勝田貴元選手に続くドライバーの発掘と育成を目的にしたWRCチャレンジプログラム。富士スピードウェイのショートコースで行われたセレクションには上限となる100人が応募。厳しい審査のなか4期生の候補6人が選ばれた。そして、昨年に続き66歳の「ラリーバカ」国沢親方も挑戦した。
文:国沢光宏/写真:ベストカーWeb
■画期的なセレクションに性懲りもなく応募!
歌手やタレントになる早道と言えばオーディションである。スカウトというアプローチもあるけれど、後者は運に頼る。自分で自分の道を切り開きたいのなら前者でしょう!
モータースポーツの場合、どうすれば選手になれるか? 今までだと家がお金持ちだったり、家族に有名ドライバーなどいる環境じゃないと難しかった。オーディションもあるが、ある程度の実績を持つドライバーしか立候補する資格なし。
速く走るポテンシャルを持っていてもチャンスはほぼなかった。さて、人間には「才能」という不思議なチカラがある。100mを10秒台で走る人は、あまり練習しなくたって12秒台で走ってしまう。
逆に14秒台の人だと、どんなに練習したって12秒台すら難しい。クルマの運転だって同じ。才能ある人は練習しなくたってキラリと光るセンスを持つ。ダイヤモンドの鉱石と言ってよかろう。日本語だと「金の卵」ですね。
そいつを見つけるのがドライバーのオーディションである。海外では以前から行われていた。だからこそ体操の選手(セバスチャン・ローブ)やスキーのインストラクター(セバスチャン・オジエ)がWRCのトップドライバーになったりします。
同じことを日本でもやってみよう、というのが『WRCラリーチャレンジプログラム』だ。2015年にスタートし、1期生は勝田貴元選手。2021年に2期生を募集し、現在2人がフィンランドベースでラリー活動をしている。そして2023年に3期生のオーディションを行った。
「世界で通用する日本人ドライバーをもっと育てたい!」というのがモリゾウさんの夢らしい。おっしゃる通りで、我が国は若手のラリードライバーを育ててこなかった。
全日本ラリーのトップ争いをする日本人ドライバーを見ると、皆さん60歳に近い50歳代! おそらく世界一高齢化が進んでいると思う(笑)。そんなことから2024年もオーディションを行うことになった。
WRCラリーチャレンジプログラムのオーディションが始まった2021年、若いドライバーを育成するのが目的ながら、 TOYOTA GAZOO Racingに聞いたら「どうぞ」というので2021年のオーディションに申し込んだ。
しかし! 新型コロナのため実技試験は行われず、実績優先で選抜された。私は「高齢なので伸び代はない」ということなんだろう。そらそうだ。泣きの落選です。
どうせ落とされるなら実技試験を受けたい、ということで2023年も応募すると、受験時点で25歳という年齢制限が掛かっちゃいました。しかし、そこをなんとか! と粘ると「試験だけなら受けていいですよ」。となれば受けるしかあるまい、とオーディションに臨む。
隣には試験官が座り、設定されたコースでタイムアタックするという内容。私の試験官は2008年のラリージャパンで優勝したミッコ・ヒルボネンさんじゃありませんか!
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■WRC優勝15回のミッコさんとタイムアタック!
タイムは一次選抜合格基準の3番手。ヒルボネンさんも「いいね!」。いい気分のままWRCジャパンに出場したら、期待していた以上のリザルト(19位完走)を得た。そして2024年のオーディションです。今回は「受けるならどうぞ」。
ありがたいことにワイルドカード扱いしてくれた。ジジイ枠のため試験走行はオーディション終了後。それまではダイヤモンド鉱石の皆さんに話を聞く。するとどうよ! もう経歴はさまざま。
大学の自動車部でジムカーナやダートラをやっている人もいれば、ゴーカートすら乗ったことのない人もいる。なんと2024年は100人(上限)がエントリーしたそうな。門を広く開いたオーディションですね。これだけ候補者がいれば、金の卵だっていると思う。
実際、今年はレベルが高いドライバーもいる。走りを見ていて「この人は才能あるね!」。昨年最終選考まで残ったけれど残念賞だった人も上手。いずれもフィンランドでの最終選考に進んだ。
おっと私でした。今年も試験官はヒルボネンさん。クルマは昨年同様1.5ℓNAのGRヤリスRS(CVT)です。昨年以上に気合いを入れてトライしたら、攻めすぎてアンダー出して沈没! ヒルボネンさんに「泣きのもう一回」を頼んだら「いいですよ」というので再アタックしたら、これまた攻めすぎて沈没!
お願いしてお手本を見せて貰うと、上手過ぎる! 無駄なし! 神業ですよ。ウェットで4秒もちぎられてしまいました。WRCで15回も優勝したんだから当然か。ラリーファンとしちゃ死んでもいいくらいの幸せでした。
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■フィンランドで開催される最終選考に進んだ6人
100人が応募し、6グループに分けて行った1次審査の結果21人が2次選考に進み、フィンランドで行われる最終選考に6人が進んだ。
昨年最終選考会に残りながら涙をのんだ尾形莉欧(23)と米林慶晃(17)、モリゾウチャレンジカップに参戦した稲葉摩人(21)や柳杭田貫太(KANTA・24)、大学自動車部で夢を追う浅野翔己(22)、そして日本人の母を持ち、ニュージーランドで活躍するジール・ジョーンズ(19)の6人だ。
この6人にモリゾウチャレンジカップの初代チャンピオン、山田啓介(30)を加えた7人が、フィンランドに渡り、フィジカルテストや5日間にわたる雪と氷のハードな走行テストを受け、2025年から活動する育成ドライバーが決定する。
誰が選ばれるのか? 注目の結果は改めてご報告しよう。
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