2023年7月に登場した新型のマイクロEV、FIAT「トポリーノ」が可愛すぎる。クルマ好きおじさんなら、聞いたことがあるはずの「トポリーノ」という名称。時代を反映したシティコミューターにこのデザインと名前を付ける、そのセンスも素晴らしい。日本には導入されていない、世界一かわいらしい「ハツカネズミ」について、ご紹介しよう。

文:立花義人、エムスリープロダクション/写真:STELLANTIS

イタリア人にとっては馴染み深い「トポリーノ」

 「トポリーノ」は、1936年から1955年まで生産されていた初代500(チンクエチェント)に付けられた愛称だ。イタリア語で「ハツカネズミ」を意味する言葉だが、丸みがあるクラシカルなボンネットやフェンダー、愛嬌のあるグリルやヘッドライト、2人乗りで小ぶりなフォルムという出で立ちが、まさに街をクルクルと駆け回る小さなネズミのように見えたのだろう。イタリアの大衆から大きな支持を得たトポリーノこと初代500は、商業的に大きな成功を収め、まさにイタリアの国民車として受け入れられた。

 その愛称がそのまま車名に用いられたのが、今回紹介するマイクロEV、フィアット「トポリーノ」だ。デザインは2代目500(ヌォーヴァ・チンクエチェント)をオマージュした、シンプルでレトロな、愛らしいフォルムが与えられており、ボディサイズは全長2,535mm×全幅1,400mm×全高1,530mm、ホイールベースは1,730mm。日本の軽自動車と比べてみてもかなり小さい、2人乗りのパッケージングだ。

フィアット「トポリーノ」。2代目500(ヌォーヴァ・チンクエチェント)をオマージュした、シンプルでレトロな、愛らしいフォルムが与えられている
小ぶりだが2座のシートが用意される。シートは少しずれた位置に配置されており、少しでも狭苦しさを感じさせない工夫がなされている
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最高時速45km/hのシティコミューター

 BEVであるトポリーノの走行用モーターの最高出力は6kWh(8.2ps)、最高時速は45km/h。バッテリーの容量は5.4kWhで、満充電からの走行可能距離は最大75km。満充電までの充電時間はおよそ4時間だ。2020年に発表されたシトロエン「アミ」、そして同じステランティスグループのオペル「ロックスe」の兄弟車であり、デザインこそそれぞれのブランドの特徴に従っているものの、メカニズムは3モデルともほぼ同じ。

 一般的なBEVから比べるとかなり控えめなスペックに感じるが、これはEUの「Quadricycle(クアドリサイクル)」というマイクロカーのカテゴリーで、そのうちのさらに軽量タイプ(L6e)に準拠しているからだ。国によって免許の区分は異なるが、イタリアの場合は14歳から原付二輪免許でトポリーノを運転することができる。イタリアでの定価は9,890ユーロ。ただ、国の補助金があるため、7,544ユーロで購入することができる(2024年12月現在)。

ヨーロッパの一般家庭にあるコンセントに差し込んで充電できる。満充電まではおよそ4時間だ

日本でもこうした遊び心満載のモデルが、身近な存在になって欲しい

 徹底したコストダウンが図られてはいるものの、デザイン力でそれをカバーしているトポリーノは、個性で物を選ぶ、いまの時代にぴったり。これが日本でも原付と同じような感覚で乗れることができたら、通勤や通学で使いたい若い人や高齢者のちょっとした移動などに大活躍するのではないだろうか。

 筆者はイタリアのミラノに住んでいるが、アミやトポリーノはよく見かける。特に都市部ではこうしたマイクロEVは便利で、存在感を増してきている。なんといっても低価格で、安心感の高いクローズドボディに乗れる手軽さや、高騰する燃料費よりも、安い電気で運用できるなどの要因があるだろう。

 この手の超小型モビリティについては、日本でも、公道走行を可能とする認定制度が平成25年1月に創設されており、安全確保を最優先に考え、高速道路などは走行しないこと、交通の安全と円滑をはかるための措置を講じた場所で運行することなどを条件に、許可されている。つまり、このトポリーノも日本導入される可能性は無きにしもあらずだ。

 ただ、こうした超小型モビリティは、日本ではまだまだ普及に至っておらず、トヨタのC+pod(シーポッド)も2024年夏をもって生産終了してしまった。トポリーノのような遊び心満載のモデルが、日本でも身近な存在になって欲しいと強く願う。

シンプルだが遊び心が感じられるインテリア。ポップなカラーリングでモビリティライフを楽しく彩る

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 レトロなデザインと電動化という大きな魅力を備えたトポリーノ。日本にも導入されれば、環境意識の高まりや個性化志向といった社会的な背景を受け、一定の需要が見込めるに違いない。

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