1回、本塁打を放ち生還したヤクルト・村上宗隆はベンチ前でナインとタッチを交わす=14日、横浜スタジアム(長尾みなみ撮影)

DeNA0-9ヤクルト(14日)

打球は最後まで勢いを失わず、バックスクリーン左で弾んだ。ヤクルトの主砲、村上が今季1号をマークした。開幕から13試合、54打席目でのようやくの一発に、「なかなか出なかったので、うれしかった」。この日を待ちわびた左翼席のファンの声援に力強く手をあげた。

状態は悪くなかったという。「ボールは見えていたし、捉えても正面に行った打席も多かった」。勝負を避けられる場面も多く、焦りはなかったが、「打てないと打てないで騒がれるし、そういう(報道)のも目に入ってくる」。2022年に56本塁打を放った長距離砲。何が求められているかは分かっていた。

鬱憤を晴らしたのは一回の第一打席。前日に続いて2番に座り、DeNA大貫の甘く入った速球を逃さなかった。七回1死からは中前打で出塁し、大量7得点の足掛かりも作った。故障者続きで苦しむチームを連勝に導き、「いい打席も増えている。続けていければ」と視線を次へ向けた。

8年前の4月14日、故郷・熊本を大地震が襲った。九州学院高2年生だった自身も下校中に被災し、約1カ月はボランティアに従事した。野球ができるありがたみを、痛いほど思い知らされた。「常に打ちたいけど、今日という日は今日しかない。いろんな場所で地震も起きている。被災された方々にスポーツの力を届けられたら」。特別な日に描いた待望のアーチには、24歳の強い思いが詰まっていた。(川峯千尋)

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