訪日観光客の数が過去最多を更新しました。一方で、過去最低になっているのが日本人の英語力です。

■過去最多の背景には2019年と同等水準の航空便数・紅葉シーズンなどか

井上貴博キャスター:
産業の少ない日本が観光立国として、これからどのように構築していくのか。ターニングポイントを迎えていると言えるかもしれません。

日本政府観光局によると、2024年1月から11月の訪日外国人旅行者は約3338万人で、過去最多となりました。2019年の3188万人を上回っています。

その背景には、▼航空便数が2019年と同等の水準まで回復したこと、▼紅葉シーズンで中国・韓国・台湾・アメリカから訪れる人が増え、11月も増加したということです。

やはり訪日外国人は、多くのお金を消費しているという実情があります。

訪日外国人の1人あたりの旅行支出は、宿泊費7万5739円(平均9.5泊)、飲食費4万9264円、買物代6万3267円など、総額22万3195円だということです。
※観光庁(2024年7月~9月期)

■訪日外国人が多い影響 二重価格も導入

井上キャスター:
訪日外国人が多い影響も出てきています。

北海道・ニセコ地域のスキー場では、4つのスキー場の共通リフト券があり、2022~2023年シーズンは8500円、2023~2024年シーズンは9500円でしたが、今シーズンは1万500円となっています。

訪日外国人の他にも施設の老朽化や物価高騰もあります。外国人が増えてきているということが価格を押し上げている側面もあります。

東京・渋谷の「海鮮バイキング&浜焼きBBQ 玉手箱」では、平日ディナーに関して、外国人観光客の女性は1万978円、日本人及び在住外国人・日本語が喋れる女性は9878円と、細かく値段設定されています。

通常価格(外国人観光客)から、日本人及び在住外国人などは1100円値引きするということです。

この考え方について…

オーナー 米満尚悟さん
「日本語ができない方だと、どうしても接客に時間がかかり接客コストがかかるため、二重価格にしている」

男性に対しても女性に対しても、同様に差をつけています。

■観光地に日常がある人は大変な側面も

井上キャスター:
そもそも、なぜ観光地の価格は高騰しやすいのか、経済評論家の加谷珪一氏に聞きました。

円安の影響があるそうで、世界より日本が安いと、外国人観光客がたくさん訪れます。そのため、外国人観光客向けの価格設定を高くします。

さらに高級路線は、外国人が好むため、値上げ傾向ということもあります。

そして優秀な人材として、多言語を話せる人などを雇用するため、賃金の上乗せなどもあります。

賃金を上乗せした分は、商品価格にも転嫁するので、全体的に観光地の価格は高騰しやすい状況だということです。

そして、観光立国になる上で、観光業だけでどのくらい日本全体を潤すことができるのでしょうか。

経済評論家 加谷珪一氏
「観光業は日本の予算の100分の1に満たない。インバウンドだけで日本の経済が潤うのは難しいのでは」

ただ、インバウンドが起爆剤になって、様々なところに波及効果が出ていくことは、期待できるかもしれません。

ホラン千秋キャスター:
やはり、観光地はどうしても高くなってしまう部分は仕方ないところですよね。

萩谷麻衣子 弁護士:
外国人の嗜好が変わってきているのかなと感じます。以前はデパートの化粧品売り場がものすごい混んでいたのに、今はほとんど見かけなくなって、行き先が変わってきたのかなと思います。

地方では外国人がたくさんいる場所も増えてきて、地方に散らばっているのはいい傾向だと思いますが、地方の人たちは物価が上がって、日常生活も大変になってしまうこともあると思うので、やはり外国の人と地元の人で、値段を変えていくのもやむを得ないのではと思います。

ホランキャスター:
明確な線引きはなくて、すべて地続きで何となくグラデーションの中で皆さんが生活しているので、その観光地に日常がある人は大変な側面もあるということになりますよね。

■「道民が宿泊できるような状態ではなかった」地元住民向けに割引も

井上キャスター:
いいものは価格設定を上げていく傾向にありますが、住んでいる人とのバランスを、どう調整をしていくのか、自治体も乗り出しています。

北海道では、登録施設によりますが、北海道民限定で宿泊料金など、平均10~15%の割引があります。

北海道観光機構 担当者
「インバウンド客が多く、宿泊の単価が上がっている。道民が宿泊できるような状態ではなかったため、道民への感謝を込めて割引を始めた」

各施設で賄って、下支えするということです。

大阪府では、宿泊税を増額する動きがあります。宿泊費によって、100円から200円のアップを想定していて、2025年度に改定へと動き出しています。

大阪府 担当者
「外国人観光客など増加が見込まれるため、街などの環境整備が目的です」

宿泊税や環境保全税など、税金を徴収する自治体は増えていくかもしれません。

萩谷麻衣子 弁護士:
ごみや騒音の問題は、地元の迷惑になっているところもあるので、対策としてやっていかなければいけないと思います。それには費用もかかるので必要だと思いますね。

外国人がたくさん来て「日本はいいね」「いい国だね」と思ってくれることで、日本の安全保障にも繋がっていくと思います。そういう意味でも、たくさん迎えるのはいいことだと思います。

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<プロフィール>
萩谷麻衣子 さん
弁護士
結婚・遺産相続などの一般民事や、企業法務を数多く担当

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