会見で記者の質問に答える小林哲也会長 =25日午後、大阪市天王寺区(柿平博文撮影)

近鉄グループホールディングス(GHD)は25日、小林哲也会長の6月の退任を発表した。小林氏は同日の記者会見で「資材の高騰や金利上昇など、わが社を取り巻く状況は予断を許さない。持続的な成長に向け、新たな担い手にバトンタッチすべきだと判断した」と述べた。昨年、近畿日本ツーリストの不祥事でいったん人事が撤回される異例の事態となったが、小林氏の発言には経営への強い危機感がにじみ、早期の交代を模索していた様子が伺えた。

小林氏は社長、会長として近鉄GHDを約17年にわたり率いた。新型コロナウイルス禍で経営が大打撃を受けた際には、小林氏はグループの構造改革を断行。消費者を主要顧客としていた経営から、法人需要を取り込む戦略にかじを切り、国際物流事業を手掛ける近鉄エクスプレスの完全子会社化などに踏み切った。

業績回復に道筋をつけ、近ツーの不祥事にも対処。若井敬・次期社長らへのバトンタッチを決断した。

ただ、若井氏は「金利の上昇や人材不足など、経営環境は非常に流動的だ」と述べる。近畿日本鉄道は私鉄最大の路線を保有するが、沿線人口の減少などが今後、大きな負担となる。

若井氏は財務分野に精通し、次期会長の都司尚社長は鉄道畑を歩んできた。激しく変化する経営環境で、両氏の手腕が試されることになる。(黒川信雄)

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