大阪名物のたこ焼き。

“庶民の味”として多くの人に愛されていますが、実は今、気軽に食べられない存在になりつつあるんです。

その背景には一体何があるのでしょうか?

大阪を代表するグルメの一つ“たこ焼き”

とろりとした触感に、タコのぷりぷりの歯ごたえがおいしいですよね。

【東京から来た客】「おいしいです。旅行の記念にみたいな感じで食べちゃう」

【韓国から来た客】「うまい!マシッソヨ!」

海外の人たちからも大人気のタコ!

■タコ戦争が始まっている...

総務省の家計調査では年間のタコに使う支出は、関西が1位から5位までを占めています。

やっぱりタコが好き!という方も多いと思いますが、実は今、そのタコが、気軽に食べられる存在ではなくなりつつあるんです。

【伊たこ焼梅田本店 山口滋巳代表取締役】「めちゃめちゃ上がってますよ。すっげ~上がってます。子供のお小遣いで買えないでしょ(たこ焼きの価格は)あげたくないです。できるだけ抑えたい。じわじわじわタコ戦争が始まってきてますよ」

タコ戦争!?一体、タコに何が起きているのでしょうか。

■スーパーでは「タコ」が「マグロ」より高い

大阪市内のスーパーを覗いてみると…アフリカ西部モーリタニア産のタコは100
グラムあたり298円。

これは、台湾産のマグロ100グラムと同じ値段です。

【買い物客】「タコは高いし、最近食べてない。家できゅうりもみをして、酢入れてタコ入れてという形でやってたけど今でけへん、たこ焼きもでけへん」

さらに、国産タコはというと…京都府伊根町の本マグロ100グラムあたり498円に対し、淡路島産のタコは100グラムあたり598円と、なんとタコがマグロより高くなっています。

【カギヤフィッシュアドバイザー大畠丈典さん】「今まで安かったタコもどんどん値上がりしていって、アワビなどの高級な食材の位置づけになる可能性が出てきてます」

■小売り価格は、10年前に比べると2倍近くに

総務省の調査によると大阪市のタコの小売価格は、10年前に比べると2倍近くになるほど高騰。

マグロの小売り価格を追い抜く勢いで上昇していて、ことし9月の調査ではわずか5円差とほぼ同じ価格になっています。

■明石焼き店「仕入れ値は10年前のおよそ2倍」

タコの価格高騰の影響を受けるのは、たこ焼きだけではありません。

【明石夢工房 西明石店】「お待たせしました、明石焼です」

卵を使ったふわふわの生地にタコを入れ出汁につけて食べる「明石焼」。

兵庫県明石市を代表するこのご当地グルメも今、危機に直面しています。

【明石夢工房西明石店・中村悟店長】「(1キロ)2000円ちょいやったやつが、4000円くらいになっているので」

店をオープンしたおよそ10年前に比べ、明石だこの仕入れ値はおよそ2倍に。

それでもできる限り値上げはせず、タコ以外の部分で費用を抑え、提供しているといいます。

【明石夢工房西明石店・中村悟店長】「1000円のたこ焼食べますか?明石焼食べますか?ってなったときに、どうしても抵抗あると思う。油でも安いやつあったら探してみてとか、ちょっとずつ努力していますね」

なぜタコが高騰しているのか。タコ漁を取材するとその理由が見えてきました。

■漁師歴30年以上の松本さんによると、明石のタコの漁獲量は「激減」

【西二見漁業協同組合・松本久進代表理事組合長】「これで500~600(グラム)ってところかな。昔から明石のタコ立って歩くくらい、体起こしてね、筋肉が発達してるから」

漁師歴30年以上の松本久進さん。祖父の代からタコ漁を続け3代目です。

【西二見漁業協同組合・松本久進代表理事組合長】「もう激減ですね、親父の後ろについてやってた時は、一流しで30匹くらい釣れとった。今はこんなもんやね」

■明石のタコ漁獲量は10年で5分の1に減少

かつては年間1000トンの漁獲量を誇っていた明石のタコ。

しかし、最近は記録的な不漁が続き、ここ10年で5分の1程度にまで減少しています。

(Q:仕事を不安に感じることは?)
【西二見漁業協同組合・松本久進代表理事組合長】「ありますね、このままタコおらんようになったらどないしようと思いますね。タコいなくなったら、違う魚種とらないといけない。ほんならみんながその魚種取りに行く。その魚種も絶える可能性がある」

■パレスチナ情勢が悪化し輸送費が高騰していることも影響

タコの価格高騰の背景には、不漁のほかにも、専門家は海外でのタコ需要が高まっていることがあるといいます。

【東海大学海洋学部 山田吉彦教授】「タコの美味しさをですね、世界中の人が知ってしまいました。国際的な競争になってしまって、海外のバイヤーに対して、日本の消費者が買い負けているということがあります」

海外でタコは“デビルフィッシュ”とも言われ食べる文化がなかったそうですが、近年はシーフードとして食べる習慣が広まってきているということです。

また日本では、モーリタニアやモロッコから輸入されたタコが多く食べられていますが、山田教授はパレスチナ情勢が悪化し輸送費が高騰していることも一因だと指摘します。

【東海大学海洋学部 山田吉彦教授】「スエズ運河を通る船、危険だということで自粛する会社が多くありました。アフリカに回る航路を選ぶ会社が多くなっています。

そうするとアジアに来る時間というのが2週間から長くて1カ月くらい余計にかかってしまう」

■「タコマイレージ制度」や人工的にふ化させた稚ダコを放流などの対策も

海外から輸入されるタコの価格高騰に、日本有数を誇る明石のタコの漁獲量減少。

明石でタコが減っている理由の1つとして釣り客が増えたことも背景にあります。

こうした状況を少しでも改善しようと、明石市の漁業組合などは新たな取り組みを実施しました。

その名も、「タコマイレージ制度」。

釣り客が釣ったタコを放流するとその数に合わせてポイント還元し、ステッカーなどと交換することができます。

ほかにも人工的にふ化させた稚ダコを放流するなど漁獲量の減少に歯止めをかけようとしています。

【西二見漁業協同組合・松本久進代表理事組合長】「1年2年、そんなそんな短いスパンで増えることはないと思う。

釣り人らで漁師も何かプラスになるようなことやっていきながら、増やしていけたらなと思います」

関西の名物に欠かせないタコ。

“庶民の味”が今後、手の届かない存在になってしまうのでしょうか。

■“悪魔の魚”から「人気シーフード」へ

タコの価格は今後どうなっていくのでしょうか?

東海大学海洋学部・山田吉彦教授によると..
・円安が落ち着き、輸入タコの価格が下がることに期待。
・あまりタコを食べないインドネシアや周辺国でとれたタコが日本の市場に入ってくることを期待。

【関西テレビ・神崎博報道デスク】「マレーシアに駐在していたんですけど、地元の人が行く市場やスーパーでタコを見かけたことは記憶にないです。

インドネシアの人もとっている間に、食べて美味しかったと気づいたら、日本に入って来なくなるんじゃないかと思いますけどね」

【秦令欧奈アナウンサー】「(たこ焼きの)衣もたこに負けないくらい好きなので。タコなしたこ焼きとかあってもいいんじゃないかなと」

タコは高たんぱく、低カロリー、子供が食べると顎の発達にもつながる。いいところがいっぱいありますから、価格が気になります。

(関西テレビ「newsランナー」 2024年11月14日放送)

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