NTTは株主数が1年で2.5倍に急増した

東京証券取引所が14日発表した2023年度の株式分布状況調査の詳細版によると、NTTの株主数が22年度比2.5倍の177万9763人と上場企業で14年ぶりに首位となった。自社がつくった歴代最多記録も31年ぶりに更新した。株式の大型分割に加え、新NISA(少額投資非課税制度)を背景に個人株主が増えた。

東証は株式の売買単位である「単元株」の株主数の上位企業を毎年公表している。各社の決算期末時点の単元株主数を集計する。1単元は100株に統一されている。

ランキング上位には、新NISAを背景に長期投資の個人を呼び込んだ企業が目立つ。株式分割を実施して最低投資額を下げたことも個人の流入を促した。松井証券の窪田朋一郎氏は上位勢の特徴として「知名度の高さや最低購入金額の安さ、高配当利回り、株主優待の充実」を挙げる。

NTTは自社が1992年度につくった上場企業の歴代最多記録(170万866人)を更新した。23年7月に1株を25株に分割し、株式を1万円台から買えるようにした。予想配当利回りも3%台半ばと、東証プライム上場企業の平均の2%台半ばを上回る。2年以上保有すると「dポイント」が得られる優待も提供している。

株主の若返りも進んだ。NTTによると、40歳代以下の株主の割合は24年3月末時点で4割を超え、20年12月末の1割から上昇した。

2位は三菱UFJフィナンシャル・グループで、24%増の113万人だった。同社の単元株主数が100万人を超えるのは初めて。株式を十数万円から買えることや安定した配当水準が個人の人気を集めた。

3位のイオン(87万人)は持ち株数に応じて買い物額の3〜7%分の還元を得られる優待が人気だ。一定基準を満たすと商品券ももらえる。6位の日本たばこ産業(JT)も予想配当利回りが足元で4%台あり、個人をひき付ける。

4位のトヨタ自動車は23年度に株価が2倍に上昇して配当妙味が薄れ、株主数が減った。オリックスは機関投資家との公平性を考慮して株主優待を廃止したことが影響した。

株主数は今後も増加傾向が続く見通しだ。今年10月にはソフトバンクやソニーグループなどが株式分割を予定する。14日終値で計算すると、10分割するソフトバンクの最低投資金額は18万円台から1万円台に下がる。5分割するソニーグループは26万円台に下がる。

東証は50万円未満を最低投資額の望ましい水準に掲げるが、キーエンス(670万円)といった高い銘柄はなお残る。東証は今秋から少額投資のあり方に関する勉強会を始め、25年3月にも結果を公表する。最低投資額の引き下げに向け、米国と同様に株式を1株から買えるようにするかどうかが論点の一つだ。

企業にとって、株主が増えると管理コストや株主提案が増える可能性がある。大和総研の鈴木裕主席研究員は「資産形成の裾野が拡大するのは好ましい一方、建設的でない株主提案が乱発されないよう対策を講じる必要がある」と指摘する。

(野口和弘)

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