上場企業の温暖化ガス排出量の開示が進んでいない。デロイトトーマツグループによると、2023年度の有価証券報告書で排出量を開示したのは自社拠点分が2割、原料調達など供給網全体が4%にとどまった。大企業を中心に今後温暖化ガスの開示義務化が見込まれるなか、データ収集などの体制整備が急務であることが浮き彫りになった。
デロイトが上場企業3553社の23年度有報(23年4月期〜24年3月期)を集計した。工場など自社拠点からの排出量を示す「スコープ1」の開示は802社、自社拠点で使ったエネルギーに由来する排出量「スコープ2」の開示は807社(いずれも全体の23%)だった。
一方で原料調達や輸送など供給網での排出量「スコープ3」の開示は157社(4%)と少なかった。開示したのは丸井グループや住友林業など一部にとどまった。
23年3月期の有報から環境などサステナビリティー情報の開示欄が新設された。温暖化ガス排出量の開示は義務になっていないが、今後は大企業から順次義務化される見通しだ。投資家も排出量を重視するようになっており、企業は対応を迫られている。
デロイトトーマツグループの中島史博マネージングディレクターは「関係部署や取引先などからデータを収集したり、排出量を算定したりする社内体制の整備が追い付いていない」と指摘する。取引先のスコープ1、2の開示が不十分で、自社のスコープ3排出量の算出に時間がかかっている企業も多いという。
排出量データの信頼性を担保するために第三者の認証機関による保証や検証を受けた企業は83社(2%)とわずかだった。排出量の削減目標を開示したのはスコープ1と2が1408社(40%)、スコープ3が351社(10%)だった。
金融庁は温暖化ガス開示を含めたサステナ情報開示のルール作りを進めている。時価総額3兆円以上の東証プライム企業は早ければ27年3月期からスコープ3までの開示が義務化され、段階的に対象企業が拡大される見通しだ。
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