2大会ぶり3度目の五輪切符をつかんだ競泳女子の鈴木聡美(33、ミキハウス)。33歳での五輪出場は競泳史上最年長の快挙だ。今なお進化を続ける鉄人がパリ五輪で目指すのはシンプルに「自己記録の更新!」だ。

ロンドン五輪で“シンデレラガール”と 脚光を浴びるも…

2012年、21歳で初めて出場したロンドン五輪で3つのメダル(100m銅、200m銀、400mメドレーリレー銅)を獲得した鈴木。日本の競泳女子では、五輪の個人種目での複数メダルは史上初の快挙!“シンデレラガール”と脚光を浴びた。しかしその後は低迷が続いた。4年後のリオ五輪では代表に選ばれるも決勝に進めず、東京五輪では代表入りすら逃した。「水泳というか自分自身に向き合えない時期が長く続いた」と苦しかった時期を振り返る。

“兄のような存在”永井トレーナーとの出会い

2016年リオ五輪後から鈴木のトレーニングや身体のケアを担当しているのが永井裕樹トレーナーだ。鈴木にまず伝えたのは「自分と向き合わないといけないよ」という言葉。そして「今から強くなれるよ」と鈴木を鼓舞し続けた。逃げ出したくなるようなハードなトレーニング(1種目1分間のメニューを1時間続けるインターバルトレーニング)を、持ち前の“負けず嫌い”と“継続力”で、泣きながらも黙々とこなし続けた。

鈴木を指導する永井トレーナー

永井トレーナーは、鈴木の強みについて「“粘り強く継続ができる”ところ。他の選手は絶対に真似できないハードワークを常に挑戦してやることができている」と話す。足かけ8年、今や永井トレーナーは鈴木にとって欠かせない存在だ。「毎回“大丈夫だ”“やるならやるしかないよ”というシンプルな言葉のみを辛抱強く投げかけ続けてくれて、精神的な支えにもなっている。兄のようなポジションでいてくれるのでとてもありがたい」と感謝を口にした。

18歳の自分を超える!14年ぶりに自己記録を更新

大学生の頃から15年間拠点としている山梨学院大学では、朝6時から10代の若い学生たちと練習を共にする。「ここ以上にきつい練習のメニューはないと思っていて、それが今の自分を育てている」とハードな環境に身を置いている。多い時は1日1万m泳ぎ込むことも。30代に突入しても「年齢のことは関係なく体は元気なのでアレ?と思っている」と衰えは感じていない。永井トレーナーも「僕は年齢という概念自体を全く持っていない。面白いことだが僕の感覚では年々良くなってきている」と太鼓判を押す。

鈴木聡美の力泳

コツコツと積み重ねてきたものが花開いたのは、鈴木の地元・福岡で行われた去年の世界選手権。100m平泳ぎで、18歳の時にマークした自己記録(1分6秒32)を32歳で更新、実に14年ぶりの自己ベスト(1分6秒20)で完全復活を遂げてみせた。その勢いのまま今年のパリ五輪代表選考会ではさらに0秒29更新(1分5秒91)。10代から20代前半がピークと言われる競泳界で、30歳を超えての自己記録更新は驚異的だ。

ストイックな裏には…ゲーム好きの顔も!「五輪本番でも欠かせない」

ハードな練習の息抜きは大好きなゲーム。練習している時間以外はほとんどゲームをしているという。「練習8時間・ゲーム8時間・睡眠8時間」とちょうど3分割できるほど。「これだけ練習で追い込んでいるのに外で遊べない」というのが本音のようだ。リカバリーも兼ねて良いリフレッシュになっているという。パリ五輪本番でも「ニンテンドースイッチは必需品。大事なもの、欠かせない」と熱く語った。

パリ五輪で目指すのは…“己の壁”を超えて自己記録を更新すること

年齢の壁を超えてきた鈴木にいま立ちはだかるのは“己の壁”。「自分自身を超えられない限り自己ベストは出ないし、自己記録を超えられれば決勝進出や表彰台も自ずと見えてくる」と、あくまでも自己記録の更新という目標を強調した。12年ぶりのメダル獲得へ、驚異の33歳から目が離せない。

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