琉球トルネードが甲子園に帰ってきた――。沖縄県勢初の春夏連覇、史上6校目の偉業を達成したあの夏。マウンドに君臨した左腕は今、母校の興南(沖縄)に戻り、コーチを務めている。14年の時を経て、甲子園の土を踏み、試合前にノックを打った。「自分が投げるときよりも緊張しました」

 8月8日(木)に迎えた興南の初戦。相手は春夏通算9度の優勝を誇る強豪・大阪桐蔭。島袋洋奨コーチは三塁側アルプススタンドから選手たちを見守った。

 この日マウンドにあがったのは、島袋コーチに憧れて興南の門を叩いたエース・田崎颯士投手(3年)。島袋コーチは田崎投手の将来性に期待を寄せる。

 「彼は彼の感覚を持っているので。そこを尊重しながら自分が感じることを伝えて、それをすり合わせながら」とコミュニケーションを大切に育ててきた。去年まで球速が140キロ前後だった田崎投手は、今夏の沖縄大会決勝で最速149キロをマーク。さらに、36イニングを投げて自責点0と抜群の安定感を誇る大黒柱として、島袋コーチの期待に応えてきた。

 そんな田崎投手は1回2回を三者凡退と最高の立ち上がりを見せる。しかし、大阪大会チーム打率.384を誇る強力打線につかまり、7回途中5失点。興南は6年ぶりの甲子園白星とはならなかった。

 試合後、田崎投手は島袋コーチへの想いを語った。

 「(甲子園という舞台を経験して)改めて洋奨さんのすごさを実感しました。3年間一緒にやってきて、メンタル面含めて、いろんなことを教わりました。とてもいい関わりを持てたコーチ。ありがとうございましたと感謝の想いを伝えたいです」

 島袋コーチは、次世代の育成に強い想いを持つ。

 「これからも野球の指導者としてはもちろん、次は『教員』という夢を持っていますので、野球部以外も含めて指導していきたい」

 14年前、甲子園を沸かせたヒーローは、“人生のスコアボード”にこれからも夢を刻んでいく。

 (毎日放送スポーツ局 上原桐子)


♢島袋洋奨(しまぶくろ・ようすけ)
1992年10月24日生  沖縄県宜野湾市出身
興南高~中央大~ソフトバンク(2014年ドラフト5位)
2020年4月から母校に戻り事務職員として勤務
2021年2月には学生野球資格を回復し、野球部コーチに就任

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