幅広い年代の人たちが陸上競技で同世代のライバルたちと記録を競う大会が2024年8月、岩手県北上市で開催された。
96歳で短距離走に挑む女性や全国トップクラスのパラアスリートも参加し、爽やかな汗を流した。

8月、北上市で開催された岩手マスターズ陸上競技選手権。
マスターズ陸上は18歳以上であればスポーツの経験に関係なく出場できる競技で、5歳ごとに年代を区切り競い合う。
この日、競技に臨んだのは20代から90代までのアスリートたちで、東北を中心に219人がエントリーした。
競技連盟の八重樫輝男会長は、マスターズ陸上の魅力は多くの人が挑戦できるところだと話す。

岩手マスターズ陸上競技連盟 八重樫輝男会長
「『まったく陸上をやっていなかったけどやってみたい』と始める人もいる。年齢を超えて挑戦できることがいいのではないか」

走ることが好きで4年前から参加している人がいる。
この大会で最高齢となる一関市の早川武子さんは96歳。
95歳から99歳までがエントリーできるW95クラスの短距離ランナーだ。

早川さんは、この日、前回大会の最優秀選手として表彰された。
2023年、100m走で打ち立てたタイム30秒77が広島県の女性に更新されるまで、W95クラスの日本新記録だったからだ。
早川さんがエントリーしたのは2023年と同じ100m走で、年下の選手たちに囲まれ、談笑する早川さんに意気込みを聞いた。

今大会最高齢 早川武子さん(96)
「走り通せるかなと思って」
「(Q:自信ありですか)ないね~」

年下の選手
「そう言いながら走り切るんですよ」

タイムレース方式のため、年代が違う選手たちと一緒に走るが、95歳以上はもちろん早川さんだけだ。
やや弱気な発言はあったものの堂々とスタート位置へ。
早川さんは走りながら「だめだ~」と言いつつも、96歳とは思えない軽快な走りでタイムは38秒74。
日本記録にあと10秒ほど届かなかったが走る前とは一転、早川さんは充実した表情でレースを振り返った。

今大会最高齢 早川武子さん(96)
「100mなんだろうけど、なんだか100m以上になったような」
「(Q:走るのは好きですか)すき」

そして次の大会への意気込みを冗談交じりに語った。

今大会最高齢 早川武子さん(96)
「(Q:2025年も出場しますか)生きていたらな」

一方、50歳から54歳までのM50クラスにエントリーした奥州市の江川勤さん(52)は20代のころ、大腿骨の一部が壊死する難病を両足に患い それ以来、投てきのパラアスリートとして活躍してきた。
江川さんはパラ陸上のクラス分けのうち、足を使う運動に中等度の障害がある人のF43クラスとF44クラスでは、砲丸投げと円盤投げで合わせて3つの日本記録を持っている。
9月28日からは定められた標準記録を突破した選手だけが参加できるジャパンパラ陸上に出場予定の全国トップクラスのパラアスリートだ。

パラアスリート 江川勤さん
「ジャパンパラ陸上までの間で力試しという形」
「(競技を)一緒にやっている小野寺萌恵さんがパリパラ五輪出場を決めたので、負けていられないし頑張りたい」

健常者の選手と同じ大会に出場し、優勝した経験が何度もあるという鉄人の江川さん。
砲丸投げでは7m68と今シーズン自己ベストを、円盤投げは20m31とこちらも今シーズンの自己ベストとほぼ同じ成績をマークした。
さらには約20年ぶりというやり投げにも果敢に挑戦し、間近に迫るジャパンパラ陸上に向け調整を進めていた。

パラアスリート 江川勤さん
「水分がちょっと足りなかったので熱中症気味になった。目標としていた記録は出まなかったが、次につながるような結果だった」

意欲さえあれば誰でも生涯続けることができるマスターズ陸上。
何歳になっても、障害がある人もそうでない人もフィールドに立ち、挑戦し続けるその姿はいつまでも衰えることなく輝いている。

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。