バスケットボール女子日本代表・林咲希(29)、彼女の代名詞は「3ポイントシュート」だった。21年東京五輪、彼女が描く放物線が日本中を沸かせた。準決勝ベルギー戦では残り16秒で2点ビハインドをひっくり返す“奇跡の3ポイント”で勝利を導いた。日本史上初のベスト4進出の勢いはそのまま、日本バスケット界初メダルとなる銀メダル獲得につながった。パリ五輪ではキャプテンを務める林選手にシドニー五輪マラソン金メダリストの高橋尚子キャスターがさらなる進化とその意気込みに迫った。

まったく外す気配のないシュート練習

取材当日、そのシュート練習に高橋キャスターが驚かされる。 この日は11本連続成功を披露し「これ永久に入り続けるんじゃないですか」と漏らしてしまうほど、全くシュートを外す気配がなかった。

まったく外す気配のないシュート練習

Q(高橋尚子).1日にどのくらい練習を…
林咲希:

大学の時は300本イン(シュートが決まる)は必ず 時間があるときはやっていて、シュートが入ったものをカウントするので500本くらい打っている。1時間ずっと打ちっぱなしとかもありました。

“シューター”+“ハンドラー”として進化

たゆまぬ努力で日本屈指のシューターとなった林選手が更なる進化を遂げていた。去年、6シーズン在籍したENEOSから富士通へ移籍。新たに与えられた役割が林選手の可能性を拡げた。

“3ポイントシュートだけ”という印象もボールを運ぶハンドラーとしても進化

Q.ステップアップをするために移籍を決めて、どんな所が成長したのか
林:

”3ポイントシュートだけ”という印象がみんなにあったと思う。富士通に入ってからは自分で点を獲らなくてもパス出来たり、中で点が獲れたり、今までWリーグで見せた事がないプレーを 少しは見せる事ができたので成長したかなと思う。

ステップアップの成果は格段のスコアアップに

猛練習で磨いたスリーポイントは、今でももちろん、最大の武器である。これまでシューターとしてのポジションを確立していた林選手が新天地ではボールを運ぶ・ハンドラーとしての役割も与えられ、3ポイントシュート以外のプレーにも磨きが掛かった。Wリーグの優勝をかけた一戦でもその成果が見られた。林選手の3ポイントを警戒した相手ディフェンスを見て味方へのパスを選択する等、攻撃のバリエーションが増えていた。チームはデンソーを打ち破り、16シーズンぶり2度目のWリーグ制覇。林選手自身も移籍前に比べて、得点やアシストのスコアは格段に上がった。

▼林咲希 Wリーグ個人成績
シーズン  得点  アシスト
22‐23   185点  12本
23‐24   373点  61本

攻撃のバリエーションを身に付けた事で自身の得点は2倍に、アシストはなんと5倍に増えた。

林:
スキルはもっと必要かなと思う。富士通でちょっとずつ精度を高めてきた…あとは世界でどれだけ試せるかっていうふうなところは自分もすごい挑戦な感じはありますね。

キャプテンとして“本当に金メダル獲れる”と伝えていく

3ポイントのスペシャリストから最強のオールラウンダーへ…更なるスキルアップを遂げ、パリ五輪では初の金メダル獲得を目指し、キャプテンとして日の丸を背負う。チームでは「皆で声出してやる事をしっかり頭に入れながら、1日1日大事にしてやっていきましょう」と頼もしく声を掛ける。

日本代表では“本当に金メダル獲れる”と伝えていく

林:
前回は金メダルがあんまり見えなかった、最初から見えなかったんですけど、今回は銀メダルを経験したからこそ鮮明に見えるものなので、…遠いですけど近くにあるのかなっていう風に思うので、本当に金メダル取れるっていう風に、私自身がしっかりみんなに言ってこう伝えていきながら良い練習内容でやれたらいいかなっていう風に思います。

Q.パリの予選では厳しい組となり、初戦がアメリカ戦。
林:

思っていたより今の所、何か楽しみなんですよね。私達をアジャスト出来てない1戦目ていうのが、逆に大きいのかなっていう風に思う。多分、でもアメリカも絶対試合中にアジャストしてくるんですけど、そのアジャストをも、超えられるような引き出しをみんなが持って戦えば、前の東京オリンピックでも『絶対日本と戦いたくない』という言葉を頂いて、それをもう1回言わせようっていう風に思っている。ただ、簡単な練習であったり、簡単な意気込みだと絶対勝てないので、やっぱり、それだけ練習して来たっていう自信をつけてその大会に挑めたらと、思います。

キャプテンとしてパリ五輪へ『苦しい時ほど楽しむ』明るい未来が先に待っていると考える

Q.その楽しみな日本チームとは…
林:

全然伸びしろがたくさんあるチームかなっていう風に思うので、完成するにはもう、多分試合中にいろいろ多分、出てくると思うのでそれも、私自身楽しみではありますね。(期待して欲しい点は)日本の速さであったり、苦しそうに見えるかもしれないですけど、絶対必ずシュートを決めるので、そこをしっかり見て頂きたいのと、1人1人体を張って守っている所、絶対皆さんにとって、パワーになれると思う。

『苦しい時ほど楽しむ』明るい未来が先に待っていると考える

Q.林選手自身はどこを注目して欲しい
林:

私は多分めちゃめちゃ…笑顔じゃないですけど、そういう雰囲気で絶対バスケしてると思うのでそこを見ていただきたいのと、3ポイントはしっかり決めます、絶対に。それ以上のプレーもできるように頑張ります。『苦しい時ほど楽しむ』です。苦しいときに頑張ってやる事で、私は成長できるっていう風に、もう今までもそうですし、これからもそれは変わらないと思うので、きつい場面とかきつい時ほど楽しんで、明るい未来が先に待っているという風に考えながらやっていきたいなっていう風に思います。

林咲希(はやし・さき)

1995年3月16日生 福岡県出身 精華女子高~白鷗大~ENEOS~富士通
身長:173cm シューティングガード
白鷗大ではインカレ・国体優勝。日本代表では19、21年アジアカップ優勝、21年東京五輪 銀メダルに貢献。24年はWリーグレギュラーシーズン初のベスト5選手(シューティングガード)に輝いた。コートネーム「キキ」は大学時代に名字が「木が2つ並んでいるから」というきっかけも入社を機に「“危機”を救う選手になる」という由来に。

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