パリ五輪へ向けた熾烈な代表争いが幕を開けた陸上トラック&フィールド。明日29日にホットスタッフフィールド広島で開催される「第55回織田幹雄記念陸上」は、高反発のトラックと山から吹き込む風が好記録を後押しする国内有数の“高速トラック”として知られている。

ロンドン五輪から3大会連続で五輪出場を果たしている山縣亮太(31・セイコー)は、日本スプリントの歴史を刻んできた大会に、日本記録保持者として今回誰よりも強い想いで臨む。

2013年、山縣(当時慶応大)と桐生祥秀(当時洛南高)が繰り広げた日本人初の9秒台に迫る熱戦は、今でも陸上ファンの間では語り草となっている。

山縣は2012年ロンドン五輪では、男子100mと4×100mRに出場。100mでは日本人選手の五輪史上最高となる10秒07をマーク。2016年リオ五輪では、100m準決勝でその記録をさらに更新する10秒05。リレーではアメリカに先着する銀メダルの快挙(アメリカはフィニッシュ後失格となった)。リオデジャネイロ大会を象徴するシーンとして多くの感動を呼んだ。

そして、東京五輪開催の2021年に自身初の9秒台となる「9秒95」の日本新記録を樹立。9秒台が4人ひしめく熾烈な争いを制して日本代表の座を勝ち取った。しかし、五輪本番では右膝の痛みなどの影響で本来の力を出し切ることはできず、100mでは予選敗退。金メダルを期待された4×100mRでは多田修平(1走)と山縣(2走)の間でバトンが渡らず棄権となった。

それから、山縣にとって辛抱に辛抱を重ねる3年間となった。右膝の手術、リハビリ、そしてようやく去年辿り着いた581日ぶりのレース復帰。一歩ずつ着実にタイムを縮め、ロンドン五輪出場から数えると4度目の五輪シーズンを地元・広島で迎える。

「なかなか地元に帰る機会がないですが、この大会があるおかげで良い雰囲気の中、レースに臨めることを毎年楽しみにしています。毎年ベストを尽くすことを目標にしていますが、僕にとって4大会連続の五輪出場がかかっているので、今年は特に気持ちが入っている。明日は中盤でまた一つスピードを上げるような伸びのあるレースをしたい」

苦節を経て、日本最速のスプリンターが勝負の五輪シーズンを駆ける。

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