違法薬物使用の入口とも言われ、若者への広がりが懸念される大麻。

大麻取締法改正で大麻の「所持」や「譲渡」に加え、「使用」も違法となりました。

一方で「大麻由来の医薬品の解禁」など、利用緩和の動きもあります。

大麻の産業利用で一歩先を進むのが、中国。雲南省の山間に一面に広がる大麻の畑。
アヘン戦争の経験から大麻を厳しく取り締まっていた中国は、「禁止」から「利用」へと、政策を転換させています。

■「大麻取締法」法改正で”使用だけ”でも違法に

【記者リポート】「少年たちはこの乾燥大麻や大麻リキッドをSNSで販売していたということです」

12日、近畿厚生局麻薬取締部が行った記者発表。大麻取締法違反の疑いで大阪府内に住む17歳の少年ら、あわせて4人が逮捕されました。空港でおよそ1キロの乾燥大麻が押収され、家宅捜索をしたところ乾燥大麻やリキッドあわせておよそ280グラム見つかったということです。

大麻事件の摘発は去年、過去最多の6703人と初めて覚醒剤を上回り、7割が30歳未満の若者でした。若年層における大麻の乱用が社会問題となる中、改正された法律が12日から施行されます。

これまでの「大麻取締法」が禁じていたのは大麻の所持や譲渡。それが今回の法改正で大麻とその有害成分(THC)を「麻薬」と位置づけ”使用だけ”でも違法となります。

■三重県に大麻を育てる職人「自然の中で一番強い繊維」

日本国内では大麻といえば「薬物」というイメージですが… こちら三重県の、のどかな集落。

【精麻技術の職人 谷川原 健さん】「ここは麻の加工場。世にいう”大麻”の皮をとっています」

大麻の皮!?実は日本国内でも特別に許可を得た人は、繊維などをとる目的で育てることが許されているんです。谷川原さんは大麻を育て、精麻と呼ばれる繊維を作る数少ない職人の1人です。

【精麻技術の職人 谷川原 健さん】(Q大麻はどういうものに使われる?)「今は神事ごと。お供えもの縛るのにも精麻が使われますし、けがれを払うために使われる。あとはしめ縄、横綱の綱とか。人類はずーっともう縄文の頃から麻を使ってきてるので。地球上で自然の中で一番強い繊維って言われてます」

実は日本は古来から大麻を神聖なものとして、衣食住様々な場面で利用してきたのです。

■大麻利用緩和の側面も

そして今回の法改正では大麻の利用について緩和される側面もあります。 それが「大麻由来の医薬品の解禁」。

大麻からとれる成分が「難治性てんかん」などに有効な治療薬になるため、今後は免許制度のもと、そういった薬の使用が認められることになりました。

「使用」を明確に禁じた一方で、適切に使用できる「大麻」に関しては規制緩和の方向に舵を切った法改正。実は一足先に進んでいる国があります。

取材班が訪れたのは、中国・雲南省。人よりも家畜の方が多い、のどかな農村のさらに奥深く、見えてきたのは…

【沖本有二特派員リポート】「こちらの山の斜面に一面に植えられた植物。実はこれ、『産業用』の大麻なんです」

一帯に広がる植物は全て大麻!ただ大麻は大麻でも食用や繊維、薬などに加工される産業用のいわゆる「いい大麻」なんです。

【沖本有二特派員リポート】「私の背丈よりもはるかに高く伸びた大麻、今、収穫作業が行われています」

■「捨てるところがない」大麻 栽培農家は収入が倍以上に

栽培されているのは、人体に悪影響をもたらす成分THCの濃度が低く、違法薬物にはならない種類です。

そもそも中国はアヘン戦争の経験があり、薬物への規制が日本以上に厳しいことで知られています。種類に関わらず大麻の栽培も厳しく禁じられてきました。

しかし、産業用大麻の可能性が世界的に注目され始めると、2010年に雲南省を皮切りに、地域を限定したうえで、栽培を推し進める方向に舵を切りました。

今では世界屈指の大麻生産国となり、栽培農家は収入が倍以上になったといいます。

【雲南穀益農業開発有限公司 李如敏社長】「大麻には幅広い用途があり、全てが宝物と言えます」

すべてが宝物、つまり「捨てるところがない」という大麻。収穫した大麻は工場に運ばれて、皮から繊維をとるだけではなく…

【雲南穀益農業開発有限公司 李如敏社長】「葉っぱに種…。種は食用になり、葉はカンナビジオール(てんかん薬にも使われる薬効成分)の抽出に使われるし、茎も皮も全部役に立ちます」

■大麻を使ったフェイスパックにシャンプーやビールも

例えばこんな製品にも。

【雲南穀益農業開発有限公司 李如敏社長】「これは大麻を使ったフェイスパックです」

医薬品の原料オイルや化粧品、シャンプーからビールまで、大麻を原料にした商品がずらりと並びます。

食用・大麻の種を試食。(※有害物質を含まない食用ヘンプシード)

【沖本有二特派員リポート】「落花生やくるみのようなすごく栄養分豊富な味がします」

【雲南穀益農業開発有限公司 李如敏社長】「違法薬物や身の安全を脅かすような事件は一度も起きていません。日本は先進国で規範的だし、人間ができているので、悪用しないでしょう」

■職人には懸念も 「技術のない人達が増えていくのはどうかなと」

日本でも始まった大麻の産業利用推進の流れ。大麻を育て繊維を作る職人谷川原さんはこの動きをどうとらえているのでしょうか。

【谷川原さん】「(以前は)いろんな制限を受けて、容易に道からは見えない場所とか、あと監視カメラをたくさんつけたりとか。そもそも僕が撒いてる種は、薬理成分がもう全然含まれていない(種類の)種なので。自分の栽培にわたって規制緩和されている部分がたくさんあるんで、そこは僕はよかったなと思ってます。

ただ懸念しているのは、技術のない人達が増えていくのはどうかなとは思ってます。技術はない、悪いことしちゃうってなっちゃったら、また大麻、麻のイメージが悪くなっちゃうので」

転換点を迎えた大麻を取り巻く状況。今後、どのような動きを見せるのか注意深く見守る必要がありそうです。

(関西テレビ「newsランナー」2024年12月12日放送)

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。