(ブルームバーグ):三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)で市場事業部門長を務める関浩之専務は、日本国債での資金運用について、利回りがもっと上昇するのを見極めた上で、投資を積極化したい姿勢を示した。日本銀行が早ければ年内にも追加利上げに踏み切る可能性があるとの見方も明らかにした。

関氏はブルームバーグとのインタビューで国債運用について、10年国債の利回りと金融政策の見通しを反映するオーバーナイト・インデックス・スワップ(OIS)の金利水準がそれぞれ1.2%以上となることなどが、「本格的な投資を開始する目線だ」と述べた。

関氏

国債市場では、日銀による次の利上げ時期やその幅を巡り、神経質な取引が続いている。7月上旬に一時1.1%を超えた10年国債利回りは、日銀が0.25%への利上げを決めた7月下旬の金融政策決定会合後に急低下。足元では0.8%台後半で推移している。

日銀の動向について関氏は、早ければ今年12月または来年1月に0.25%の追加利上げに踏み切り、政策金利は0.5%になる可能性があるとの見通しを示した。「日銀は少なくとも1%以上の水準にある中立金利に向かって政策金利を引き上げていくことを視野に入れていると思われる」と指摘した。

関氏は直近の日銀レビューや植田和男総裁の発言などを踏まえ、「先行きも経済・物価が日銀の想定通りに推移していく可能性が相応に高い」と分析。日銀は当面、段階的な利上げにより金融正常化を進めていくとする基本的な姿勢に変わりはないとの見方も示した。

 

電力市場に参入

また、関氏は三菱UFJ銀行が8月30日に発表した電力売買市場への参入に関連し、年間数十億円の経常利益が見込めると明らかにした。同行は大手行として初めて電力先物取引の関連資格を取得しており、卸電力の現物取引業務を手がける新興企業の「イークリア」に49%出資し、現物も含めた取引に注力する。

価格変動や取引リスクの回避に活用できる電力先物取引は電気事業者の経営安定化などを目的に2019年から始まったが、取引量は現物に比べてわずかにとどまる。同行は自らの信用力も生かして電力取引市場を活性化し、日本のエネルギーの安定供給に貢献したい考え。MUFGは先物などの担当に20人程度を充てたという。

関氏は、先物市場の流動性が高まれば「小売電気事業者などによるヘッジが可能となり、企業や家計などに固定価格の電気を安定販売する余地が広がる」と述べた。同時に発電事業者にも、設備投資計画の策定で採算が見通しやすくなるなどメリットがあり、投資促進にもつながると指摘した。

イークリアへの出資を通じて現物市場にも参入する狙いについて関氏は、現物と先物の取引参加者の間に入りそれぞれのニーズをつなぐスリーブ取引と呼ばれる手法の取引を「積極的に推進していく」ためだとし、市場拡大に意欲を見せた。

--取材協力:小田翔子.

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