兵庫県大会の上位3校と各府県の優勝校が参加して行われた令和6年度の春季近畿地区高校野球大会。準々決勝、準決勝とともに危なげなく勝ち抜いた京都国際(京都)と智弁和歌山(和歌山)による決勝戦が6月2日に行われ、京都国際がサヨナラ勝ちで初めての近畿王者に輝きました。
実力校同士の決勝戦 緊迫した展開に
実力校同士の決勝戦。先発した京都国際の西村一毅、智弁和歌山の渡邉颯人、それぞれ2年生投手が好投。予想どおりの緊迫した展開となります。先制したのは智弁和歌山。5回、2番・藤田一波選手のタイムリーで1点をもぎ取ります。しかし、京都国際も反撃。6回、2アウト2塁から「ここで打たないと、このまま(試合の)流れを持っていかれると思った」と話した4番・藤本陽毅選手がレフト線へのタイムリーツーベースを放ち、すかさず同点に追いつきます。追いついたのも、つかの間。7回、智弁和歌山がすぐさま突き放します。1アウト満塁から、再び藤田選手が今度はセンターへ犠牲フライ。2対1と勝ち越します。しかし、「たとえ点を取られたとしても、とにかく追加点を許さないように粘り強く投球することを心掛けた」と振り返った西村投手。この後、丁寧な投球でピンチを切り抜けます。
その裏、リードした智弁和歌山に手痛いミスが出ます。先頭の長谷川颯選手の打球をショートがファンブル。難しい当たりに追いつきましたが、思わぬ形で出塁を許してしまいます。さらに、続く奥井颯大選手のバントをピッチャーの渡邉選手がセカンドへフィルダースチョイス。その上、セカンドから(ショートの)1塁への送球が悪送球となって1・3塁とピンチを広げてしまいます。このチャンスに京都国際は、バッターボックスに入った西村投手がたたきつけるバッティングでセカンドへゴロを放ち、再び、2対2の同点に追いつきました。
同点に追いつかれた智弁和歌山…大型右腕・中西投手の投入で勝負に出る
思わぬ形で同点に追いつかれた智弁和歌山。8回からは、和歌山県大会の決勝で完投勝利を収めた身長197cmの3年生、大型右腕の中西琉輝矢投手を投入。勝ち越しを狙って勝負に出ます。一方の京都国際は西村投手が続投。西村投手は期待に応えて、8回と9回、緩急をうまく使ったピッチングで強打の智弁和歌山を抑えます。
中西投手の力強い投球の前になかなかヒットを放つことができない京都国際。それでも9回、1アウトから長谷川選手が粘ってフォアボールで出塁します。この後、奥井選手がきっちりと送りバンドを決めて2アウト2塁。タイムリーが出ればサヨナラの場面をつくります。続くバッターは、投手の西村選手。選抜大会でも活躍し準決勝でも好投したエースの中崎琉生投手が控えているだけに代打も考えられる場面でしたが、小牧憲継監督の選択は「西村は野手出身。中西君のボールでも速球ならなんとか当てることができる。タイブレークになる10回の打順が9番から始まることも考えて、そのまま打席に立たせた」と、西村投手をそのまま打席に送り込みます。
この選択が、智弁バッテリーにプレッシャーをかけました。打席の中の反応で、速球は対応してくると判断した智弁バッテリー。2ボール2ストライクと追い込んでから、決め球のフォークで三振を狙いにいきます。しかし、このボールがワンバウンドとなってワイルドピッチ。3塁までランナーを進めてしまいます。さらに、続く6球目。ランナーがサードにいるだけにストレートが予想される場面でしたが、中西投手が投げ込んだのはまたしてもフォーク。「バットに当てられると何があるかわからないので、一番(空振りの)確率の高いボールを選んだ」と振り返ったボールが、鋭く落ちすぎてしまいました。今度もキャッチャーが押さえることができず、ワイルドピッチとなってサードランナーがホームイン。近畿大会の決勝戦はまさかの幕切れで、京都国際が智弁和歌山に3対2でサヨナラ勝ちを収めました。
敗れた智弁和歌山・中西投手「夏は必ず自分がチームを勝たせることができる投手に」
春・秋通じて初めての近畿王者に輝いた京都国際の小牧監督は「智弁和歌山さんとは、体格もバッティングの迫力も違う。きょうは近畿優勝という気持ち以上に智弁和歌山さんを倒したいという思いが強かった。その中で、粘って勝ち切ったことは自信になる」と語りました。一方、敗れた智弁和歌山の中谷仁監督は「大事なところで連続してミスが出てしまった。秋に敗れた後、よくここまで来たが、夏に向けてまた課題が見つかった」と振り返りました。
「夏は、課題であるコントロールに磨きをかけて、必ず自分がチームを勝たせることができる投手になりたい」と悔しさを交えながら話してくれた智弁和歌山の中西琉輝矢投手。「先輩の中崎さんとともに、これからもっと成長して、チームを盛り上げていきたい」と話した西村一毅投手。緊迫した展開の中、劇的な幕切れとなった近畿大会の決勝戦は、今後の両チームのさらなる成長を期待させる内容で幕を閉じました。
(MBSスポーツ解説委員 宮前 徳弘)
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