石川県小松市は、県内では2番目に多くの外国人が暮らす地域。その中でも近年急速に増えているのがベトナム人だ。そんな彼らが足しげく買い物に訪れるのが、小松駅近くにある「ベトナムショップ」。看板にはベトナム語に英語、そして日本語で「いらっしゃいませ」と書かれている。店内にはどんなものが売られていて、どんな人が来るのか取材した。
この記事の画像(10枚)店に入ると、オーナーのグエン・チー・タイン・ドックさんが迎えてくれた。ここはアジア系の食材を販売する店で、ベトナム以外の商品も取り扱っているという。
「ベトナムショップ」オーナー ドックさん:
「最近はミャンマーやインドネシアの人も増えていて、そのあたりの食材も仕入れている。」
冷凍の魚は丸ごと1匹…日本では珍しい商品がずらり
店内を見渡すと、商品の説明や値札はすべてベトナム語で書かれている。ベトナム風のお好み焼き「バインセオ」の粉やツバメの巣入りドリンク、ベトナムのデザート「チェー」の缶詰など日本のスーパーではあまり見かけない商品が並んでいる。またレッドコロソマやティラピアといった東南アジアの魚は丸ごと一匹の状態で冷凍販売している。
ベトナム人たちが“母国”を感じられる店を目指して
オーナーのドックさんは日本に来て16年。ベトナムの高校を卒業したあと家族が暮らす日本にやってきた。来日した当初は日本の企業で働いていたが、あるとき同じように働くベトナム人実習生たちが故郷の食材や調味料を求めていることに気が付いた。ドックさん自身もそのように感じていたため、ベトナム食材の店をオープンしたという。
「ベトナムショップ」オーナー ドックさん:
「ベトナム人たちが週末に買い物に来て、母国を感じられるような雰囲気を作りたい。」
スタッフもおすすめ…“ベトナムの味”を再現できる食材
ここで日本語を話すことができるドックさんが所要のため外出してしまった。ディレクターは日本語をほとんど話すことができない店のスタッフ、アインさんと二人きりになった。スマートフォンの翻訳サービスを利用して、アインさんに「ベトナム料理は作りますか?」と尋ねてみた。すると、自分が作ったベトナム家庭料理「骨肉とジャガイモのスープ」の写真を見せてくれた。店でも販売している骨付き肉と野菜を煮込んだという。使ったのはウシやウマなど四本足の動物の後ろ脚にある関節部分。良いダシが出るうえ、骨の周りについている肉をこそげとって食べるのが美味しいのだという。
昼休みの時間になるとアインさんがベトナムで定番の即席めんをすすめてくれた。チリソースの甘みと酸味、ほどよく辛さが効いた味。器に入れてお湯を入れるだけの手軽な調理方法が人気で、現地ではスーパーやコンビニに必ずと言っていいほど置かれているそうだ。
ベトナム人留学生から介護職員、日本人の常連客も来店
午後には日本に来て2年目という留学生のベトナム人女性2人組が来店した。買い求めていたのは冷凍の白身魚バサ。青菜の塩漬けと合わせて煮込み料理を作るそうだ。
続いてやってきたのは日本に来て5年、介護の仕事をしているというベトナム人男性。1週間に1回はこの店に来て買い物をしているという。この日はベトナム料理に欠かせない調味料、ヌクマム(魚醤)を購入した。店の魅力を尋ねると、日本のスーパーにはあまり売られていない骨付きの大きな肉が販売されているところだという。自分で好みの大きさに切って使うことができるのが良いそうだ。
客の中には日本人もいた。地元・小松市内で九谷焼の販売をしているという男性はコメで作っためん、ライスヌードルを買い求めていた。アレルギーがある子供に食べさせるためだという。また自分自身もアジア圏の料理が好きで、日本のスーパーにはない食材を求めて、この店に良く訪れるのだという。
現地の食文化が垣間見えるベトナム人の生活拠点
「ベトナムショップ」を訪ねてみると、日本では普段目にしない商品が並び、国内にいながらベトナムの食文化や暮らしを感じることができた。石川県には2023年12月末時点で18,826人の外国人が住んでいて、このうち5,246人がベトナム人。県内に住む外国人としては最も多くなっている。彼らにとって、こうした店は大切な生活拠点のひとつとして機能している。また日本人にとっても、彼らの文化に触れる交流の場として活かされていくのかもしれない。
(石川テレビ)
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