開幕したパリオリンピック™で、日本勢メダルラッシュの先陣を期待されるのが2日目の27日から始まる柔道だ。1964年の東京五輪で初採用されて以来、実施されなかった68年メキシコ、日本が不参加だった80年モスクワを除く13大会で、競技別最多となる金メダル48個を獲得。今回のパリで、50個突破を目指している。
パリ代表を見ると、阿部一二三(男子66キロ級=26歳)、阿部詩(女子52キロ級=24歳)の兄妹を始め、永瀬貴規(男子81キロ級=30歳)、ウルフ・アロン(同100キロ級=28歳)、素根輝(女子78キロ超級=24歳)と前回の東京で優勝し、連覇を狙う選手が5人いる。
過去には、1996年アトランタから3連覇した野村忠宏(男子60キロ級)を筆頭に、連続優勝者は7人。2連覇が男子は1984年ロサンゼルスからの斉藤仁(95キロ超級)、2004年アテネからの内柴正人(66キロ級)、16年リオデジャネイロからの大野将平(73キロ級)。女
子は00年シドニーからの谷亮子(旧姓田村=48キロ級)、04年アテネからが2人で谷本歩実(63キロ級)、上野雅恵(70キロ級)。いずれも日本の柔道界を代表して、国民を沸かせた名選手だった。
阿部一二三は、大会を迎えるにあたり、野村を越える「五輪4連覇が目標」と公言した。パリはあくまで通過点との位置付けで、圧倒的な強さでの金メダルを目指している。
一方、初出場組は年齢に関する話題が多い。最年長は32歳11か月の橋本壮市(男子73キロ級)。これは08年北京で5大会連続のメダル(銅)を獲得した時の谷に並ぶが、日付まで計算すると2日早くなり、これまでの代表選手の中で一番のベテランだ。金メダルを獲得すれば、文句なく歴代1位の高齢記録となる。
女子の角田夏実(48キロ級)も31歳11か月。現在の男女の金メダリスト最高齢は、前回の東京で優勝した濱田尚里(女子78キロ級)の30歳10か月で、彼女も優勝すれば、それを上回る記録を達成する。
逆にパリでの最年少は22歳4か月の斉藤立(男子100キロ超級)だ。五輪連覇の偉大な父・仁との「親子金メダル」を目指すが、もしも表彰台の真ん中に立てば、父が最初に優勝したロスでの23歳7か月より1歳以上若い。全体でも00年シドニーの井上康生(男子100キロ級)らに並ぶ、7位タイの記録になる。
「世界のヤマシタ」と呼ばれた山下泰裕(無差別級)は、当日の試合で負った右足ふくらはぎの肉離れを跳ね返して優勝した84年ロサンゼルスの時が27歳2か月。女子も含めた若さでいうと33番目になり、そう目立つ存在ではない。これは前の大会であるモスクワで代表に選ばれながら出場できなかったためだが、出場していれば4歳若く金メダルを手にしていた可能性は高い。
谷も頂点をつかんだのは、3度目の出場だったシドニーで25歳ちょうどだった。これは若さで全体の23番目。女子だけに限っても7番目となる。初出場だった92年バルセロナは16歳10か月だったが銀メダル。銀、銅も合わせた男女メダリストの年少記録では断トツの1位だ。ちなみに女子の金メダリスト最年少は、21歳ちょうどが2人。同じ7月生まれで誕生日の遅い阿部詩、素根の順で並ぶ。
柔道代表全体の最年少金メダリストは、五輪に初採用された最初の東京での岡野功(中量級=80キロ級)で20歳9か月。左右の担ぎ技と足技、寝技も得意とした岡野は、五輪のほかに世界選手権と体重無差別の全日本選手権をも制する柔道界の「三冠」を初めて達成した伝説の人。「昭和の三四郎」と呼ばれた。
「平成の三四郎」と称された古賀稔彦(男子71キロ級)は24歳8か月だった92年バルセロナで頂点に。パリでは、その2人の異名と同じ「三四郎」の名を持つ村尾三四郎(男子90キロ級)が23歳11か月。阿部一二三が東京で勝った時と同じ年齢で金メダルに挑む。
※階級は当時。パリ五輪代表の年齢は試合当日、他は開催時
(竹園隆浩/スポーツライター)
【柔道の日本勢五輪金メダリスト】
◆64年東京(3人)
中谷雄英、岡野功、猪熊功
◆72年ミュンヘン(3人)
川口孝夫、野村豊和、関根忍
◆76年モントリオール(3人)
園田勇、二宮和弘、上村春樹
◆84年ロサンゼルス(4人)
細川伸二、松岡義之、斉藤仁、山下泰裕
◆88年ソウル(1人)
斉藤仁
◆92年バルセロナ(2人)
古賀稔彦、吉田秀彦
◆96年アトランタ(3人)
野村忠宏、中村兼三、恵本裕子
◆00年シドニー(4人)
野村忠宏、瀧本誠、井上康生、田村亮子
◆04年アテネ(8人)
野村忠宏、内柴正人、鈴木桂治、谷亮子、谷本歩実、上野雅恵、阿武教子、塚田真希
◆08年北京(4人)
内柴正人、石井慧、谷本歩実、上野雅恵
◆12年ロンドン(1人)
松本薫
◆16年リオデジャネイロ(3人)
大野将平、ベイカー茉秋、田知本遥
◆21年東京(9人)
高藤直寿、阿部一二三、大野将平、永瀬貴規、ウルフ・アロン、阿部詩、新井千鶴、濱田尚里、素根輝
(※68年ミュンヘンは実施無し、80年モスクワは日本が不参加)
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