2021年、県立コザ高校の空手部の主将を務めていた男子生徒が自殺した問題について、今年4月に着任したコザ高校の大嶺哲司校長が、初めてテレビインタビューに答えた。第三者委員会の調査報告書を受け改革に着手したコザ高校の今を語る。

コザ高校 大嶺哲司校長
「(生徒の)SOSをどうキャッチするか、拾い上げるか、今から強化しないといけないところだと考えていますので」

今年4月、コザ高校の校長に着任した大嶺哲司さん。昨年度までの2年間、県教育庁の保健体育課の班長として部活動改革を担い、部活動に関する様々な相談を受けた。

コザ高校 大嶺哲司校長
「自死事案が起きた後もいろんな学校からの問い合わせが絶えないんですよ。変わっているようでまだ沖縄も、全国的にも、ハラスメント問題というのはどこの県でも根絶できていないというか」
「指導死で亡くなる生徒が1人でも減るように取り組んでいきたいと思っています」

3年前、コザ高校で空手部の主将を務めていた男子生徒が自ら命を絶った問題について調査を続けてきた第三者委員会は、今年3月、男子生徒の自殺の原因を「前日にあった顧問からの理不尽かつ強烈な叱責が大きな要因」だと結論づける調査報告書を県に提出した。


第三者委員会 古堅豊 委員長(弁護士)
「顧問と部員という主従関係を超えて、「支配的要素」。そういう関係が出来上がっていた中で、(自死の前日)1月28日の言動が彼にとって、自死に向かう大きな原因になったんだと考えています」

第三者委員会は、直接的な原因ではないものの、当該校であるコザ高校の対応にも問題があったと指摘。

第三者委員会 上間陽子 副委員長(琉大教育学研究科教授)
「この自死事案が起こる前年度に、(元顧問の)他の生徒に対する不適切な指導という問題がある。管理職がそれを掴んでいます。掴んでいるにも関わらず、当該の“被害を受けた生徒たちへの聞き取りはなされていない”んですね。それは生徒たちにとってみれば、どうしてそういう風になったのかとか、どう思っているのか、聞かれていくような学校文化があって、それが当たり前になっていたら、こういうことはなかったと思います」

再発防止にむけた取り組みが求められるコザ高校。
4月に校長に着任した大嶺さんはまず、その取り組みについて、遺族のもとへ説明に赴いた。そこで感じたのは…

コザ高校 大嶺哲司校長
「写真とか賞状とか、その当時の空手マットが家にあって、本当に3年前から時間が止まっているのではないかと思うぐらい、息がグッと止まったような思いがありました」

なぜ男子生徒は、命を絶つほど、追い込まれたのか…第三者委員会の調査報告書は、生徒が死を選択するまでの、当時の顧問とのやり取りなどが具体的に記されている。

4月下旬、校内の教員ら約80人でこの報告書の読み合わせをしたというコザ高校。


コザ高校 大嶺哲司校長
「部活動が顧問や学校の名誉になり、生徒の成長を中心に置いていなかったのではとか、あと部活動が生徒主体の取り組みになるよう生徒と顧問の意見のすり合わせが必要だという意見が出ました」
「涙ぐみながら意見を発表する先生もいました」

当時を知る教員の中には、今も、生徒の死を止められなかったことを強く悔やんでいる教員もいるという。

コザ高校 大嶺哲司校長
「今の子どもたちを守るために何をしなければならないかということを常に学校として考えていかないといけないと思っています」

コザ高校では、この問題を受けて下記の対応を取る。

【不適切指導 対応マニュアル】
・不適切な指導があった場合の対応マニュアルを8月中に作成

【部活動アンケート 年に3回実施】
・生徒に対しては、部活動アンケートを年に3回実施

【生徒の相談体制】
・生徒が相談しやすい体制を構築

【子どもの人権に関する講演会】
・7月中に生徒や保護者、教員を対象に子どもの人権に関する講演会を実施予定

コザ高校 大嶺哲司校長
「私としてはコザ高の取り組みを全県的に発信して、沖縄から指導死が起こらないような状況を1日でも早く作っていきたい」
「3年前に大きな事案が起こったことを、しっかり私たちは見つめ直していかないといけないという思いはありますので」

絶対に、二度あってはならない悲劇と向き合う、再発防止の取り組みが始まっている。

【取材MEMO】
これまで再発防止に向けた取り組みがなかなか見えてこなかったコザ高校ですが男子生徒が亡くなって3年が過ぎて、変化が見えてきました。今月の講演会は、学校の同窓会や後援会も協力するということで、学校を挙げての改革に注目が集まります。(下地麗子)

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