三重県四日市市出身のレスリング53キロ級 藤波朱理(ふじなみ・あかり)選手(20)。去年の世界選手権で、見事パリオリンピックの切符を手に入れましたが、ことし3月に全治3か月の大けがを負ってしまいました。

常に前向きな彼女が味わった大きな挫折をどのように乗り越えたのか、大石邦彦アンカーマンが取材しました。

(藤波朱理選手)
「パリオリンピックで金メダルが欲しいだけです」
こう話すのは、三重県四日市市出身のレスリング53キロ級藤波朱理選手。ぶれない目標を持ち続け、常に進化し続けています。

中学2年生から公式戦負けなしで、現在133連勝中。去年の世界選手権ではパリオリンピック代表内定。ことし2月には、より多くの練習経験を積むために、在学中の日本体育大学から愛知県大府市の至学館大学に出稽古へ。

(藤波選手)
「オリンピックまではあと半年というところで、たくさん失敗しながら、いいパフォーマンスがオリンピックでできるように自分のレスリングを成長させたい」

強豪選手との練習の中で、見えた課題を一つずつ克服し、パリオリンピックへ視界良好の中だった藤波選手。しかしパリオリンピックまで約4か月の3月14日、突如アクシデントに襲われます。

全治3か月の大けが…オリンピックのために“手術”を選択

(藤波選手)
「3月の中旬くらいのスパーリング中に、自分の不注意で手をついてしまい、けがをしてしまった」

全治3か月の左ひじ脱臼。手術をせずに治す選択肢もある中で、確実に治すために手術という大きな決断をしました。

(藤波選手)
「もちろん不安もあったんですけれど、全てオリンピックのために、オリンピックを一番に思って選んだ決断だったので、それがどうであれ、それを『絶対に正解にしていく』っていう思いで今もやっています」

けがから5日後、手術は無事成功。その後は、リハビリに励み、担当トレーナーによると通常より3週間ほど早いスピードでの驚異の回復を見せます。そして、5月11日。

ふたたび至学館大学のマットへ

(大石アンカーマン)
「けがを克服した藤波朱理選手なんですが、きょうは至学館大学で練習しています。まだ体力トレーニングのようですが、動きはいいですね」

至学館大学のマットに戻ってきた藤波選手。パリオリンピックまで約2か月。オリンピック前にけがという挫折を味わった藤波選手に大石アンカーマンが直撃しました。

(大石アンカーマン)
「(左手)結構しっかり握れますね」

(藤波選手)
「はい。全然」

(大石アンカーマン)
「左ひじの状況はどうですか?」

(藤波選手)
「順調に回復していて、レスリングにも復帰できて、かなり予定よりも早い日数で回復しています」

現在の回復具合は8割ほどと順調ですが、けが直後はパニックになったといいます。

(藤波選手)
「本当にオリンピックがもう一番すぐに頭に浮かんで、やばいんじゃないかっていう、ひじも過去最大の痛みでしたし、心も体もすごくキツかったなと思います」

ここまで早く復帰できたのには、ある友人の支えがありました。

(藤波選手)
「入院してすぐに、友達が本を持ってきてくれて、それを毎日を読んでいたら、すごく支えになった」

友から贈られた「松岡修造さんの本」

その本というのが、オリンピックに3回出場した元テニスプレーヤー松岡修造さんの「挫折を愛する」(著:松岡修造/角川新書)。この本をプレゼントしたのが、藤波選手の日本体育大学の友人、矢野まいこさん(20)。

なぜこの本をプレゼントしたのか、本人に聞いてみると。

(藤波選手の友人 矢野まいこさん)
「私から伝えられることもあるけど、松岡修造さんの言葉を借りた方がよかったり、絶対この人が書いている本には、競技者として同じ立場の言葉もあるし、いろいろな見解が見られる本だと思った」

(藤波選手)
「挫折をしたからこそ見える景色があるというのはすごく感じて、今、この挫折を味わってる、それから逃げるんじゃなくて、もう真正面から受け止めて、それをしっかり乗り越えて、自分も最高な景色を見たいなっていう」

オリンピック経験者の言葉から、この挫折を乗り越えるヒントをもらい、さらに成長した藤波選手。そしてこの本には、あるサプライズが。

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