特集は企業の新たな取り組みです。長野市の靴下メーカー「タイコー」が、先日、初の直営店をオープンさせました。長く他社ブランドの製造を請け負ってきた中、実店舗を構えることにしたねらいを取材しました。

■靴下メーカーが初の直営店オープン

ずらりと並んだ色とりどりの靴下。

11月16日、JR豊野駅の近くにオープンした「TAIKO STORE TOYONO」。長野市の靴下メーカー「タイコー」の直営店です。

客:
「靴下を買いました。足袋型が好きで、家でも草履をはいたりしているので、なかなか種類がないので(直営店が)できて気になっていた」

店を任されたのは企画・開発担当の塚田克幸さんです。

タイコー企画・開発担当・塚田克幸さん:
「普段オンラインショップで買っているとか、どこに行ったらたくさん見られますかという問い合わせが増えてきまして、(工場は)近場なのに直接(商品を)見られないもどかしさみたいなのは、お客さまもそうですし、僕らも感じることが多くなってきたので、こういう場所が必要だなと不定期ですけどオープンした」

タイコーが直営店を構えるのは創業以来、初めてです。

■日本代表のソックス手掛けたことも

タイコーは昭和24年・1949年の創業。靴下を中心にスポーツ用品メーカーやアパレルブランドの商品を製造する「OEM」を長く請け負ってきました。

技術力は高く、スポーツの国際大会で日本代表が履くソックスを手掛けたこともあります。

タイコー・神田一平 社長:
「OEMはスポーツ用をメインに作っていたんですけど最新の設備を入れて、もっとより良い靴下ができるようにとずっと進んできた」

■近年は自社商品にも注力

近年は足袋型ソックスなど自社ブランドの製造・販売にも力を入れています。

年間100万足のうち1割が自社商品です。

タイコー製造部・小林正樹 部長:
「こちらが弊社オリジナルの足袋(型ソックス)を編んでいる編み機になります。円形に配置された144本の針と8本の糸で7分に1つの靴下を編み上げます」

タイコー製造部・小林正樹 部長:
「(こだわりは)つま先の部分で指の厚みが違うので、そこを立体的に編むことで、ゆったり、なおかつフィットして履いていただける」

すり減ってしまうつま先とかかと部分は厚めに生地を編むことで耐久性と履き心地の良さを実現しています。

■年間1万足売り上げるヒット商品に

タイコー・神田一平 社長:
「今までどうしても市場価格に合わせてものづくりをしなきゃいけなかったんですけど、その流れもうまく採算が取れなくなってきて、オリジナルで自分たちが作りたいもの、客のニーズに合ったものを作っていければ」

3年前に発売した「アミタビ」は年間1万足を売り上げるヒット商品に。そこで次の一手を考えました。

神田一平 社長:
「物を卸していったとしても全部に置けるわけじゃないので、全部見ていただける場所というのは必要だった」

■直営店の狙いは「次の製品開発」

これまではオンラインショップやセレクトショップでの販売にとどまっていましたが、商品を実際に手に取ってもらおうと75年の歴史の中で初めて「直営店」を立ち上げることに。

豊野駅の近くにあった倉庫を店舗に改装しました。

タイコー企画・開発担当・塚田克幸さん:
「倉庫でしか使ってなかったけど、駅前の見方を変えればいい場所ですし、逆に何もないからこそ、何かこういう場所があると、人がちょっと集まれる場所になれるかなと」

塚田さんは実店舗立ち上げの提案者。それはある経験に基づいています。

2023年11月、傷がついて、本来は売り物にならない「B級品」の販売会を開催したところ、予想を上回る盛況ぶりでした。そこで気づきがあったと言います。

タイコー企画・開発担当・塚田克幸さん:
「OEMとしての仕事だと、直接お客さまの声ってなかなか反応が見られなかったり、コミュニケーションって生まれなかったりするんですけど、自分たちで商品を最後までお届けすることで、お客さまのダイレクトな声が返ってくる。それが一つやりがいにもなりますし、次の製品開発にもつながる」

■地元でコラボし牛乳パンの靴下も

開業に合わせて豊野ならではの商品をつくりました。

タイコー企画・開発担当・塚田克幸さん:
「このパッケージでおなじみの、この牛乳パンというのをグラフィックで入れて、インパクト勝負の製品になっています」


コラボしたのは地元のパン店「小林製菓舗」。子どもや動物が描かれたレトロ感あふれるパッケージの牛乳パンが人気です。本家のパッケージと同じ「牛乳パン」の文字を靴下の背面に大きくデザイン。

包装は実際に牛乳パンを入れる袋を使っています。小林製菓舗は「とてもすてきな取り組み、一緒に豊野を盛り上げていければ」と期待を寄せています。

客:
「かわいい。これって牛乳パンが入っていた袋ですか?」

タイコー企画・開発担当・塚田克幸さん:
「そうです、そのまま使っていいよって言われたので」

「牛乳パン靴下」を購入:
「デザインがかわいいと思って(買った)。(タイコーの)オンラインストアは見たことがあるけど、実際に店舗ができたので、実際に手に取って商品を見ることができるのでうれしい」

■店で実験室のようにトライできたら

客:
「これは(いくら)?」

タイコー企画・開発担当・塚田克幸さん:
「2420円、いい糸なんですけど、余った糸で、ちょっと安く仕入れさせてもらっているので、価格はだいぶ抑えられている」

手袋を購入:
「子どもが自転車通学なので、これから手袋が必要だと思って(買った)。生地が全然違うので」

「アミタビ」を購入:
「(今までは)子どもに頼んでネットとか、ホームセンターにも時々あるけど種類がなくて苦労していたから助かります。今はやりの無人(店)だったら帰っちゃったかもしれないけど、気持ちのいい若い方が応対してくれたので」


評判は上々の直営店。技術を磨いてきたメーカーが店舗販売を通じて商品開発の力も伸ばそうとしています。

タイコー企画・開発担当・塚田克幸さん:
「お客さまとのコミュニケーションの場所、あと実験室みたいな。ファクトリーブランドの直営店なので、実験室みたいな位置づけで、いろいろなことにトライできるといいかなと」

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