前人未到の「50-50」を到達したドジャース・大谷翔平選手。そもそも、ホームランと盗塁の数が両方50を超えることはどれくらいすごいことなのか?また、盗塁数がキャリアハイより倍増したワケは?偉業に高まる「MVP」への期待の声。そこに立ちはだかる“大きな壁”とは?
前人未到の「50-50」そのすごさとは?
ホームランと盗塁の数が両方とも50を超えるのは何がすごいのでしょうか。
一般的にホームランをたくさん打つ選手はボールを遠くに飛ばす「パワー」が持ち味で大柄な選手が多いため、盗塁に必要な「スピード」を兼ね備えている選手は少ないんです。逆に盗塁が得意な選手は「スピード」に優れている反面、「パワー」では劣る選手が多いんです。
実際に今シーズンの「ホームラン数」ベスト3に入る、両リーグであわせた6人の盗塁数を見てみますと、大谷選手以外ではジャッジ選手の10が最高で、あとは皆一桁です。
そして同様に「盗塁数」ベスト3の選手の「ホームラン数」はというと、半数が一桁台の中、36本。24本。と高記録も目立ちます。しかし、大谷選手の記録と比べるとその差は歴然です。
盗塁数倍増...その背景とは?
大谷選手は、これまで50本近いホームランを打ったことはありましたが、盗塁については、最高で2021年の26でした。今シーズンは倍増しているんです。いったい何があったのでしょうか。
実はメジャーの全選手の盗塁総数も2年前と比べ4割近くも増加しているんです。その背景について、日米通算224盗塁を誇る井口資仁さんが指摘するのが、2023年から導入された新ルールです。
試合時間の短縮を目的に導入された「ピッチクロック」ですが、ピッチャーは18秒以内にバッターへ投球しなければいけません。そして、ランナーへのけん制も2回に制限されたため、ランナーは盗塁のスタートが切りやすくなったのです。さらに、このベースですが、接触プレーによるケガを防ぐため、8センチ大きくしたことも、ランナーがタッチをかいくぐれるチャンスを増やしました。
大谷選手に関しては、こうした追い風に加え、今シーズンは打者に専念したため走力の強化にも時間を割くことができました。その結果、「盗塁のスタートを切ってからトップスピードに達するのが早くなった」と井口さんは分析しています。
史上6人目の「40-40」
大谷選手が切り開いた「50-50」という新境地。これまでは、「40-40」ですら達成したのはメジャー史上5人だけでした。ホームランと盗塁がそろって到達した数字を見てみると、「40」と「41」が2人ずつ。これまでの最高は、アレックス・ロドリゲス選手の「42」で、大谷選手は、それを一気に「52」まで伸ばしたわけです。
高まる「MVPの声」に大きな壁?
この記録、実は、大谷選手にとってのもう一つの「史上初」にもつながる可能性が高まっているんです。それは「指名打者」として初のMVP。これには大きな壁があります。
MVPは打つだけでなく、守備での貢献も重要なため、今シーズンの大谷選手のように、守備に就かない「指名打者」だけで受賞した例はありません。それが、「50-50」という偉業の達成によって史上初めて、「指名打者」でのMVPという新たな歴史の扉を開く可能性も高まっているのです。
(「サンデーモーニング」2024年9月22日放送より)
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