この夏、甲子園だけでなく神宮球場でも高校球児たちによる熱い戦いがありました。それは、定時制・通信制の高校が出場する軟式野球の全国大会。さまざまな事情を抱えた球児たちのひと夏に密着しました。
「入った高校でなじめなかった」「アルバイトと野球を両立」さまざまな事情を抱えた部員たち
甲子園球場から車で10分のところにある定時制の兵庫県立西宮香風高校。軟式野球部のメンバーは20人。日中に仕事がある生徒も多いので練習は1時間以内、参加する人数もバラバラで、ひとりでいろんなポジションを担当します。
彼らはさまざまな理由でこの学校に在籍しています。1年生の三浦悠太郎くん(18)は、中学でも野球をやっていましたが、入った高校になじめずここにやってきました。
(1年 三浦悠太郎くん)「ちょっとおもんなかったなという感じですね。今が1番あっているんじゃないかなと」
2年生の寺井宗一郎くん(16)、アルバイトと野球ができるのでこの学校を選びました。
(2年 寺井宗一郎くん)「自分がバイトしながら家族の助けになりたいなと思って」
チームをまとめ上げるのは、3年生の重松虎汰郎くん(18)。
(3年・主将 重松虎汰郎くん)「みんなかみ合っているっていうか。みんないいぐらいにできていると思います」
(井上宗典監督 43)「(Qみんなどんな生徒?)個性あふれすぎるぐらいの、まぁでもかわいい子らですね。中学校でうまくいかなかった子とか、いろんなバックグラウンドを持った子がいますけど、お互いの個性や空気感を大事にしてくれているから野球部として部活動として成立している」
授業は3部制 部員の大半はアルバイトも
西宮香風高校には、15歳から48歳まで約740人が通っています。授業は午前から夜間までの3部制で、それぞれの事情に合わせて時間帯が選べます。
ほとんどの野球部員はアルバイトをしています。寺井くんは週4日、地元のお好み焼き店で働きます。
(寺井宗一郎くん)「お好み焼きは大好きですね」
自分で働いたお金で、グローブも新調しました。
(寺井宗一郎くん)「5月ぐらいの大会が始まるちょっと前に買った。すごくかっこいい。めちゃくちゃ気に入っています」
2年ぶりの全国大会へ「まずは初戦突破。ホームラン放り込もうかな」
この夏、西宮香風高校の野球部にとって大きな舞台があります。兵庫県の地区予選を勝ち抜いて、東京の神宮球場などで行われる定時制と通信制高校の全国大会に2年ぶりに出場することになったのです。
本番が迫ったこの日の練習には、アルバイトの時間を調整するなどして、ほとんどの部員が集まりました。普段は人数がそろわずなかなかできない連携プレーを何度も確認。大会に向けてみんなの息を合わせます。
(重松虎汰郎くん)「最初にからだを伸ばすから違う方向に行かれへんちゃうんけ」
初戦を突破すれば次は神宮球場。誰もが一度はプレーしてみたいあこがれの場所です。
(三浦悠太郎くん)「まさかいけると思っていなかったので、全国大会でも優勝とれたらなと思っています」
(寺井宗一郎くん)「神宮球場でできるのは甲子園よりすごいかなと思っているので絶対に勝ちたいです」
(重松虎汰郎くん)「初戦突破です、まずは。(Qみんな神宮でプレーしたい?)そうですね。ホームラン放り込もうかな」
12年ぶりの初戦突破!そしてあこがれの場所、神宮球場へ
そして8月14日に迎えた全国大会の初戦。試合は序盤から西宮香風の打線が爆発、主導権を握ります。特に輝いたのが三浦くん。4安打5打点と大活躍です。
スタンドには三浦くんの家族の姿が。
(三浦くん父 隆之さん)「学校行けないときがいっぱいあったので、ちょっと信じられないですね。中学校も野球やっていたんですけど、途中でやれなくなった。野球で西宮香風に行きたいって。勉強もそれでやれるようになったので、親としては最高ですね」
守っては、息ぴったりのプレーでピンチを凌ぎます。20対2(5回コールド)の快勝で12年ぶりの初戦突破となりました。勝利の立役者の三浦くん、うれしそうに家族のもとに向かいます。
(三浦くんの家族)「ナイスバッティング!さすが!かっこいい!」
(三浦悠太郎くん)「恥ずかしいですけどうれしいですね」
2戦目は神宮球場。ついにあこがれの場所にやってきました。試合は4点を追う6回、満塁のチャンスでこの日、ヒットを打っている寺井くん。しかし、相手ピッチャーを打ち崩せません。
そのまま最終回を迎え、2アウト1塁。もうあとがない場面で打席にはキャプテン・重松くん。
なんとポール直撃の2ランホームラン。
最後まで粘りを見せます。しかし、反撃はここまで。西宮香風の熱い夏は幕を閉じました。
(重松虎汰郎くん)「このメンバーで全国行けたのも、みんなのおかげだし、こんないい球場で試合できたし、みんな悔しい思いしたけど、何かしら学んだことはあると思うので、来年は2回戦・3回戦で終わるんじゃなくて、それより上を目指して頑張ってほしいなと思います」
(井上宗典監督)「感動しました。お疲れさん。やり残した人もおると思うし、やり切った人もいると思うけど、今後の学校生活や人生につなげてほしいな思います。じゃあ、みんなで胸張ってね、西宮に帰りましょう。お疲れさまでした」
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