東京オリンピックの日本代表で、今年5月に現役を引退した元ハンドボール選手の池原綾香さん。強豪国のデンマークでプレーし、世界の強豪が集うヨーロッパチャンピオンズリーグに4度出場するなど、女性のハンドボーラーが海外挑戦をする道を切り開いてきた池原さんが今、子どもたちに伝えたいこととはー

「やりきった」幸せなプロ生活に幕

▽ハンドボール女子 元日本代表 池原綾香さん(33)
「本当に体がボロボロの状態だったですし、その中でも走り切って、シュートも決めて、やりきったっていう感じだったので」

今年5月、デンマークリーグ・決勝で、現役生活最後の試合を迎えていた池原綾香。

池原が7年間戦ったデンマークリーグ

過去3度のオリンピック優勝を誇るデンマークのリーグで戦ってきた7年間。ここ数年はけがも多く、このときも左足首を剥離骨折していましたが後半、出番が回ってきます。

「プレーチャンスがあったときには、絶対、体がぶっ壊れようと1点を決めるつもりでいた」

現役最後の試合で得点


最後のシーズンは、デンマークリーグ準優勝。デンマークの日本人コミュニティや所属チーム「ニューコビン」の仲間に囲まれ、最高の引退試合となりました。

「今までありがとうとか、お疲れ様と言ってくれて本当に引退の瞬間を実感した。本当にいろんな人に支えられて、デンマークも7年間、ここまで長く自分もやると思ってなかった」

ーーハンドボール生活、選手生活はどうだった?

「幸せでした、いろいろありました、波乱万丈でしたけど。すごく自分としても誇りに思いますし、すごく幸せなハンドボール生活でした」

リーグ準優勝で選手としての充実したキャリアを終えた


今月14日、池原の姿は那覇市の中学校にありました。今はデンマークと日本を行き来し、沖縄滞在中は各地でハンドボールの指導にあたります。その指導スタイルには、「デンマーク流」が垣間見られました。

ーー「声を出して」と何度も何度も…

▽ハンドボール女子 元日本代表 池原綾香さん(33)
「私が見ているよ、という声を出してほしい。しゃべってなかったら、本当に守れないからディフェンスは。声が一番大事」

プレー中の「声」の大切さを指導する池原さん

「どの競技もそうだと思うんですけど、声は大事、本当に。ディフェンスするときもオフェンスするときも、コミュニケーションが取れないと成り立たないので、試合もできないですし」

「褒めちぎる」のがデンマーク流

選手同士のコミュニケーションの大切さはもちろん、指導者と選手のコミュニケーションを取り方には、デンマークで衝撃を受けました。

ーー「コミュニケーション」の部分はだいぶ違う?

「違いますね、もうびっくりするぐらい。選手と監督がすごく対等な関係なので」「デンマークに行って感じたことは、監督が選手をほめちぎると言ったらあれなんですけど、怒ることをしないんですね。なのでハンドボールの楽しさや面白さを引き立たせるためにも、できたことに対して評価をする、今の良かったよ、今の良いシュートだったよ、とか」

「そうナイス、ナイスナイスナイスナイス…」

選手を褒め、笑顔に


「全身で上から投げる、そうそうそう…」

ハンドボールの楽しさを感じ、競技を長く続けてほしい。池原は子どもたちに、こんな声かけをしていました。


▽ハンドボール女子 元日本代表 池原綾香さん(33)
「私の話を聞くときだけはリラックスしていいよ。あぐらかいてもいいし、自分が話を聞きやすい体勢で聞いてって話をするんですよね。そうすると、子どもたちは自然と緊張がほぐれて質問もしやすくなるので」

選手をリラックスさせ、指導者が動く


▽選手 「はさむときのコツみたいな…」
池原 「ポストの守り方?」
▽選手 「センターが真ん中にいてどっちが出ていいかわからない」

子どもたちから湧き出る質問に丁寧に答えます。

▽選手
「教えるのがめっちゃ上手なので、聞いたら聞くだけうまくなれるので、もっと聞きたい」
「教えてもらったら良いコースに打てるようになった」

目標は池原選手


「目標は池原選手みたいに世界で活躍できるようなハンドボールプレーヤーになりたいです」

身長158センチながら、ヨーロッパの大型選手と戦い続けた池原には、子どもたちに伝えたいことがありました。

目標を見つけ 意識を変える

「身長が低くても世界で戦えることを、証明するために、ジュニアだったり日本代表だったりを意識してやってきたのね」

一回り体格の違う選手とも渡り合った現役時代



「今自分が身長小さいからってあきらめるんじゃなくて、うまくなりたい、こういう風な選手になりたい、という人を見つけて、意識するだけで全然練習に対する姿勢とかプレーも全部変わってくるから」

小柄な体で世界に挑み続けた池原は、これからも伝え続けます。諦めないこと、挑戦し続けることの大切さを。

「少しずつでもトライして、できたらそれが、喜びに変わる。その喜びが次のチャレンジにつながる。いつでもチャレンジャー精神でいろんなことにトライしてほしい」

<記者MEMO>
今回ハンドボール教室を開いた那覇市立松島中学校の顧問は「普段は子どもたちが
こんなに質問をすることはない」と仰っていました。練習後に自主練をする生徒もいて、今まで見たことがない景色だと驚いていたのが印象的でした。

良い刺激になったのでしょう。池原さんはこれからもデンマークと日本の良さを
融合させて、ハンドボールの楽しさを伝えていきたいと意気込んでいます。(取材 下地麗子)

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