6月23日(日)、自転車ロードレースのプロチーム「ヴィクトワール広島」は、日本チャンピオンを決める全日本自転車競技選手権大会ロード・レースに出場。その挑戦にカメラが密着しました。けがから2か月の 小野寺玲 も復活への一歩を記しました。
日本トップクラスのロードレーサーとして今季から加入した小野寺玲が、坂道で必死にもがいていました。ゴール後のポーズが特徴で「オノデライダー」として人気の選手です。
期待どおり開幕戦から上位に入り、チーム初の暫定トップの証・チャンピオンジャージを着る好スタートを切りましたが、4月27日のレース中に落車、右の鎖骨や肋骨を折る大けがを負い、プロデビュー後、初めて手術を受けました。
6月11日、自宅で入念に筋肉をほぐす小野寺。折れた鎖骨部分にはプレートが入ったままで違和感があるといいます。
ヴィクトワール広島 小野寺玲 選手
「ちょうど、ここにビブパンツがあって、こういうふうに通っているんですけど、それがこの傷口のはしっこに当たって痛かったりしますね」
自転車に乗って坂道のあるトレーニング場所へと向かいます。
小野寺玲 選手
「7月の地元開催のレースに向けて、その前に “レース感覚” を取り戻したいですし、調子も上げたいっていうことで今月の全日本(選手権)にはエントリーしています。自転車に乗り始めてからようやくこうやった強度を上げた短時間のメニューっていうのをやり始めて、まだ、やり始めてまもない時期なので本当にもう筋肉がメキメキというような、体感的にはもうけっこうきついんですけど。全日本選手権に出てみて、そこで今までのレースを走った体感との差を感じた上で7月の地元レースまでに完全体に戻したいなという感じなので」
全日本選手権前日(6月22日)の朝6時。漫画「弱虫ペダル」の主人公に似ている 久保田悠介 ―。
ヴィクトワール広島 久保田悠介 選手
― おはようございます。早いね。
「早いですね。いつも遠征の朝はけっこう早い」
地元・広島出身の 中村圭佑 はことし、実力を上げてきました。宮﨑健太 を含めた3人が、大会会場の静岡・伊豆まで720キロの道のりを車で向かいます。
ヴィクトワール広島 中村圭佑 選手
「宮崎くんが運転してくれると思うので、まずは。あわよくば静岡まで(笑)」
今回、新登場したオレンジの機材車。トップチームを知る小野寺の提案で導入されました。以前は1台の車に自転車を屋根の上に載せて移動していました。
ヴィクトワール広島 中山卓士 監督
「(自転車が)サビたりとかといわれることも事実で、うちはがんばって、それを安上がりにしていた。1台で今まで」
日本の自転車チームは、自転車を車で運ぶため、開催地まで何時間もかかるのです。
ヴィクトワール広島 宮﨑健太 選手
「宇都宮とか行くと、ものすごく時間がかかるので、静岡はまだマシな方ではあります」
久保田悠介 選手
「ぼくの分まで(運転を)がんばってほしい」
宮﨑健太 選手
― 期待されていますよ。
「やっぱり下っ端なんで」
久保田悠介 選手
「ただ走るだけでもしんどいコースになると思うので、15位以内に入るとUCIポイントが獲得できるので、そこを目標に」
中村圭佑 選手
「160キロで5000メートル上がる、登るコースなので、やることはやってきたので、あとはもう自信を持って走ります」
8時間後、ようやく静岡のホテルに到着。
宮﨑健太 選手
― 着いたね。
「長かったですね」
前日、タイムトライアルに出場していた小野寺と合流。3人は、移動で固まった体を1時間ほど走ってほぐします。翌日が雨予報のため富士山は全く見えません。
翌日のレースの打ち合わせ―。
中山卓士 監督
「正直言ってトップテンというのはチームとして、監督としてのオーダーだけども、でも、ダメでもいいからトップテンにつながる走りができたねというところでベストを尽くしてほしいなというふうに思っています」
小野寺玲 選手
「特に調子いい久保田くんならチャンスがあると思うから、あせらず、まわりを見て、いい展開に乗れることを意識して走ってもらって…」
午後5時半、早めの夕食を定食店で。焼き魚などが中心で、揚げ物は食べません。小野寺は大好きな納豆をプラスします。
小野寺玲 選手
「納豆は毎食、食べたいぐらいですね」
本番当日(6月23日)―。
中村圭佑 選手
「雨ですね。想定内というか」
久保田悠介 選手
「雨は本当に寒いですし、滑りますし、なにより。それが怖い」
― 坂が多いから。
「そうですね。下りがそのぶん…」
去年と同じ会場で行われる全日本選手権のロードレース。8キロのコースを20周・160キロで争うトップカテゴリーには109人の選手が出場しました。
ヴィクトワールの選手4人もウォーミングアップ。雨も弱まり、いよいよスタートです。
3周目、小野寺が積極的に前に出てレースを進めます。4周目、10番手以内に小野寺。宮崎が、ここで遅れてしまいます。
5週目に入ると11番手に久保田が上昇。中村は、この時点で集団から遅れてしまいます。
中村圭佑 選手
「でも、やることをやってきたので、この結果なら悔いないので、また次に向けてがんばります」
ヴィクトワール広島のファンが声援を送ります。7周目、上位5人の逃げのあと、メイン集団で力強くダンシングする久保田。ここで小野寺が集団から脱落します。
小野寺玲 選手
「意外と行けるかなという感じで走れてはいたんですけど、トレーニング量とかの都合なのか、わからないですけど、急にパタって足が動かなくなってしまった感覚があったので、これを踏まえて来月の地元レース、そして、それからの後半戦に向けて上げていければなと思っています」
8周目、メイン集団の15番手で必死の形相で踏み続ける久保田。9週目も離されず、14番手をしっかり追走。
11周目、大混戦の中、メイン集団の中でしっかり位置をキープします。しかし、12周目の最後の直線でメイン集団の最後方に下がってしまいます。そして、13周目、ついにメイン集団から脱落してしまいました。
レースは逃げが決まり、勝者は4人に絞られました。単独で20位を走行する久保田。トップに10分以上離されるとリタイヤになるため、懸命に走り続けます。しかし、惜しくも18週目、タイムアウトとなってしまいました。
中村圭佑 選手
「チャレンジしてこれなら」
久保田悠介 選手
「まあねえ」
― 惜しかった。がんばったと思うよ。
「精いっぱいでした」
サバイバルとなったレースで完走はわずか19人でした。
中山卓士 監督
「久保田がいいところまで来て、最後の最終走者まで来ていたんですけど、目標の順位にも届かなかったし、もう1回、みんなで鍛え直してがんばるしかないですね」
◇ ◇ ◇
石田充 アナウンサー
109人が出場して19人しか完走できなかったというサバイバルでした。まず現地に行くのにも自転車のロードレースはたいへんだなと感じました。
7月には地元でレースがあります。去年から始まった「佐木島ロードレース」(7月27日)、そして広島の市街地を走る「広島クリテリウム」(7月28日)。過去には雨で中止になったこともあるので、いい天気の中、広島でレースが開催されればと思います。
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