今や世界各国で販売されている日本車。しかし、どこの市場でも連勝中という訳ではない。実はタイ市場で日本車の販売台数が落ち込んでいるというのだ。その理由はどんなところにあるのか? タイ市場でいま何が起こっているのだろうか?

文:西川 昇吾/写真:ベストカーWeb編集部

■中国系EVの台頭が理由!?

現在BEV界に頭角を現しているメーカー、BEV

 2023年のタイ市場での、日本メーカー大手9社のシェアは77.8%であった。この数字だけを見れば「市場の8割近い数字は立派じゃないか」と感じる人もいることだろう。しかし、前年よりも7.6ポイントも低下しているのだ。

 この背景には中国EVの台頭がある。中国系の自動車メーカーのシェアは約11%に及ぶと言われている。前年に比べても大きく数字を伸ばしたことになる。

 ここまで中国系がEVを中心にタイ市場でシェアを伸ばしたのは、補助金制度と関税がある。日本でもBEVは補助金が出るという点では同じだが、中国からのBEV輸入車には関税がかからないというのだ。

 また、ICEには多くの物品課税がかけられるというのも背景にあるようだ。タイ政府がBEVを推し進めたいというのが見て取れる。このような背景から中国系EVが躍進しているのだ。

■EVの生産拠点を誘致したいタイ政府

現在の中国の狙いは生産拠点の確保!?

 これにはタイ政府の政治的な狙いがあると思われる。彼らはEVの生産拠点を誘致したいのだ。中国系メーカーはタイでのBEV生産拠点の準備を進めている段階なのだ。

 ホンダやトヨタといった日本の自動車メーカーもタイでのBEV生産を進めてはいるが、少量生産という限定的な形となっている。

 これには日本メーカーがトヨタを中心にマルチパスウェイの姿勢をとっていて、どのようなパワーユニットでカーボンニュートラルへ進んでいこうか、タイ市場でも慎重な姿勢を見せているのだ。

 バンコクモーターショーで日本メーカーはBEVも展示していたが、ハイブリッド車なども同時に展示しており、ユーザーのニーズに合わせて選択肢を用意しているといった雰囲気となっていた。

 ただ、タイ政府は「日本はBEVへのシフトが遅れている」という姿勢を見せており、それぞれの思惑が交錯している市場となっている。

 カーボンニュートラルへの取り組みに関しては、日本はマルチパスウェイという考え方が主流になりつつあるが、販売する市場が変われば各政府の考えや施策も変わるので、難しいところだ。

 タイ市場では、日本車は国民車と言える存在。それだけに、これまで築いてきた強固な地盤をどれだけ継続していけるかも注目したいところだ。

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