52年ぶりとなるメダル獲得をめざしたバレーボール男子日本代表。負けたら終わりの準々決勝の相手は世界ランキング2位のイタリア。あと一歩のところまで追い詰めた激闘の様子を元バレーボール日本代表の迫田さおりさんに解説してもらいます。

■得点後に円陣 日本の強さの秘訣は“石川選手のリーダーシップ”

良原安美キャスター:
イタリア戦で第1セット、第2セットと連取していた日本。迫田さんは「前半のポイントは絶対的エース・石川選手の覚醒にあった」と話します。

というのも予選ラウンドでの石川選手は、ドイツ戦は22得点、アルゼンチン戦は11得点。アメリカ戦は5得点で、第3セットからベンチに下がるなど、少し調子が振るっていませんでした。

ところがイタリア戦では32得点を挙げ、両チーム最多となりました。なかでも迫田さんが注目したのは第2セットです。13対17、日本が4点ビハインドの場面で、イタリアの勢いを阻止したのが石川選手の4連続ポイントでした。

イタリアが3点リードの嫌な展開を石川選手の一撃が断ち切り、得点後、すぐさまメンバーを集めて円陣を組んでいました。迫田さん、これはいかがでしたか?

元バレーボール女子 日本代表 迫田さおりさん:
追う展開で嫌だなというときに石川選手が決めて、みんなを集めるんですよね。チームのみんなも「ここから行かないといけないな」というのはわかっていたと思いますが、でもあえて呼んで、言葉でみんなに伝える。それをした石川選手のリーダーシップが、やはり強さの秘訣だなと思います。

ホラン千秋キャスター:
ああいうときに気持ちを一つにさせるということは、試合で大事な局面で使われる、ある意味テクニックみたいなものでもあるのでしょうか?

元バレーボール女子 日本代表 迫田さおりさん:
そうですね。それができる選手、できない選手といるなかで、今は石川選手のようにできる選手がいることが、日本の強さだなと思います。

井上貴博キャスター:
バレーボールって難しいなと思うのは、展開がものすごく速いので、円陣を組んで集まるとはいっても、本当に一瞬じゃないですか。ああいうときは、どういう言葉になるのでしょうか?

元バレーボール女子 日本代表 迫田さおりさん:
「今、我慢だよ」とか「攻めるよ」とか…。

みんなわかっていると思うので、それをあえて「みんなわかっている」だけで終わらないで、ちゃんと言葉にする。目を見て「みんな同じだよ」とするのが大事だなと思います。そこから連続ポイントも生まれたので、大事な場面だったのではないかと思います。

■山本選手、関田選手…エースにつなぐ“献身プレー”にも注目

良原キャスター:
さらに、エースにつなぐ献身プレーもありました。リベロ・山本選手の“神技レシーブ”や、セッター・関田選手の“縦横無尽”な動きです。

まずは日本の守護神・山本選手のスーパープレーについて、迫田さんいかがでしょうか?

元バレーボール女子 日本代表 迫田さおりさん:
サーブレシーブも、正面ではなく少し外れていても、しっかりセッターに返る。第2セットでは「あそこ取るんだ!?」という場面もありました。すごく守備範囲が広いので、アタッカーが輝けるのも、山本選手がいるおかげだなと思います。

ホランキャスター:
安心していられるということですね。

元バレーボール女子 日本代表 迫田さおりさん:
ブロックに少し引っかかったとしても、山本選手がいるから思い切り打ってもフォローしてもらえる。そういう関係性も、山本選手だからこそというのはあります。

良原キャスター:
続いてセッター・関田選手は、運動量がとにかくすごいです。

元バレーボール女子 日本代表 迫田さおりさん:
トス上げて、走っていって、ブロック跳んで、またトスという…。ラリーでセッターは必ずボールを触るので運動量は多くなりますが、そのなかで正確なトスを上げられるのも関田選手だからこそです。

ホランキャスター:
本当にあっち行ったり、こっち行ったり…同時に2か所に存在しているんじゃないか、というくらいのスピード感と運動量ですよね。

井上キャスター:
イタリア戦を見ていても、世界で最も面白いバレーボールをしてくれるというか、観客を魅了するバレーボールをするのは日本なんだなと改めて思いました。

元バレーボール女子 日本代表 迫田さおりさん:
本当にそうですね。やはり、関田選手の組み立て方で見方は変わりますので、面白いバレーを展開してもらったなと思います。

■「勝敗はセット終盤をどれだけ冷静にプレーできるかで決まる」

ホランキャスター:
でもイタリアは、本当に意地を見せたなという感じでした。

良原キャスター:
第3セット、第5セットとイタリアに取られてしまいましたが、先にマッチポイントを迎えたのは日本でした。遠かった「あと1点」、どうしてなのか?

迫田さんは「勝敗はセット終盤をどれだけ冷静にプレーできるかで決まる。イタリアチームは試合の勝ち方を熟知していた」とコメントしていますが…。

元バレーボール女子 日本代表 迫田さおりさん:
やはりイタリアは追う展開だったにもかかわらず、ここぞというところでスーパープレーが出ました。サーブにしても、ブロックにしても、セットの終盤の戦い方というものを知っていたなと思います。

ホランキャスター:
勝ちが近づくと、どうしても力が入ってしまったり、いつもの調子が出なかったりということはあるのでしょうか?

元バレーボール女子 日本代表 迫田さおりさん:
ありますが、どの大会でも終盤が大事というのはみんなで言っていたと思いますが、そこをさらにイタリアが上回ってきてしまったのかなと。

井上キャスター:
イタリアが上回ったものは、あえていうと経験なのでしょうか?

元バレーボール女子 日本代表 迫田さおりさん:
経験もあると思います。やはりベテランの選手もいるというのもあったかもしれません。自分たちの強みを最後に発揮してきましたね。

井上キャスター:
次、4年後のロス五輪でまた応援したい気持ちになりました。

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<プロフィール>
迫田さおりさん
元バレーボール女子 日本代表
2010年に代表入りし世界バレーで銅メダル
2012年、ロンドン五輪で銅メダル

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