みずほフィナンシャルグループ(FG)は楽天グループとリテールビジネスを再構築する。約1650億円で楽天カードに14.99%出資し、カードビジネスを強化する。来年春に予定する預金者向けサービスの刷新では銀行取引に応じてポイントを発行し、楽天ポイントとも交換できるようにする方針だ。
「日本で最も利便性の高いポイント経済圏をつくっている楽天と、対面に強みのあるみずほが組めば色々なことができる」。みずほFGと楽天Gが14日に開いた記者会見で、みずほの木原正裕社長はこう話した。楽天Gとの提携は楽天証券に始まり、カードへの出資で連携が広がる。
提携の第1弾として、みずほ銀行と楽天カードは12月3日から「みずほ楽天カード」の提供を始める。利用額の引き落とし口座をみずほ銀行に限定し楽天ポイントをためられる。利用状況に応じて、みずほ銀行のATM手数料や振込手数料が無料になるなどの特典も付ける。
銀行にとっては幅広い世代から預金を集めることの重みが増している。ただ新規口座の開設では有利な預金金利を提示するネット銀行に劣るのが実情だ。JR東日本や日本航空(JAL)などの異業種も金融サービスに相次ぎ参入している。
三井住友フィナンシャルグループは個人向けの金融サービス「Olive(オリーブ)」で先行する。カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)の「Tポイント」と統合し、オリーブを使うと「Vポイント」をためられる仕組みで経済圏の構築に乗り出した。
多くの個人顧客を囲い込む上で「ポイント」の重要性が高まるなか、みずほは個人向けサービスとして展開する「みずほマイレージクラブ」を来年春に刷新する。取引の状況に応じ、ポイントがたまるプログラムを始める予定だ。
みずほは具体的な手段を明らかにはしなかったが、カード決済の引き落としなど普段使いでポイントをためられる仕組みを想定する。複数のポイントサービスと連携させる方針で、楽天ポイントとのポイント交換が目玉となる。
キャッシュレスの普及でカード事業の重要性が増すなか、みずほは2019年に15年続けてきたクレディセゾンとの提携関係を解消した。議決権の比率を15%以内とする取り決めを廃止し、セゾンの子会社化に向けて交渉を続けてきたが断念せざるを得なかった。
木原社長は「コマース(買い物)と金融が融合してそこに消費者が流れている。預金の粘着性を高めるにはどうすればいいか。この2年間考えていた」と話す。
みずほの24年4〜9月期決算はリテール・事業法人部門の業務純益が405億円と前年同期から10%減った。みずほにとって、楽天経済圏との接続がリテールビジネスを挽回するうえで切り札となる。
(関口由紀)
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