2013年5月20日、プレミアムコンパクトの大本命、ゴルフVIIが発表され、6月25日から発売されることになった。ここではドイツおよびオーストリアでの先行試乗をプレイバック。日本仕様の詳細とともにショートインプレをお届けする!(本稿は「ベストカー」2013年6月26日号に掲載した記事の再録版となります)

文:編集部

■価格とラインアップ

エントリーモデルの「TSIトレンドライン」は249万円(※当時)!

 エントリーモデルの「TSIトレンドライン」が249万円、「TSIコンフォートライン」が269万円、そして上級グレードのハイラインでさえも299万円と、フォルクスワーゲングループジャパンは、かなり思い切った価格設定を打ち出してきた。

 なお、4月13日から先行受注が開始されている、装備充実のお買い得な発売記念限定車「ディア・エステ」はTSIコンフォートラインが750台限定で279万円、TSIハイラインが1250台限定で305万円。

 この2000台の生産が終了次第、今回発表のカタログモデルの生産に順次移行していくということでデリバリーは秋口前くらいになるという。

 驚くのは充実した装備にもかかわらず価格が安いこと。ゴルフVIには設定されていなかった先進の安全装備を全車標準装備としながらも価格はゴルフVIからほぼ据置としているからだ。

 全車標準となる安全装備を見ていくと、ドライバーのステアリング操作などをモニタリングして、疲労や眠気による急なステアリング操作を検知して警告を与える「ドライバー疲労検知システム」、up!でおなじみとなったミリ波レーダーによるシティエマージェンシーブレーキ(30km/h未満で作動する衝突被害軽減ブレーキ)をさらに進化させたプリクラッシュブレーキシステムの「フロントアシストプラス」、事故の危険をあらかじめ察知してシートベルトのテンションを自動的に巻き上げ、窓やサンルーフを閉じることでサイドおよびカーテンエアバッグの効果を高める「プロアクティブ・オキュパント・プロテクション」をこのクラスで初めて採用している。

 さらに万一衝突事故に遭遇した場合、2次衝突の危険を最小化するために自動的にブレーキを掛けて残存する慣性エネルギーを減少させる「マルチコリジョンブレーキシステム」などのほか、高感度レーダーによるアダプティブクルーズコントロール「ACC」(コンフォートライン、ハイラインに標準)や車載カメラによるレーンキープアシストシステム「レーンアシスト」(ハイラインに標準)なども用意され、まさにこれでもかというほどの充実ぶりだ。

トレンドライン(スダンダードシート)とコンフォートライン(コンフォートシート)はファブリック、ハイライン(スポーツシート)はアルカンターラ&ファブリック

■エンジン&ミッション

 TSIトレンドラインとTSIコンフォートラインにはこれまでのSOHCからDOHC化された1.2L直噴ターボ(105ps/17.8kgm)、いっぽうTSIハイラインにはシリンダーブロックがアルミ製となり、1250~4000rpm、8.7kgmの範囲内で第2、第3シリンダーを休止させるシリンダー可変機構「アクティブシリンダーマネジメント」が新たに採用された1.4L直噴ターボ(140ps/25.5kgm)を搭載。トランスミッションは全車7速DSGだ。

 気になる燃費は1.2Lがゴルフ史上最高となる燃費、JC80モード21.0km/L、1.4Lが19.9km/Lを達成し、全車エコカー減税100%だ。

■走りは想像以上!

 ドイツで試乗したのは1.4Lターボ+7速DSG仕様のTSIハイラインで「DCC」(アダプティブシャシーコントロール。14万7000円のオプション)装着車。タイヤはダンロップSP SPORTS MAXXの225/45R17。

 エンジンをかけて走り出すと低回転域から太いトルクを発生しつつもトップエンドまで気持ちよく回るエンジンフィールと静粛性の高さに感心してしまった。特にアウトバーンでの150km/hオーバーでも楽しい会話ができる静粛性にはビックリ。

「あらを探そう」という心境でドイツまできたのに逆にカウンターパンチを食らってしまった。

先代に比べ30L拡大され380から最大1270Lを確保。フロアの高さを変更できるバリアブルカーゴフロアを採用

 乗り心地についてもそう。これはDCCのコンフォートモードでの感想だが、ノーマルでも多少固めになる程度で大きな差はなく、低速域ではしなやかに動き、速度を増すにつれフラットになっていく抜群の乗り心地という印象は変わらない。

 スポーツモードでレーンチェンジを行なうと足が固くなり、ステア操作に対し車体がしっかり追従するが、快適性が損なわれていない点も秀逸。気筒休止はメーターの表示を見ないかぎり、いつ切り替わっているのか、わからなかった。

 100kgの軽量化により心配していたボディのガッチリ感もしっかりとあった。死角があるとすれば熟成と劇的に変わらなかったスタイリングだろうか。

全高は先代に比べ25mm低くなったがヘッドクリアランス、レッグスペースともに身長180cmの担当が乗っても余裕

■新型ゴルフVIIのポイント・価格

TSIトレンドライン=249万円 ※価格は当時
TSIコンフォートライン=269万円 ※価格は当時
TSIハイライン=299万円 ※価格は当時

・エントリーモデルのTSIトレンドライン(1.2Lターボ+7速DSG)が249万円 ※価格は当時
・量販グレードのTSIコンフォートライン(1.2Lターボ+7速DSG)が269万円 ※価格は当時
・上級グレードのTSIハイライン(気筒休止システム付きの1.4Lターボ+7速DSG)が299万円 ※価格は当時
・JC08モード燃費はTSIトレンドラインとTSIコンフォートラインが21.0km/L、TSIハイラインが19.9km/L。全車エコカー減税100%対象車
・プリクラッシュブレーキシステム「フロントアシストプラス」、「ドライバー疲労検知システム」、「マルチコリジョンブレーキシステム」、「プロアクティブ・オキュパント・プロテクション」などの安全装備を全車標準
・開発期間を短縮し削減したコストを開発費に還元し、品質の高さや先進装備をVW車に提供するという、MQBプラットフォームを採用
・先代に比べ合計100kgの軽量化
・高張力鋼板の使用率を66%から88%に、一般的な鋼板の最大6倍もの強度を誇る熱間成形パーツを割合を6%から28%にまで拡大
・ボディサイズは先代に比べ全長は55mm長く、全幅が10mmワイド、全高が26mm低い全長4265×全幅1800×全高1460mm

■エンジンは1.2Lターボと気筒休止システム付き1.4Lターボ

エンジンは1.2Lターボと気筒休止システム付き1.4Lターボをラインナップ

・TSIトレンドライン BLUEMOTION TECHNOLOGY……1.2L直4ターボ+7速DSG、105ps/17.8kgm、JC08モード燃費21.0km/L、エコカー減税=100%減税

・TSIコンフォートライン BLUEMOTION TECHNOLOGY……1.2L直4ターボ+7速DSG、105ps/17.8kgm、JC08モード燃費21.0km/L、エコカー減税=100%減税

・TSIハイライン BLUEMOTION TECHNOLOGY……1.4L直4ターボ(気筒休止システム)+7速DSG、140ps/25.5kgm、JC08モード燃費19.9km/L、エコカー減税=100%減税

■安全装備以外でのグレード違いによる主な装備内容

・TSIトレンドラインBLUEMOTION TECHNOLOGY(249万円)……新世代ラジオオーディオシステム Composition Media、Start/Stopシステム、ブレーキエネルギー回生システム、電子制御式ディファレンシャルロックXDS、エレクトロニックパーキングブレーキ、レザー3本スポークステアリング、ファブリックシート(スタンダードシート)、195/65R15タイヤ

・TSIコンフォートラインBLUEMOTION TECHNOLOGY(269万円)……フロントフォグランプ、ファブリックシート(コンフォートシート)、205/55R16タイヤ、パドルシフト、2ゾーンフルオートエアコン、リアビューカメラ、マルチファンクションステアリングなどが加えられ快適装備が充実

・TSIハイラインBLUEMOTION TECHNOLOGY(299万円)……TSIコンフォートラインの装備に加え、「エコ」、「スポーツ」、「ノーマル」、「インディビデュアル」の4つの走行モードが切り替えられるドライビングプロファイル機能、アルカンターラ&ファブリックシート(スポーツシート)、ダークテールランプ、デュアルエキゾーストなどスポーティかつ豪華な装備

*     *     *

【こぼれ話】ゴルフVIIのエクステリアデザイナーは33歳のイケメン、フィリップ・ロョマース氏

 今回の取材でディナーをご一緒したゴルフVIIのエクステリアデザイナーのフィリップ氏はゴルフVIIのデザインについて、「ゴルフには歴史と伝統があり、変えてはいけない、でも変えなきゃいけない。それが非常に難しかった。

 MQBプラットフォームにより、エンジン搭載位置を変更したことで、ノーズ部分を長くすることができ、よりプレミアムなプロポーションにすることができました。シャープなサイドのエッジはゴルフIから採り入れました」。

 フィリップ氏はゴルフIとIVが好きで先日ゴルフIカブリオレを買ったばかりだという。こんなゴルフ好きのデザイナーにデザインされていると思うと嬉しいですね。

フィリップ氏が即興で描いてくれたゴルフVIIのスケッチ

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。