甲子園を目指す夏の高校野球広島大会、注目のチームを紹介するシリーズ「変わる夏、変わらない夢」。きょうは、ここ5年で2度の準優勝と、初の甲子園へあと一歩の尾道高校を取材しました。春の中国大会を制したチームの強さの理由は「ライバルの存在」と「家族愛」です。

尾道高校 細砂虎ノ介 マネージャー(3年)
「バナナ食えよ、しっかり」

マネージャーを含めて50人。向島にあるチームはこの夏、例年以上に注目を浴びています。

石田充 アナウンサー
「創部68年目の尾道高校。中国大会を制し、この夏、初の甲子園という変わらぬ夢に挑みます」

春の県大会は広陵に敗れ3位も、その後の中国大会では広陵を破った倉敷商業に勝利し、創部以来、初めて中国王者となりました。

尾道のエースは、田原永遠 選手(3年)。MAXは130キロ台中盤ですが、1試合でフォアボールを1つ出すかどうかという抜群のコントロールで打者を翻弄します。

尾道高校 田原永遠 投手(3年)
「そんなに球は速くないんですけど、緩急を使ったり、チェンジアップで三振を取ったりというのが自分の中では持ち味だなって」

田原選手は、春の県大会で4割近い打率を残し、「つなぎの4番」として打線の軸も担います。

そんな尾道ナイン相手にマシンから発射される剛速球…。前に飛ばないことも…。なぜ、こんなに(161キロ)速いのか?

田原永遠 投手
「広陵の 高尾(響)投手が出てきて、球のスピードが全然違ったので、高尾をつぶさないとやっぱり甲子園はないなっていうイメージです」

ライバル・広陵には去年の夏から3連敗中。プロも注目する投手を攻略するため、マシンのスピードをここ2年で20キロ上げました。

尾道には忘れられない夏があります。悲願の甲子園へあと一歩まで迫った2年前、盈進との決勝戦に唯一、1年生として出ていたのが 土井優史 選手です。

尾道高校 土井優史 選手(3年)
「あのくやしさっていうのは絶対、忘れないものなので…。自分は守備に自信があるので、その守備をこの夏でも見せられたらなと思います」

尾道不動のショート・土井選手。ことしは低反発バットが導入されて「変わる夏」。選手が感じる変化とは?

土井優史 選手
「内野と外野の間に落ちるフライがだいぶ増えてきて、そのフライで勝敗を分けることもあるので、そこは意識して守備の面でも攻撃の面でもやっています」

尾道を率いて22年―。北須賀俊彰 監督(55)は、別の変化を感じていました。

尾道高校 北須賀俊彰 監督
「バットはたくさん振るようにしましたけども、ボールに力を伝えることを例年より数多くできたので、逆に長打も増えたり、打率もそんなに変わっていないですし。周りの人も甲子園出場を期待されていると思いますので、そこになんとかたどり着けるように一戦一戦しっかりやりたいと思います」

また、新チームになってから「野球部の髪型は自由」に変わりました。キャプテンとして、キャッチャーとしてチームを支える 富島海翔 選手は…

尾道高校 富島海翔 主将(3年・捕手)
「少し、やっぱり “色気づいてしまう” 部分があると思うんですよ。伸ばした以上、負けられないし、私生活ひとつの行動にも責任があると思ってやっています」

練習が終わると選手たちの大半は、船に乗って対岸の寮へ―。

富島海翔 主将
「風に吹かれて、気持ちのいい時間です」
― 潮風に髪がなびくようになりましたね。

北須賀監督がローンを組んで立てた寮には40人の選手が暮らしています。キャプテンに注目の3年生の部屋を案内してもらいました。

富島海翔 主将
「夏のキーマンです」

尾道高校 守内滉人 投手(3年)
「キーマンになれるようにがんばります」

尾道高校 菅将遙 投手(3年)
「横になって、これに乗っかって、抱き着いて(寝ています)」

エース 田原永遠 投手(3年)
― 何をしているんですか?
「今、広陵の試合を見ています」

手際よく、選手たちのご飯を作るのは、北須賀亜紀 さん。監督の奥さまです。

北須賀監督の妻 亜紀 さん
― この生活が何年ですか?
「えーと、16年です。マネージャーの娘が生まれた年に(寮が)できたので…」

北須賀監督の三女 マネージャー 理央さん(1年)
「思った以上にたいへんだし、選手1人ひとりに目を配ることがまだできていないなと感じることが多いです。(父に)いつも迷惑ばかりかけているので、ちゃんと支えられる側になれるようにがんばります」

妻 亜紀 さん
「パスタ、出しとくよ」

北須賀家が親子で支える野球部。一つ屋根の下、家族ともいえる団結力で歴史を変える夏に挑みます。

組み合わせ抽選会で第1シードの広陵とは別の山になりました。対戦が実現するならば、その舞台は決勝戦です。

尾道高校 富島海翔 主将(3年)
「広陵高校を倒すために新チームが始まってからやってきたので、その舞台(決勝)に立って対戦できるように一戦一戦、勝ち上がることをやっていくことをしっかりやっていきたいと思います」

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