今年の漢字に「金」が選ばれた2024年は日経平均株価が史上最高値を記録したり、新紙幣が20年ぶりに発行されたりするなどのトピックスはあったが、総じて景気が良かった印象は特にない。私たちの生活に最も身近な「金」の問題、経済や物価について一体どうなっていたのか…専門家に話を聞いた。
コスト高が続いた1年
この記事の画像(9枚)静岡経済研究所・恒友仁 専務理事は「平均的に見ると『緩やかに回復している』状況」としたうえで、「円安が進行し、原材料高・燃料費も高いまま、輸送費などいろいろなリスクが高止まりしている。企業にとっても家計にとってもコスト高が続いた1年だった」と話す通り、この1年、私たちの生活に大きく影響したのが物価高騰だ。
帝国データバンクが国内の食品会社195社を対象に価格を調査した結果、1年間で値上がりした食品は1万2520品目で、2023年より約6割減ったものの加工食品や飲料を中心に平均で17%の値上がりとなった。
街でも「今年は物価が高くなった。米も一時期なかった時は高かったし、フルーツとか野菜とか(高いと)感じた」「『上がったよね~ どうしようね~』と口癖として出ることが多くなった」といった声が聞かれた。
帝国データバンクによると、2025年は4月までにパンやアルコール飲料を中心に約4000品目が値上がる見通しとなっていて、これまでは円安による原材料費の高騰が主な要因だったが、2025年は輸送費や人件費の上昇による値上げが加わる見込みで、物価高騰は引き続き私たちの生活に影響を及ぼしそうだ。
夏の酷暑が経済にも悪影響
2024年、経済にマイナスの影響を与えた要因は円安や物価高騰だけではない。
夏の異常な暑さもその1つだ。
静岡経済研究所・恒友仁 専務理事は「一般論だが夏に気温が上昇すると経済は活性化すると言われている。具体的にはエアコンのような家電製品が売れて飲料も売れるということでその路線を進んでいたが、35℃を超えて酷暑になってくると逆に経済は停滞してしまうという経験則もある」と話す。
県内では7月に静岡市で40℃、浜松市で39.2℃の最高気温を記録。
8月も各地で35℃以上の危険な暑さが続いた。
2024年4月から9月における松坂屋静岡店の入店客数を見ると7月は前の年と比べ5.9%、8月は4.9%減少。これは猛暑の影響と分析している。
松坂屋静岡店・上西征直 店長は「40℃近い災害級の猛暑の時にはやはり年配の人などが外出を控えていたので、影響はあったかなと思っている」と振り返った。
入店客が減り、どの売り場も売上高に影響したのでは?と思いきや中には好調だった店も…。
そのひとつが地下の“とんかつ店”だ。
「とんかつ まい泉」の植松恵万さんは「パワーがつくよう肉を食べたいというのと、自分で揚げ物をするのが暑くて嫌だなというのがあって買う人が多かったのかなと思う」と話す。
2025年の見通しは…
猛暑やゲリラ豪雨など自然環境も経済に大きな影響を与える中、2025年はさらなる物の値上げに加えて、年明け早々のアメリカ・トランプ大統領の再登板や泥沼化するウクライナ・中東情勢など地政学リスクも軽視できない。
政府は約14兆円規模の経済対策を決定し物価高の克服に乗り出したが、私たちの家計に余裕は生まれるのだろうか?
静岡経済研究所・恒友仁 専務理事は「物価高に勝てるような政策を打っていかねばならない。日本はGDPの5割強が個人消費なので、今後の施策によってどのように個人消費を刺激していくのかがポイント」と強調する。
巳年の2025年、株式相場の世界では古くから「辰巳天井」と株価が高値で推移する年と伝えられているが、賃金がアップし、経済全体が蛇のように脱皮を繰り返して着実に成長していくことが期待される。
(テレビ静岡)
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