日銀が13日発表した10月の企業物価指数(速報値)は前年同月比で3.4%上昇し、企業間のモノの取引価格が高水準で推移している。9月の3.1%から拡大し、3.5%だった2023年8月以来の伸び率となった。24年9月に引き続きコメの価格高騰が主因で、人件費を価格に転嫁する動きもみられた。
20年平均を100とする指数は123.7で、1960年の統計開始以来、2カ月連続で最高となった。前年同月比の伸び率は2024年5月以降、2%を上回って推移しており、今後の消費者物価指数(CPI)に影響する可能性がある。
足元で伸び率が高まったのは精米、玄米、鶏卵などの農林水産物が要因だ。前年同月比で26.0%上昇した。
輸送費や人件費、肥料価格などが上がり、価格転嫁につながった。コメの卸間市場では10月から24年産の取引へと切り替わり、31年ぶりの高値で取引されている。
SMBC日興証券の宮前耕也シニアエコノミストは「コメの価格高騰は農家の人手不足で供給が減っているなどの構造的な問題で、すぐには改善しない」と指摘。「価格高騰が続けばCPIの上振れ要因になる」と話す。
10月は半期ごとの価格改定月でもある。輸送用機器では自動車のエンジンやエアコンの部品などで人件費、原材料価格の増加を販売価格に転嫁する動きがみられた。
日銀関係者は「価格転嫁の裾野が広がってきている」と話す。中堅・中小企業から「久しぶりに価格改定した」といった声が上がっているという。
非鉄金属も14.6%の上昇となった。銅消費の多くを占める中国で景気刺激策が打ち出され、銅の価格が上昇したことが影響した。
今後も企業物価の伸び率は高い水準で推移する見通しだ。第一生命経済研究所の大柴千智副主任エコノミストは現在のコメの価格高騰や円安の進行などを背景に「年内に伸び率が鈍化する可能性は低く、3%台の水準を維持するだろう」と指摘する。
同時に発表された円ベースの輸入物価指数は前年同月比で2.2%下落した。石油や天然ガスの価格下落が主な要因だった。大柴氏は「為替相場で1ドル=154円の水準が続いたり、さらに下落したりすれば、再びプラスになる可能性はある」とみている。
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