(ブルームバーグ):今週は人工知能(AI)関連株が世界的な急落に見舞われたが、技術そのものに対する需要は依然として高く、日本でもデータセンターの整備にかかわる電線メーカーの株価を押し上げている。

電線大手のフジクラとSWCCの株価は今年、国内最大の伸びを見せている。今週はAI関連が多く含まれるTOPIX電気機器指数の5.5%安とほぼ連動する形で下落しているが、年初来でフジクラ株は約3.6倍に急騰し、東証株価指数(TOPIX)構成銘柄で2番目に高い上昇率を記録。SWCCは74%上昇している。

年初の日本株上昇をけん引した半導体銘柄は、米エヌビディア株の急落が世界のハイテク株売りをもたらした後も相対的に割高なままだ。そのため投資家は、電線や電力、バッテリー関連など、AIインフラの構築に必要な企業に広く目を向けるようになっている。

AIの運用には膨大な電力が必要で、データセンター建設が急増するとの期待に拍車をかけている。調査会社アイマークグループによると、日本のデータセンター市場は24年から32年にかけて年間10.9%の成長が見込まれている。

岩井コスモ証券の清水範一アナリストは、これまでは東京エレクトロンなど半導体関連銘柄がAI期待で上がってきたが、8月の市場波乱でだいぶ選別されてきたと話す。その上で、将来への期待がそがれない限り「AIやデータセンターに対する投資は継続する」と述べた。

ブルームバーグのデータによると、株価収益率(PER)はフジクラの約18倍、SWCCの14倍に対し、東エレクは24倍、アドバンテストは57倍と割高だ。TOPIXのPERは約15倍。

オルタス・アドバイザーズのストラテジスト、アンドルー・ジャクソン氏は、「データセンターの建設やグリッド全体のインフラ整備が進んでいることを考えると、日本の先行きは明るい」とみる。「AIデータセンターは通常のデータセンターの8倍の光ファイバーを使用している」と言う。

もっとも、AIに対する評価と期待が高いだけに、関連株は急速な売りにさらされやすい面もある。3日の米株式市場ではAI株の過熱に対する懸念からエヌビディア株が急落し、時価総額で米1銘柄として過去最大の2790億ドル(約40兆5000億円)が吹き飛んだ。これは世界中に波及し、4日の日本市場でフジクラと古河電気工業の株価は一時9%以上下落した。

ブラックロック・インベストメント・インスティテュートのジャン・ボアバン氏らはメモで、「一部の投資家はここ数カ月でハイテク関連のポジションを減らしており、持ち高を再構築する余地があることを示唆している」と指摘。「AIテーマのオーバーウエートを維持している」とした一方で、トップ企業の収益停滞の証拠やハイテク部門以外でのAI採用状況の変化、米国の成長鈍化の影響など「われわれの見方を変える兆しも注視している」と記した。

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