日々、仕事に熱中していても、忘れてはいけないのが休み。働く人で「休み」というと、「有給休暇(有給)」を思い浮かべる人もいるだろう。ある会社員は「『有給取得させていただき、ありがとうございます』と言わなければならないことが疑問だ」という声を上げる。ありがとうと言って取得しなければならないものなのか──。年末年始を前に、意外と知らない有給休暇の基本や、誰がどのようなタイミングでとれるのかを専門家に聞いた。

アルバイトも対象 そもそも「有給」とは

有給について街で話を聞くと、「思い立った時や休みたい時に休めない」(26歳男性・営業職)、「社内スケジュール的にどうしても忙しい時期には、極力取らないようにずらさないと、なんか一言言われるだろうと思う」(36歳女性・事務職)という人もいた。

また、美容院で週に3日アルバイトをしているという女性からは「取りづらいだったり、無いものだと思えといったものがあったりすると思うので、あるなら、平等に取りやすい会社だったらいいなと思う」(20歳・専門学生)という心配の声もあがった。

有給について多くの人から相談を受ける「社会保険労務士法人とうかい」の小栗多喜子さんに、有給を取得するにはどうすれば良いのか、話を聞いた。

社会保険労務士 小栗多喜子さん
「従業員からしたら、『私、有給ありますよね』と言えばいいというだけです。(会社は)『無い』とは言えないので、それさえ言えれば大丈夫かなと思います。

もし『無い』と言っている会社がいたら、法律を知らないで言っているケースがあります。他にも、週に1回も働いてない人で、付与されていない可能性もあります」

そもそも何日分の有給があるのか、付与されるタイミングはいつなのか、知らない人もいるのではないだろうか。

厚生労働省によると、有給休暇とは「一定期間勤続した労働者に対して、心身の疲労を回復し、ゆとりある生活を保障するために付与される休暇」のこと。有給を取得しても賃金が減額されることはない。

その対象は、付与日の直近1年間の出勤率が8割以上の従業員。採用から6か月を経過した日にまず10日が付与される。その後、1年を経過するごとに、勤続年数に応じた日数を与えなければならないとされている。

付与される日数を具体的に見ていくと、採用から6か月で10日、1年6か月で11日、2年6か月で12日、3年6か月で14日、4年6か月で16日、5年6か月で18日、6年6か月で20日とされている。

有給は、パートやアルバイトの従業員も対象で、仮に週1回の勤務だったとしても、全労働日の8割以上の勤務を6か月続けると、1日の有給を与えなければならない。

週所定労働日数が4日以下かつ週所定労働時間が30時間未満の労働者の付与日数(出典:厚生労働省)

さらに、2019年4月には労働基準法が改正され、年に5日の有給取得が義務化されていて、取得できていない場合は、会社に対し、1人あたり30万円以下の罰則がある。

“忙しくて取れない”という人もいるが、有給は“分けて取る”こともできるという。

社会保険労務士 小栗多喜子さん
「取りづらい方は半休を10回取ってもいいんです。時間単位の有給は認められないのですが、0.5日の有給10回でも年5日の取得となります」

「有給に、なんで『ありがとう』なのか疑問を感じる」

従業員からではなく、経営者からも相談を受けることがあるという小栗さん。より有給を取りやすくする環境整備のために、『計画有給』を経営者が使うケースが多いと話す。

社会保険労務士 小栗多喜子さん
「計画有給の制度というのは、年に5日間は自由に使える有給を残して、5日間を超える部分は、会社が時季を指定して有給を取らせることができるというものです」

他にも有給取得を促進する制度として、誕生日などに使える『アニバーサリー有給』の対象として、両親や子ども、ペットまでOKという会社もあったり、『親孝行有給』と称した有給を設けている会社もあったりするという。ちなみに、親孝行有給は取得すると1日5000円が出るそうだ。

一方、街では「『有給取得させていただきまして、ありがとうございます』のような言い回しをする。別に使っていいものなのに、なんで『ありがとう』なのか疑問を感じる」(43歳男性・会社員)という声もあった。

さまざまな取り組みがある中で、小栗さんは、会社と従業員の立場の違いを感じると話す。

社会保険労務士 小栗多喜子さん
「いろんな制度で休みやすい世の中になってきているが、生産性を落としてはいけないとも言われる。経営者からは『もうどうしたらいいの?』といった相談があります。

『取りたい従業員』と『取らせたくない会社』という二重構造のようなもの(の溝)は、埋まらないのではないかなと思います」

年末年始は「有給」か「休日」か

余談だが、今年はカレンダーの並びもよく、9連休の人も多いと聞く。

街行く人に“年末年始は有給として休んでいるか”について聞くと、「カレンダー通りなので、有給かどうかってあまり気にしたことがない」(36歳女性・事務職)という人がいた。

年末年始の休みは、有給を使わなくても休日扱いなのか?それとも、有給を取らなければ休みにならないのか?

どのような枠組みでの休みなのだろうか。

社会保険労務士 小栗多喜子さん
「年末年始が、もともと会社で定められた休みの場合は、有給休暇を取る余地はありません」

つまり、会社の規定によって違ってくるため、年末年始が有給かどうかは、それぞれの会社次第。就業規則を確認する必要がありそうだ。

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