3月までの雇用者数の伸びは月平均17万4000人程度となる見込み=AP

【ニューヨーク=竹内弘文】米労働省は21日、2024年分の雇用統計について年次改定の推定値を公表した。3月時点の雇用者数は81万8000人程度の下方修正になる可能性が高い。米労働市場ではすでに減速感が色濃くなっていたが、実態はさらに冷え込んでいることを映す。米利下げペースの加速が意識される可能性がある。

正式な改定値は25年1月分にあわせて公表される。米労働省は毎年この時期に失業保険などの実績を加味して暫定的な推計を出している。雇用統計の公表値では3月までの1年間、月平均で24万2000人増えてきた。今回の推計ではこれが17万4000人程度だったことになる。

米連邦準備理事会(FRB)は物価安定と雇用最大化の2つの使命を帯びている。新型コロナウイルス禍で伸びた物価上昇率が徐々に落ち着きを取り戻すなか、FRBの金融政策の軸足は、需給が緩み始めた労働市場の下支えへと移りつつある。

FRBのパウエル議長は7月31日の記者会見で、労働市場は「継続的で緩やかな正常化」の過程にあるとの見方を示していたが、大幅な雇用者数の下方修正は金融政策の行方を左右しうる。雇用者数の下方修正幅は60万人程度とみていた民間エコノミストの見積もりよりも大きく、ブルームバーグ通信によると過去15年間でもっとも大きかった。

改定推計値の発表に先立ち米国債の利回りが各年限で低下(債券価格は上昇)していたため、発表直後は2年債利回りなどがやや上昇する場面もみられた。外国為替市場や米株式市場の反応も発表直後は限定的だった。すでに金融市場が9月の利下げ開始をほぼ確実視していることが、市場反応を抑える要因となったようだ。

金融市場の参加者の関心は、米カンザスシティー連銀主催の経済シンポジウム「ジャクソンホール会議」で23日に講演するパウエルFRB議長の発言内容に向いている。労働市場の現状についての認識や今後の金融政策運営に関する発言の内容次第で、相場が大きく動く可能性がある。

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