相撲スタイル極め、金メダルを目指す。23年レスリング世界選手権、日本勢では世界選手権で70kg級を超える階級での初メダルとなった男子グレコローマン77kg級銅メダルを獲得し、パリ五輪代表に内定した日下尚(23)。その後も4月のアジア選手権で世界王者のアクジョル・マフムドフ(キルギス)を撃破し、優勝。6月の国際大会では世界2位のサナン・スレイマノフ(アゼルバイジャン)を準決勝で打ち破り、世界ランキング1位まで上り詰めた。パリ五輪は第1シードでの出場となり、まさに金メダルの大本命として臨む。
高松北高から進学した日体大の1年時にその強さは開花。すでに高校王者として、全国区ではあったが19年の明治杯全日本選抜選手権と全日本選手権72kg級で日本グレコローマン史上、ともに最年少優勝を打ち立てた。20年全日本大学グレコローマン選手権72kg級で優勝したあと77kg級に転向し、パリ五輪を前にランキング頂上まで上り詰めた。
自分のレスリングスタイルは「相撲スタイル」
その強さの起源を日下に振り返って貰った。
日下尚:
自分のレスリングスタイルは「相撲スタイル」って自分でも言ってて、レスリング競技をしてるんですけど相撲をしている部分もあって、相撲を生かしたレスリングをしています。(強みは)相撲と同じで、相手を押し出したらレスリングでも点をもらえるので、自分は前に前に相手を押していくっていうのが、自分のスタイルの特徴です。
上半身のみの攻防で腰から下への攻撃が禁止されるレスリングのグレコローマンでは力比べ、力勝負の様相が多くなる。“相撲スタイル”こそが日下の世界トップレベルのスタンドの強さを支えている。
相撲部屋への武者修行が実現
金星ならぬ、金メダルを目指すために「小さい頃は相撲をやっていた。足腰の強化と 自分の原点を思い出す」。向かったのは相撲部屋でした。関脇・阿炎が所属する錣山(しころやま)部屋を訪問した。日下は中学生以来というまわし姿で稽古に合流。165kgの阿炎(30、22年九州場所優勝)相手のぶつかり稽古も実現した。体重差90kgキロでも熱のこもったぶつかり合いに錣山親方(元小結 豊真将)も「こんなに低くから綺麗に押してくる人はなかなかいない。絶対(相撲も)強いよ」と目を丸くする。日下自身にも大きな収穫があった。
日下:
(阿炎関は)壁、壁です。レスリングでは体験する事のない重み…五輪の相手も阿炎関より大きい人はいないのでみんな押し出して優勝したい。
「僕の目指すところはここだ」いざ夢舞台へ
3歳から始めたレスリング。小学4年で相撲にも取り組む。小学6年で観たロンドン五輪レスリングで夢見た少年は中学時代には相撲の全国大会出場。レスリングに取り組み続ける中、高校1年で観たリオ五輪では「僕の目指すところはここだ」だと確信に変わり、レスリングでオリンピックを目指し始めた。ここまで磨きをかけた相撲スタイル。いよいよ乗り込む夢舞台で日下は満開の花を咲かせる。
日下:
もう本当に相撲スタイルが自分の最大の持ち味なので、もうバンバンバンバン相手を押し出して、金メダルに少しでも近づけるようにしたいと思ってます…(目標は)もう金メダルしかないです。もう本当に初めはもう自分自身の1人の夢だったんですけど、今では本当に多くの人が頑張れよというふうに、応援してくれるようになって、もうそういった応援を力に変えて、パリの舞台で暴れたいと思います。
日下尚(くさか・なお)
2000年11月28日生 香川県出身 高松北高~日体大~三恵海運
▼8月6日 パリ五輪 レスリング 男子グレコローマンスタイル77kg級
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