1944年に放送されたラジオドラマをゲームボーイ用の短編ソフトとした「The Curse of the Mantle」(マントの呪い)の配信がItch.toでスタートした。買う側が購入金額を決める「Name your own price」形式の販売で,1ドル以上の値を付けた人には壁紙が配布される。対応する言語は,英語のみであるようだ。



 ゲームのモチーフになっているのは,1943〜1945年にアメリカで放送されたラジオドラマ「The Weird Circle」のエピソードの1つだ。
 この番組は,エドガー・アラン・ポーの「モルグ街の殺人」やエミリー・ブロンテの「嵐が丘」,メアリー・シェリーの「フランケンシュタイン」といった古典小説をラジオドラマ化していたのだが,「The Curse of the Mantle」は,「緋文字」で知られるナサニエル・ホーソンが1838年に発表した短編「Lady Eleanore's Mantle」を原作としたエピソードだった。


公式サイトでは,ゲームボーイ用ソフトのパッケージ風画像も用意されている
 植民地時代のアメリカ,高貴な身分のレディ・エレノア(Lady Eleanore)は,謎の老婆からもらった呪いのマントに魅せられ,高慢な性格に変貌する。エレノアを愛するジョージ・ヘルワイズ(George Helwyse)は,彼女からマントを取り上げようとするのだが,彼女はそれをかたくなに拒む。前後して,マサチューセッツの街では天然痘が大流行。果たしてエレノアとジョージの運命は……といった物語が展開する。古い小説だが,邦訳も出ているので,読んだことのある人もいるだろう。

 ゲーム版「The Curse of the Mantle」は,公式サイトに「ウォーキングシミュレーター」と書かれており,選択要素はわずかだが,ゲームボーイのドット絵とサウンドが見る者の想像力を刺激するという作りだ。グラフィックスがフォトリアルでないことが,かえって有効な演出効果になっている。

エレノアとジョージは恋人同士だったが,エレノアが呪いのマントを手に入れたことで運命が変わっていく

マントに魅入られたエレノアは尊大な人格に豹変。ジョージはなんとかして彼女を元に戻そうとする

エレノアはジョージを愛していたはずだが,マントを手に入れたあとは,彼を避けるようになる。ジョージに居留守を使おうとして失敗し,侍女を罵倒する。ドット絵が,プレイヤーの想像力を刺激するのだ

エレノアにマントを与える謎の老婆(上)と,不気味なマント(下)

 本作を手がけたのは,ストーリードリブンなゲームを制作し続ける個人開発者のAsatiir氏だ。2017年には,ビジュアルノベルとタクティカルRPGを組み合わせた「Roses Will Rise」で,Dubai World Games Expoのベストナラティブ賞を受賞したという。

Asatiir氏が現在も制作を継続する「Roses Will Rise」

 最近,楽曲のプロモーションなどの目的でゲームボーイ用ソフトを制作する例が見られるようになってきた(関連記事1)(関連記事2)(関連記事3)。今回の取り組みも,80年前のラジオドラマを原作としたゲームボーイ向けソフトというユニークなもので,こうした例は今後も増えていくかもしれない。


●製作者サイト
https://www.asatiirstales.com/
https://www.patreon.com/asatiir

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。