットのトップの位置が決まれば…復調のきっかけをつかむと思います」

他チームの阪神に対する攻め方に変化!?

―――そして、中軸で打っていた森下選手。14日の打順は7番でした。

「森下はすごくいいところでホームランを打っていますから、すごく印象は強いと思うんですが、数字で見るとそんなに打っていない。森下のいいところは全力で振り切ることですよ。これが彼のすごくいい点でもあるんですけど、これが彼の欠点でもあると思うんですよ。あれだけ強くバットを振ろうという意識があると、体はぶれますから。強く振ろうとすれば絶対体はぶれるんです」

―――森下選手の調子もあるかもしれませんが、相手チームの攻め方の変化もありますか?

「1年間のデータっていうものがあるので。去年までの阪神に対しては、ストライクゾーンで攻めてないんですよね。ボールゾーンで攻めてくるので、カウントが整うんですが、今年の阪神に対する他の5球団の攻めるリズムは、3球投げて1ボール2ストライクというカウントを作るリズムで攻めてくるんですよ。ストライクのゾーンで攻めてくるから、3球目までに2球のストライクが来るわけですよ、確率とするとですよ。その2球のうち1球ぐらいは絶対ミスがあるんです。そのミスを阪神の打線がしとめられるかです。だから皆さん、これから阪神の野球を見るときにですね、3球目までのバッターとピッチャーの勝負が、阪神の打線にとって大きなポイントになる。1球でも打ち損じてファウルを打ってしまうと、バッターはすごく不利になる」

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