ジープ初のBEVとして日本市場に導入されたアベンジャー。2023年1月に欧州市場でデビューしたジープアベンジャーは10万台以上の受注を達成し、VWのID.Buzzや日産アリアを抑えて2023年の欧州カーオブザイヤーを獲得している。そのジープアベンジャーに試乗する機会を得た。期待を膨らませつつ試乗してみた!

文:ベストカーWeb編集部/写真:小林岳夫

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■期待以上? がっかりした? 新型ジープアベンジャー

アベンジャーは全長4105×全幅1775×全高1595mmというジープ最小のサイズ。ヤリスクロスとほぼ同じサイズだ

 ジープといえばまず思い浮かぶのはラングラーだが、角ばったジープチェロキーも日本には馴じみが深い。そう、1984年~2001年まで生産されたXJ型だ。1990年代にはホンダディーラーで扱われ、300万円を切るチェロキースポーツも販売された。

1994年モデルは300万円を切る価格で販売され大ヒットしたチェロキースポーツ

 一般にもアメ車の四駆・ジープというよりは、あのカクカクした“チェロキー”のほうが認知度が高かったかもしれない。間違いなくXJ型チェロキーはジープブランドを広く日本に浸透させた功労者といっていいだろう。

 “グラチェロ”ことグランドチェロキーを含めたチェロキーシリーズを取材で乗ったことを思い出した。乗用車感覚で軽快なハンドリングとゆるい車体剛性感など、いい意味でのアメ車独特のラフな都会派四駆として当時憧れたものだ。

近くで見ても細部の作りはかつてのアメ車に見られた雑な作りを感じられなかった

 ジープアベンジャーの実車を前にして、思わず「チェロキーに似てる!」と呟いてしまった。もちろん、当時のチェロキーは4.3mあまりの全長だから小さくはないが、新型ジープアベンジャーのを見ると、当時のチェロキーを思い出すほどのスタイルとサイズ感だった。

 アベンジャーは全長4105×全幅1775×全高1595mmというジープ最小のサイズで、ヤリスクロスよりも全長が75mm短く、全幅が10mmワイド、全高が5mm高く、ホイールベースは2560mmと同じ。いかにアベンジャーが小さいかおわかりいただけるだろうか。

ワイドフェンダーやX型のテールランプ、ディフューザーなどが特徴

 エクステリアは実にジープらしいスタイルだ。ジープのトレードマーク、7スロットグリルが入るフロントマスクやサイドの盛り上がったフェンダー、ジェリー缶のデザインからインスパイアされた“X”のテールランプなど、最新のジープコマンダーやグランドチェロキーにも通じる洗練されたデザインだ。Bセグメントながら寸詰まり感がないのがいい。

 アベンジャーはステランティスのeCMP2というプラットフォームを兄弟車のフィアット600eと共用しているが、主要コンポーネントの60%がアベンジャー専用設計。あちらは3ドアのフィアット500を5ドア化したデザインだが、見た目もまんまフィアット500でスタリングのバランスも悪くない。

 アベンジャーの駆動方式はFF(本国には4xeもあり)、パワートレーンは156ps/27.5kgmを発生する電気モーターを備え、バッテリー容量は54kWh、一充電あたりの航続距離はWLTCモードで486km。

 ジープブランドのFF車として初めて、「Selec-Terrain(セレクテレイン)」と「ヒルディセントコントロール」を標準装備。セレクテレインシステムは、ノーマル/エコ/スポーツ/スノー/マッド/サンドと6つの走行モードから選択可能。

 オフロード走行における気になる最低地上高は200mmを確保し、ブレークオーバーアングルは20度、アプローチアングルは20度、デパーチャーアングルは32度としている。

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■コンパクトSUVのエンジン車、HVにはない静粛性の高さと加速フィールのよさ

力強い加速フィール、直進安定性の高さに驚く。なりは小さくても中身は凄かった!

 今回、オフロードでの試乗ができなかったのは残念だったが、都内の一般道と首都高を思う存分走ることができた。

 運転席に座り、インパネ回りを見渡すと左右に長いエアコン吹き出し口とダッシュボード下の長い収納スペース。その下にはユニクロのミニショルダーバックが入りそうな大型センターコンソールボックスがあり、収納スペースが豊富なので普段使いにもよさそうだ。

10.25インチのナビ、左右に長いエアコンの吹き出し口と収納スペースの多さが特徴。質感の高さもコンパクトカーとは思えない

 全長4mクラスのクルマは安い価格帯のため、あまり作りや質感にこだわらない場合が多いが、アベンジャーはその価格に合ったクオリティを持っており、デザインは若々しく、スイッチ1つとっても質感が高く精微な日本車のそれにも負けていない。

 10.25インチのナビも大きくて見やすい。Apple CarPlayおよびAndroid Autoに対応可能し、「ジープ・モバイル・アプリ」を使って、車両の位置を特定したり、リモートでドアのロックやアンロック、バッテリー残量の確認もできる。

 ダッシュボード下のシフトボタン(P-R-N-D/B)をDに入れて走り出す。少しアクセルを踏んだけですぐに反応し、力強い加速フィールが味わえる。EVならではの感覚だ。かといってトルクの落ち込みはなくスムーズ。

P-R-N-D/Bと並ぶシフトスイッチ

 全長4m以下のたいていのコンパクトカーは、路面の凹凸を拾うと左右に揺れ、そのショックをうまく吸収しきれず、“それなり”の乗り心地であることが多いが、このアベンジャーは一線を画している。

 さらにいうと、このクラスのエンジン車と最も違うのは、3気筒エンジンの騒がしさと(HVでも)、アクセルをいくら踏んでも思った通りに進まないCVTのもどかしさが、BEVのアベンジャーに感じられないことだ。静かだし、速い! ガソリン車ならば2.5~3L級の感覚だろうか。

 乗り心地もバタバタ感はなく、ボディをしっかりいなしている。バッテリーという重量物をフロアに積んでいるためか(車重は1570㎏)、それが逆に功を奏している印象。忖度してるだろと言われそうだが、1クラスいや2クラス上の、コンパクトSUVらしからぬ乗り心地と言っておきたい。

 操舵フィールもSUVというよりは乗用車(小さな高級車!)に近い感覚だから、都内一般道の渋滞や狭い脇道に入ってみても“ジャストフィット”。この表現が正しいかわからないが、ストップ&ゴー含め、とにかくどこへ行っても運転がラクなのだ。

 走りの上質さは、高速道路で乗っても大きく変わらなかった。車体がヒョコヒョコするような安っぽいピッチングはないし、コーナーでのロール感も少なかった。ハンドルは軽めだが、80~100km/hの高速域でも中立付近をしっかりと保ち続け、直進安定性も良好だった。スポーツモードにすると制御が俊敏になるが、ノーマルモードでも充分速く感じられた。 

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■長時間大人4人が座れる? 唯一不安要素の大きかったアベンジャーの室内空間

しっかりとした作りのフロントシート

 さすがにヤリスクロスサイズなので、シートに座る前から「サイズが小さいから窮屈だろうなあ」と半ばあきらめていたアベンジャーの室内空間。運転席に身長175cmの人が最適なポジションに座って、後席に座ってみたが頭上空間、膝前空間ともにこぶし1つが入った。

 ちなみに身長160cmの女性が座った場合、頭上空間、膝前空間ともに、こぶし2つ~2つ半ほどのスペースだった。広いとはいえないが窮屈でもない、「ギリギリだけど広さは充分じゃね」という感じだろうか。ラゲッジルームは355Lの容量で、普段の買い物でも充分使える広さだ。

身長158cmの女性が後席に座った状態。頭上空間、膝前空間ともにこぶし2つ~2つ半と余裕がある

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■価格は580万円、どんな人におススメ?

新型ジープアベンジャーローンチエディション

 価格は、標準モデルとなるAlttitude(アルティテュード)が580万円、ローンチエディションが595万円。国から補助金、クリーンエネルギー自動車導入促進補助金は65万円に加え、地方自治体からの補助金40万円(東京都の場合)を含め105万円を引くと、標準モデルは475万円、ローンチエディションは490万円となる。

 ボディカラーは、ジープブランド新色の「サン(イエローゴールド)」および人気の「グラナイト(ガンメタ」「ボルケーノ(ブラック)」「スノー(ホワイト)」の4色を設定。

 どんな人におススメか? やはりスポーツやアウトドアが好きなバイタリティのあるアクティブな女性や、国産車からの乗り換える30代の男性ユーザーといったところだろうか。子供が1~2人いるヤングファミリー層にもいいかもしれない。

 質感にがっかりすることはないし、運転しやすくてなんといっても速い。そしてジープらしいスタリングだから所有欲は満たされるはず。安い買い物ではないが、今あるBEVのなかで、おススメ車の筆頭に挙げたい。

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