ロンドン(2012)、リオ(2016)、東京(2021)とオリンピック3大会連続でメダルを獲得している卓球日本代表。その強さと人気のウラにあったのは、“選手の意識の変化”と卓球界の“大改革”。観客を魅了するための、「わずか2ミリ」の改革とは。

若い世代に人気の卓球

7月26日から開催されるパリオリンピック™。
小中学生に「一番興味がある競技」を調査したところ、卓球が2位にランクイン!

【1位】バレーボール 11.5%
【2位】卓球 7.5%
【3位】サッカー 6.1%
【4位】競泳 5.8%
【5位】バスケットボール 5.6%
(※ニフティキッズ調べ)

どんなところが人気なのか?街で若い世代に聞いてみると…
10代男性:
「スカッとする感じで爽快感がある」
20代男性:
「強い人がどんどん出てくるイメージがあるからメダルが期待できる」

若者たちを中心に、一躍人気スポーツとなった卓球ですが、「20年ぐらい前は、卓球の日本チャンピオンといっても、やっている人しか知らなかった」と話すのは、国内唯一の卓球専門誌、『卓球王国』の編集長です。

卓球がオリンピックの正式競技になったのは1988年のソウル五輪から。
日本代表は、なかなか世界の高い壁を破ることが出来ず、20年以上もの間、メダルを手にすることができませんでした。

しかし、ある選手の登場が日本卓球界を変えていくことになります。

日本卓球界を変えた“卓球の愛ちゃん”

『卓球王国』編集長:
「福原愛さんの影響はすごく大きい。小さな子どもの“卓球の愛ちゃん”がテレビで注目されて、最終的に五輪メダルもとった。小さいうちから卓球を始めようという人が増えて、12歳、13歳になったらかなり強いという子が増えた」

五輪3大会連続メダリストの石川佳純選手や、2021年の東京五輪で3つのメダルを獲得した伊藤美誠選手も小さいころ、
「愛ちゃんみたいに強くなりたい」(石川選手)
「愛ちゃんの記録を抜かしたい抜かしたいと思って」(伊藤選手)
と目標を口にし、名選手に成長。

全国各地で、愛ちゃんを目指す子どもたちが増加したことで、ハイレベルな選手が出現し、日本代表の柱となっていったのです。

目標となった福原愛選手は、15歳から日本を背負いオリンピックに出場。23歳の時、エースとして出場した3度目の五輪(ロンドン2012年)では、団体で、日本初の銀メダルを獲得しました。

集大成として挑んだ4度目のリオ五輪(2016年)では、27歳、最年長のキャプテンに。
石川佳純選手(当時23歳)、伊藤美誠選手(当時15歳)と団体戦に出場しました。
銅メダルをかけた、シンガポールとの3位決定戦ー

福原選手は、フルセットの末、第1試合を奪われてしまいます。
するとこのピンチに、“愛ちゃん”の背中を追いかけてきた後輩たちが力を発揮します。
第2試合を石川選手が3-0で勝利。続く第3試合のダブルスも伊藤選手の活躍で勝利。
そして第4試合、「先輩二人を手ぶらで帰らせるわけにはいかない」と臨んだ伊藤選手が3-0で見事勝利!2大会連続のメダルとなったのです。
涙で抱き合う3人の姿は、日本中に多くの感動を巻き起こしました。

新世代で挑んだ、東京五輪(2021年)では、史上初の金メダルを含む4つのメダルを獲得。
▼混合ダブルス【金メダル】⇒水谷 隼・伊藤美誠ペア
▼女子シングルス【銅メダル】⇒伊藤美誠
▼女子団体【銀メダル】⇒伊藤美誠・石川佳純・平野美宇
▼男子団体【銅メダル】⇒張本智和・丹羽孝希・水谷 隼

いま、“最強世代”といわれる、日本の躍進。
それは、ジュニア層の強化体制が整ったことも大きいといいます。

卓球人気を巻き起こした“3つの大改革”

卓球人気の理由は、強さだけではありません。
実は、世界的に普及させるための“3つの大改革”があったんです。

1つめは、「明るく華やかイメージ改革」
色に制限のあったユニフォームを、1990年からはボールの色と違うなら何色でもOKに!カラフルなユニフォームが続々登場しました。
さらに暗い緑色だった卓球台を青に変更。会場が明るくなったのです。

2つめは「接戦増加改革」
21点制だったゲームを、2001年から11点制にルール変更すると…。

『卓球王国』編集長:
「波乱が起きやすい。出だしでリードすると、強い選手も追いつけない。観客も選手も緊張感が高まった」

“1点の重要性”が増すことで接戦が増え、観客は釘付けに。

さらに、3つめは「ラリー持続改革」
リオ五輪で観客を沸かせた、水谷隼選手と中国の馬龍選手の“伝説の神ラリー”。
それを可能にしたのが、2000年から大きさが変更になったボールです。
38ミリから40ミリに変更することで空気抵抗が増加。ボールの速度と回転量が落ち、ラリーが長く続くようになったのです。

20代男性:
「ラリーする瞬間は観ていてハラハラする」
10代女性:
「長いラリーで最後決まったとき、めっちゃワァってなる」

日本の新エース早田ひなの原点は「楽しむこと」

人気実力ともに、最高潮で迎えるパリ五輪。
期待の選手を聞いてみると多くの人が口にしたのが、早田ひな選手(24)。

日本勢トップの世界ランク5位で、パリでは【シングルス】【団体】【混合ダブルス】に出場します。

4歳から卓球を始め、中学2年の時に「東京オリンピックに出場して金メダルをとりたい」と夢を語っていましたが、2021年の東京五輪はリザーブに…。
しかし、2023年のアジア大会シングルスでは、当時世界ランク9位ながら、4位の中国選手を破り、銀メダルを獲得。
撃ち負けない早田選手の強さに、中国が「最大の脅威」と警戒するほどに成長しました。
(※中国メディア『捜狐』より)

早田ひな選手(2024年1月):
「中国は自分を一生強くしてくれる存在。勝つことは果てしない道のりだといつも思っているけれど、楽しさでもある」

楽しむことを原点に、代表落選から今や日本のエースへと成長した早田選手。
初の夢舞台でメダル獲得を目指します。

早田ひな選手(7月20日):
「楽しみですね。東京五輪が終わってからやってきたものを全て出せるように、後悔ないように1つ1つ頑張っていきたい」

【パリ五輪 卓球】

7月27日(土)~
▼男子シングルス⇒張本智和・戸上隼輔
▼女子シングルス⇒早田ひな・平野美宇
▼混合ダブルス⇒張本智和・早田ひな

8月5日(月)~
▼男子団体⇒篠塚大登・張本智和・戸上隼輔
▼女子団体⇒張本美和・早田ひな・平野美宇

(THE TIME,2024年7月22日放送より)

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