本格焼酎の出荷量が10年連続で日本一の宮崎県には、38の焼酎の蔵元があります。
焼酎造りの伝統を守り続ける日之影町の蔵元と、海外展開に取り組む日南市の蔵元からは歓迎の声が聞かれました。
日之影町にある姫泉酒造。約190年前、江戸時代の1831年に創業し、日本の伝統的酒造りを象徴するこうじ菌を生かした酒造りを続けてきました。
(姫泉酒造 姫野建夫社長)
「これはドラムといいまして、こうじを作る機械になります。菌をつけて、棚でこうじを仕上げます」
築約170年の蔵には、創業当時からのこうじ菌・蔵内菌が息づいていて、この菌の存在が独特の味わいにつながっていると考えられています。そのため、酒蔵を引っ越す際には、建物を移築しています。
(姫泉酒造 姫野建夫社長)
「道具から柱から全て運んできて、ここでまた建てる。だから菌を持ってきているんですよね。この昔からついている菌が大事です」
姫野社長は、「古いものは一度やめたらもう造れない」との思いで、蔵を守りながら、こうじ菌を生かした伝統の作り方を続けてきました。
(姫泉酒造 姫野建夫社長)
「やっぱり伝統的酒造りが世界的に、ユネスコに認められたということで非常に感無量です。今度は世界の人が見ているので、うまく日本の伝統を守っていくかが非常に大事だと思う」
姫野社長は、ユネスコへの登録を機に、伝統的な酒造りの文化や歴史などを広く伝えていくことが大事だとしています。
(又川岳人記者)
「そして、ユネスコへの登録は焼酎を海外市場に知ってもらう大きなチャンスでもあります」
日南市には、県内最多の13の蔵元が残っています。
その日南市で、明治25年(1892年)に創業した古澤醸造。
(古澤醸造 古澤昌子さん)
「これからは『こうじ』という言葉が、世界標準になっていくことを期待しています」
古澤醸造は、2016年から県内7つの蔵元ともにニューヨークへ渡り、試飲会などを通じて海外市場の開拓に取り組んできました。
(古澤醸造 古澤昌子さん)
「受け入れていただけるかドキドキしていましたが、こちらで食べた食事にもあうと確信を持てました」
2020年には、現地のバイヤーと契約を結び、アメリカへの輸出をスタート。今年9月には、ベルギーで開かれた蒸留酒のコンテストでゴールドメダルを獲得するなど、伝統の味を着実に世界に広めてきました。
一方で、痛感したのは日本酒と焼酎の認知度の差。古澤さんは、焼酎が「SAKE」のように広く知られることが、輸出や消費の拡大につながると話します。
(古澤醸造 古澤昌子さん)
「本格焼酎は、スピリッツ(蒸留酒)の中でも違うものなんだよという差別化をより明確にできると、私たちが入っていけるところも出てくるでしょう。コロナ以降、アメリカには行けていないんですけど、風景がかなり変わってきているんじゃないかと期待しています」
大切に伝統が受け継がれ、本格焼酎の出荷量・日本一を誇るまでになった宮崎県の酒造り。ユネスコの無形文化遺産登録で新たな歴史が始まろうとしています。
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