(ブルームバーグ):8月初めの暴落劇から立ち直ったかに見えた日本株が、9月に入って再び波乱の様相を呈している。日経平均株価は5日までの3営業日で5%超下落。海外では米国経済の先行き不安が再び台頭し、真夏の暴落のトラウマが投資家の脳裏をよぎる。ただ、相場の実態はいくつかの点で1カ月前とは明確に異なり、こうした懸念は杞憂(きゆう)に終わる可能性がある。

8月の相場波乱時は日本が世界の中でも最大の下げを記録し、世界的株安の震源地だとみる向きもあった。しかし、今月に入ってからの下げ局面では日本株の下落率は今のところ相対的に小さい。

 

足元の下げ相場の特徴として海外要因の大きさが挙げられる。東証33業種の下落率上位は半導体関連銘柄を含む精密機器や電機、機械などのテクノロジー関連、石油・石炭製品などのコモディティー関連だ。半導体は米エヌビディア株が決算発表後に下落基調となり、人工知能(AI)ブームの行き過ぎに対する警戒感が影響した。コモディティー関連は軟調な国際原油市況が売り材料となった。

これに対し、8月初めの暴落を主導したのは国内独自の要因で年始から買われてきた業種群。日本銀行による金融政策の正常化期待で買われてきた銀行や保険などの金融セクターを筆頭に、米著名投資家ウォーレン・バフェット氏による保有で先高観が高まった商社など卸売り、円安の恩恵を受けてきた輸送用機器が下落セクターの上位に並んだ。

 

日本株市場全体に対する売り圧力が小さい点も8月とは異なる。これは東証プライム市場の売買代金に反映されており、今月に入ってからの1日当たりの平均売買代金は4兆円を下回り、8月の暴落時と比べ4割以上少ない。

さらに、8月の下げを増幅させた主犯格とみられるのが、大量にたまっていた信用買い残の投げ売りだ。急落直前の買い残は18年ぶりの高水準に膨らんでいた。一方、T&Dアセットマネジメントの酒井祐輔シニア・トレーダーは、こうしたポジションは先月の暴落で「既にふるい落とされており、パニック的なことは起こらないだろう」との見方を示す。

 

一時は昨年10月以来の3万1000円台まで下げたものの、今月2日には暴落前水準の3万9000円台を回復していた日経平均。しかし、4日の取引で再び1638円安と今年3番目の下げ幅を記録したことで、にわかに投資家の恐怖感が増幅し、日経平均ボラティリティー・インデックスは一時40台へと急上昇した。

ただ、CLSA証券の釜井毅生エグゼキューション・サービス統括本部長は、直近の急落局面では「まだ市場全体としては不安定なところがあると感じた」としつつも、雰囲気は先月の歴史的暴落の時とは比較にならないと話している。

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